黒川達が帰宅した後、青田と約束したとおり、二階堂さんのお土産の饅頭でお茶会が開かれた。
いつもなら、誰かが好き勝手に話し始めるけれど、今日は皆黙ったままで静かだった。
「あの……、皆さん。
少しよろしいでしょうか……」
皆が集まる場で、私から発言するのは珍しいことだ。
最近ならば『遊園地に連れて行ってほしい』とお願いして以来だろうか。
皆が一斉に私を見たので、緊張が走った。
「ええーっと……、えっとですね……」
「お嬢、そんなにかしこまらなくても。
いつも通り、ゆっくり話せばいいんだよ」
青田が微笑んだ。
「そ……、そうですね」
私は小さく深呼吸した。
「あの……。
最近、学校で少し嫌な目にあっていてですね……」
「何だって?」
突然、赤井が立ち上がった。
「赤井君。
いいから、落ち着いてお嬢の話を聞こうよ」
赤井の隣にいた青田が、赤井を落ち着かせるように座らせた。
「あ……。
嫌な目といっても、本当に些細なことですから、心配無用です」
「うん。お嬢、それで?」
桃も、いつも私の相談に乗ってくれている時のように、真剣に聞いてくれている。
「それが、ほんの少し前から始まった事だから。
『犯人』という言い方は良くないのかもしれないけれど。
私は、その『犯人』にも、何か言いたい事があるような気がして……」
「犯人の言い分なんて、今さらどうでもいいだろう?」
「赤井君。
お嬢の話を最後まで聞きましょう」
「……赤井。
私のために怒ってくれて、ありがとう。
私は……。
その『犯人』と、一対一で話がしたいのです。
『嫌がらせ』を始めた『理由』を知りたいのです」
「…………。
わかった、お嬢。
……で、俺達に出来ることは?」
終始落ち着いていた黒川が聞いてきた。
「見守っていてください」
私の言葉を聞いて、赤井以外が黙って頷いた。
「赤井?」
「わかったよ。
けど、これ以上酷い目にあったら……」
「わかっています。
その時は、赤井に助けてもらいます」
私はやっと緊張が解けて、笑顔で言った。
お茶会が終わった後、黒川のいるキッチンに向かった。
「黒川……。あの……、白石は……」
「お嬢、心配するな。
白石君は今までどおり担任を続ける」
「良かった……」
「……お嬢、
本当に一人で大丈夫なのか?」
「大丈夫です。
私の頭の中で策は練ってありますから!」
黒川がじっと私の目を見たあと、少し笑った。
「わかった。
無茶だけはするなよ?」
「はい!」