色々あった帰り道に青年と出会い道案内していた私は、彼といろんなことを話しながら歩いた。
色々あった帰り道に青年と出会い道案内していた私は、彼といろんなことを話しながら歩いた。
彼は[七海 導(ななみ どう)]という青年で、アルバイト募集したのはいいものの面接なしで採用されて道が分からなかったらしい。
スマートフォンも買ったばかりで、以前はガラケーを使用していたそうだ。
ついでにスマートフォンの説明を2、3すると、慣れないながらも操作して、ひとつひとつに顔を明るくしながら覚えていっているようだった。
一ノ瀬さんありがとうございます
奏、でいいよ。25歳なんでしょ?
だからこそ、です!一ノ瀬さんより年下ですし!
ぶんぶんと手を振ってとんでもない!と言いだす彼に、今日別れた彼が少し重なる。
(忘れようって、思ってるのにな)
交差点を左に曲がり、住宅街から少し離れた人気のない道に出た。
そこには古びた屋敷があり、中からはオレンジ色の明かりが漏れている。
壁にはツタが這い、庭には様々なオブジェが光にあたって怪しげな雰囲気を醸し出している。
玄関の前には
≪Heart Wash≫
≪営業中≫
と書かれた看板がぶら下がっていた。
あ、ここです! ありがとうございます!
長い背を折りお辞儀をする導。
今時こんなまじめな青年もいるもんだな。
見た目チャラそうだけど、イメージ変わったなあ。
ちなみにここって何のお店なんですか?
求人広告では『なんでも相談所』って書かれてましたけどねえ…でも普通に喫茶店みたいですよ
……それって絶対怪しいお店なんじゃないのか、思ったのは内緒にしておこう。
なんとか開運とか言って怪しい壺でも買わされそうだ。
また今度来てくださいね!とニコニコしながら手を振る導に、何も言い返せないまま彼はお店の中へと消えていく。
今度、か。
美味しいカフェラテを頂きに一度寄ってみようかな。
‐後日‐
今日も定刻通りに仕事を終え、いつものように入った住宅街。
ふと気になって、以前導という青年を道案内したあの不思議なお店に寄ってみることにした。
喉が渇いていたので、寄り道にはちょうどいい。
まだ明るい道を曲がり、こんな時間から灯っているオレンジ色の街灯を目指す。
お店はすでに開店しており、たった今お店を出てきたお客さんとすれ違う。
ありがとうございましたー! …あら?
銀色の髪をした、小さな背の…女の子?
店番をしているのだろうか、丁寧に背を折りお客を送り出した後、立っている私に気付いたその少女が私に近付く。
いらっしゃいませ。コーヒーだけにします?それとも心を洗います?
え?
あなたも悩みがあってここにきたんでしょう?
にこり、と笑う少女。
この出会いが私の人生を大きく変えるだなんて誰が予想していただろうか。
続く…