ティーンズ向けの洋服屋でアルバイトをしていた時の話。
接客時に特に注意しなくてはならなかったのが『万引き』。
お客様が商品を2点以上、手に持っている場合は、お客様に買い物カゴを渡し、スムーズにレジに誘導しながら、怪しい行動には常に目を光らせる。
万引きで一番多いのは、大きな鞄に商品を入れて、そのまま持って帰る行為。
店員には店員にしか分からない合図や隠語があるけれど、大きな鞄を持っているお客様には『警戒』の合図を送り合って、店員2~3人のフォーメーションを組んで、商品を万引きされないか、見守っている。
2番目に多いのが、試着室の中。
試着するように見せかけて、商品を自分の服の下に着込んで帰ってしまう。
その対策として、お客様が商品を何点持って試着室に入り、何点持って試着室から出てきたかを、こっそり数えている。
これまで試着室で『万引き犯』として捕まった人は、ロングスカートの下に、商品であるミニスカートを履いていたり、強者になると靴下を6足履いていたり。
ある日、ティーンズ向けのショップには不釣り合いの、どこからどう見ても『オジサン』なお客様がやって来た。
(※まだ『多様性』という言葉が認識されていなかった時代の話)
真っ赤なタータンチェックのミニスカート(商品)を持って店内をウロウロしている。
『星ちゃん、怪しい人発見!』
仲間の店員さんから『警戒』の合図が送られてきた。
「了解!」
合図を送り返して『オジサン』の方へ向かった。
「お客様、何かお探しでしょうか?」
「えーと。このスカートを試着したいのですが」
……え?
……この商品を、今ここで試着?
……仕方がない。
『オジサン』を試着室へ通した。
ところが『オジサン』は何分経っても試着室から出てくる気配がない。
『星ちゃん、やっぱり怪しいよ』
店員仲間がコソコソ耳打ちをする。
「お客様、商品はいかがでしたでしょうか?」
カーテン越しに声を掛けると、
「……あの、これ、見てもらえませんか?」
試着室から『オジサン』の声が聞こえた。
「カーテンを開けますね……。
…………。
ギャー!」
店員仲間が試着室のカーテンを開けた瞬間、真っ赤なタータンチェックのミニスカートを履いた『オジサン』が現れた。
ミニスカートを履いているが、それ以外の物は全て脱いでしまっている『オジサン』。
ミニスカートの前部分を捲り上げているので、股間が丸出しになっている。
「星ちゃん、警察を呼んで!」
「ハ……、ハイ!」
間もなくして『オジサン』は警察に連れていかれました。
アパレル関係も『キケンなお仕事』でした。