チーーーン

『ヌワッ!アギャーーウワアアアッーーー』


私は帰宅しましたが、自分の部屋でわけわからない爬虫類を発見し、絶叫し腰を抜かしてしまい恐れ慄きながら対峙しています。

(ちょ・・ちょっと・・私爬虫類苦手なんだけど)

最近、めんどくさい地域猫のみけっち、マングースのイタッチは・・まあそうでもないけど・・自分勝手なニワッチと立て続けに神経をすり減らす奴らと話をして、疲労困憊なんです。

『えっと・・あなたは・・何者ですか?』

『私は・・・グリーンイグアナと・・・言う・・・・らしいです』

(何そのゆっくりした口調・・・また違った意味でイライラしてめんどくさそう・・)
(てか、全然グリーンじゃないんですけど・・茶褐色なんですけど・・)

『あ・・えっと・・私に何か用でしょうか?て言うかどこから入ったの?』

『その・・・窓・・・・から・・・・・・普通に・・・』

(あー駄目だ・・・なんかイライラしてきた・・ちょっと深呼吸を・・)

『スーーーーハーーーー』

『ど・・・う・・・し・・・・た・・・・ん・・・です・・・か?』

『あーどうしもしないから。とりあえず名前はどうせわからないんでしょ?イグッチでいい?』

『は・・・・・・・・い』

『・・・・・・』
(なんで短い返事になればなるほどゆっくりになるのよ・・・)
(とりあえず、必要最低限の会話で用件を聞くことを目指そう)

『私になんの用?』

『どう・・・して・・・・あなた・・・・の・・・こと・・・知ってるか・・・聞かない・・んですか?』

『いいよ、そんな事はどうでも。猫の集会で聞いたって事にしておくよ』

『え・・・?・・・・よく・・・わか・・・り・・・まし・・・たね』
『そ・・・の・・・・とお・・・り・・で・・・す』

『・・・・・・・』
(みけっち・・・・猫の集会で何やっちゃってんの?私の個人情報駄々漏れじゃん)

『とにかくまあ首輪付けてるって事は飼い主さんいるのね?』

『は・・・・い・・・放し・・・・飼い・・・させて・・・もら・・・って・・ます』

(イグアナを外出自由な放し飼いなんて聞いた事ないよ・・)

『それで用件は何?』

『ちょ・・・・っと・・・いい・・・・にく・・・・い・・・・の・・・です・・・が・・』

『ごめん・・ちょっと待っててくれる?』

(あー駄目だ・・・ある意味みけっち、ニワッチよりもやばくない?)

私は部屋を出て冷蔵庫にあった牛乳をがぶ飲みして気持ちを落ち着かせました。


『ごめんね。続けて』

『ここ・・・ろ・・・・の・・・じゅ・・・ん・・・び・・』

『あーわかったから。とりあえず心の準備出来るまで待つから用件から話そう』

五分経過・・・・。

『じつ・・・・は・・・・さい・・・・き・・・ん・・・フル・・・-ツ・・出し・・てく・・・・・れな・・・い・・・ん・・・・で・・・す』

『・・・・・何?フルーツが食べたいの?持ってこうか?』

『それ・・・・じゃ・・・・あ・・・意味・・・が・・・・あ・・・り・・・・ません・・』

『ごめん。ひたすら待つから、まとめて話して』

更に10分経過


『・・・・・わかった。要は最近大好物のフルーツが食事の時に出てこないからどうしたらいいのかの相談って事ね。ああ、そのまま私が話すから聞いて』
『とりあえず、飼い主さんにあなたの意思が伝わる様にすればいいんでしょ?』
『首輪の所に【フルーツ食べたい】ってメモ付けてあげるから』
『それを見れば驚いて出してくれる様になると思う。ハイ解決!あなたの家教えて』

『そ・・・れ・・・が・・・・・・わか・・・・らな・・・・いん・・で・・す』

『は?あなた放し飼いで外出自由なんでしょ?』

『じ・・・・つ・・・は・・・ほう・・・・こう・・・・・・おん・・・ち・・で』

『・・・・・・』
(駄目だ・・・・まじめんどくさくて泣けてくる・・・)
(私は迷子センターの職員じゃないんだから・・・て言うか動物って自分の家に帰る本能持ち合わせてるんじゃないの?)


『わかったよ。あなたの家探してあげるけど、そのままじゃ目立つからこのバックの中に入ってて』

『は・・・・・・・・・い』


ササッ!

『速っ!!』


イグッチはすごい早さでバックの隙間に入って行きました。

(話すスピードと動きが反比例し過ぎだよ)

(まあ、とりあえずこの辺でイグアナ飼ってる家って聞き込みすれば、すぐ見つかるでしょ)

私は甘く考えていました。

この後の珍道中が、とんでもない長い時間である事を知る由もありませんでした・・・。

ゆっくり過ぎるイグアナ

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