――そして、決着の時が訪れた
楽しめたか?
あと数秒のうちに息絶えるであろうドラゼルに
俺はそう問いかけた
……最高の、時間だった
ニィ、と
今際の時を迎えたリザードマンは、
めいっぱい遊んだ後の子供のように微笑んで――
冥府でまた会おう、我が強敵よ
ゆっくりと、草原の中に倒れていった。
ああ、いずれまた
しばし、黙祷する
厄介な生き物だよな、俺達
殺しておいて何を身勝手な、と思わないでもないが
俺は、ドラゼルにほのかな親しみを覚えていた
アイツは、俺と同類だった
刃を交わすうち、直感で、本能で、そう理解していた
闘争という形でしか、
自分ってヤツを表に出せない
言葉じゃ誰とも理解し合えない
救いがたい不器用者なのだ、と
でも、だからこそ、俺達は通じ合っていた
切り結ぶことで、これ以上ないほど語り合っていた
結局、俺が勝てたのは
ドラゼルの俺に対する理解より、
俺の、ドラゼルに対するそれが深かったからだろう
アイツは予想していた
俺に、尻尾での追撃を読まれていることを
俺は確信していた
ドラゼルが宙に舞った矛を利用することを
けれども
アイツは、俺が足元の木刀を使うことに
思い至らなかった
ドラジルは、俺を理解しきってはいなかったのだ
だからアイツは、負けて死に――
俺はまたも、この地上に取り残される