百人一首を学びませう

トオル

あ~あ、忘れ物した

 藤原トオルが下駄箱で靴を履きかえようとして忘れ物をしていることに気づき、教室に引き返すと、そこには見覚えのある人物が…

トオル

あれ? 笹塚先生

 生物教師笹塚は、生徒の席に座って読書をしていた。
 不意に名を呼ばれゆっくりと顔をあげる。

笹塚先生

おう。トオルか

トオル

てか先生、なぜ教室にいらっしゃるんですか?

 生物教師で同準備室に自室を持ち、なおかつそこを腐海の森の如く書類や書類や書類を足の踏み場無く展開させている笹塚先生が教室にいる理由、それは

笹塚先生

え? 教室が広くて殺風景で落ち着く、から?

どうやら生物教師笹塚は掃除ができないらしい。

トオル

……いい加減部屋
片づけたらどうですか?

笹塚先生

んー、めんどい

トオル

ところでそれ、
何読んでるんですか?

 忘れ物を取りに戻っただけなのに、冬織はなかなか話を切り上げられないでいた。知りたくもないが、気になる人が自分の席に座って何を読んでいるかぐらいは聞いてもいいか、冬織の問いはそんな単純な理由で発せられた。

笹塚先生

あーこれ?

笹塚先生は冬織に表紙が見えるように本を閉じる。

笹塚先生

『小倉百人一首』

トオル

……へー

聞かなきゃよかったと後悔したがそれもあとの祭りである。

トオル

なんか嫌な予感

笹塚先生

しょうがねえな。
どっこいしょ

楽しそうに言って笹塚先生は居直ると、冬織の顔を真正面から見据える。

笹塚先生

笹塚せんせいがかわいい冬織くんの為に解説してやんよ♪

トオル

え。いりませんよ?

笹塚先生

ばっっかお前。短歌は昔の人たちの恋愛ツールだぞ

トオル

うん。だから?

笹塚先生

知りたくねえの?

トオル

……別に?

笹塚先生

やめて。センセイ悲しくなっちゃう。そこは『知りたいです』って言って

トオル

嫌ですよ。誰が好き好んで百人一首なんか。パンダのぬいぐるみとでもやったらいいでしょう

笹塚先生

ヒドい。けちんぼー

トオル

ひどくないし

笹塚先生

じゃあ、どうすりゃいいの?

トオル

…そんなにやりたいんですか?
百人一首の解説なんか…

笹塚先生

うん

トオル

まあ、別に構いませんけど、
そんなの、面白いんですか?

笹塚先生

う……

トオル

何も考えてないんだ

笹塚先生

ま、なんとかなるって

トオル

なにが、どう、
なんとかなるんですか?

笹塚先生

♪~

トオル

おい

笹塚先生

…次までに
考えてくるって

トオル

…もうしょうがないな。
じゃあ、どこからですか?

笹塚先生

よし! まずは天智天皇からな

トオル

はいはい

笹塚先生

俺は現代語訳をさらに噛み砕いてわかりやすく読んでみようと

トオル

はいはい

笹塚先生

って聞いてるー?

トオル

はいはーい

笹塚先生

…といわけでここでは
『小倉百人一首』を

トオル

男二人が

笹塚先生

ゆる~く紐解いていく感じの御話です

トオル

興味のある方は次回をお楽しみに♪

つづく

百人一首を学びませう

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