高度不妊治療の末、やっと授かった小さな命が
私のぺったんこのお腹に、頑張ってしがみついている。
夫婦ともに不妊だった私たちにとって、この妊娠は
夫婦二人で手に入れた糧だと、私は確信していた。
治療している間は毎日のように通院し、注射し、検査して。
ホルモンバランスが崩れるせいか
突然悲しくなったり、
イライラしたり、
何をしても集中できなかったり
夜眠れないことなんて毎日のようにあった。
仕事を抜けて検査に通う
仕事を終えて注射に通う。
私は、私だけが辛いと思っていた。
夫は自宅で己の提出物を用意し、
夫が用意したものを、なるべく冷やさないように、
大切にタオルにまいて私のお腹に挟み、クリニックへもっていく。
体の負担も、精神的負担も大きく
かなり疲弊している状態だった。
それでも、不妊治療をやめれば
子供を諦めることになる。
諦めたいのに諦められない。
やり場のない気持ちが夫へとすべて向かっていた。
妊娠にたどり着くまでは。
体外受精をした後は、クリニックが定める日数を注射に通いながら過ごし
《妊娠判定》と言われる尿数値で一般的に妊娠が発覚する少し早い段階で判定を受ける。
胎嚢と呼ばれる、赤ちゃんが入っている袋がまだ確認できない段階で
着床しましたよ。と告げられた。
普段の通院では夫は着いてこないけど
この、判定日は一緒にクリニックへ向かい、
一緒に結果を聞き、
静かに、一緒に泣いた。
クリニックの帰りにスーパーへ立ち寄り
赤飯を買って帰った。
その時のレシートには
《妊娠判定日!陽性!無事に生まれてきますように。》とメモを書いて保存した。
この瞬間、初めて、
夫も一緒に頑張ってくれていたんだと感じた。