タキ

じゃあ、4階から調べて
くだっていこうか。
その方が楽だし。

タキ

あ、教室以外は
みんな回ったんだっけ?
どこから行こうか。

ミヤ

そうね、
4階は一応、早朝の段階で
全部見回ったつもりだけど……
見落としがないか確認に行きたいわ。

タキ

なら一番上からだね。行こう。

タキ

そうだ、さっき言ってた
ルールってなに?

タキ

ええと……
朝に現れる謎が
てんでばらばら、っていう
話だったよね。

ミヤ

ええ。申し訳ないけど、
今の今まで確かな法則性を
見出せずにいるのよ……

ミヤ

ただわかったことは、
現れるものに言語は含まれないこと。
理解の出来そうな文字列で出てくる、
ということは一度もなかったわ。

ミヤ

だから、それ自体を見つけ切って、
研究して、法則を証明して……と
していると、いつも時間が無くなってしまう。

タキ

大変なんだね。
それを毎日……

ミヤ

いいのよ。
もう、慣れてしまったから。

タキ

……

タキ

そっか。
でも大丈夫だよ。
私がいるから。

タキ

今日しかいないけどね。

ミヤ

……ありがとう。
頼もしいわ。

ミヤ

ルールの話の続きだけれど、
どうも毎日は連続していないようなの。

ミヤ

今日持っていたものが
明日にはなくなっていたり……
なにか、リセット作用が
働いているのかも知れない。

タキ

なるほど、私の記憶も
毎日リセットされてるのかな……
だとしたら嫌だなあ。

ミヤ

嫌よね。
そんなことが出来る技術が現代に
実在しているとは思えないけど……
もう起こっているんだから。

タキ

うん……
悲しいなあ、覚えてられないの。

ミヤ

ええ……

ミヤ

それと、今までなくなったものは
だいたい色んなことを書いたメモだとか、
試した実験、持っていた鍵、
次の今日へ向けたメッセージよ。

ミヤ

他にも色々試したけど……
結果は今日の通り。正直、
何の糸口も掴めていないわ。

タキ

そっか……

タキ

まあまあ、今日はベストを尽くそ。
明日も明後日も今日はあるんだから。

ミヤ

あなたは今日しかいないって
さっき自分で言ったじゃない……

タキ

うん。
でも、ひとりじゃないから。

ミヤ

……

ミヤ

……ふ、頼もしいわね。

タキ

えへへ。

タキ

ふう、4階に着いたね。

タキ

端っこの理科室から見ていこっか。

ミヤ

ええ。

タキ

……学校休みがちだったのはずっと
病気のせいかと思ってたけど、
歩き回ったり一気に階段のぼったりして
平気なの?

ミヤ

……それはたぶん
あなたの生きてきた日の私ね。
私は陸上部で長距離専攻だったから、
体力だけなら有り余っているのよ。

タキ

そうなんだ!
今日によって人生も全然違うんだね。

ミヤ

私の日のあなたはもっと……
そうね、チワワみたいだったわよ。

タキ

ええ、それじゃあ
プルプル震えてばっかりで
びっくりしすぎて目が落ちちゃうみたい
じゃない!
嫌だよう……

ミヤ

ふふふ。
かわいくって良いじゃない。

タキ

ここでは何の役にも立たないよ!

ミヤ

かわいくないよりはずっとマシよ。
さ、理科室に入りましょ。

タキ

もう……

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