彼を見ていると心臓が高鳴るのだ。

声を聞くだけで胸が締め付けられて、苦しいのに彼の姿を見ずにはいられない。
いつもはくだらないことばかり出てくる口も彼の前では縫い付けられたように動かない。
きっとこれが恋というものなのだろう。

彼が笑っていてくれたら私も嬉しい。悲しいときはとても心配になる。幸せになってほしいと思う。
彼が幸せならそれでいいとさえ思う。こんなにも他人のことを思うなんて。

(ああ、)
(今、何してるの?)
彼が気になって仕方ない。
一人の人のことだけでこんなに頭がいっぱいになるなんて。
一挙一動見逃せない。彼が私の元気の補給機だ。

「ねぇ」

ぼんやりと彼を見つめていたら、その視線に気づいたのか否か不意に声をかけられた。
心臓が爆音を立てて胸の中で暴れる。平静を装いながらも顔は火が出そうなほど熱い。
彼は私を見つめていたけれど、ふと目を見開いて驚いたような顔をした。
彼への好意が態度に出ていたのか、ばれたのか、と焦る私をよそに彼は慌てて口を開いた。

「…な、なぁ!その、」

「心臓、どうしたの?」


あんまりにもうるさいから取り出しただけよ!

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