「ねぇ、いつ、私に心臓をくれるの?」
不意に彼女がそう言った。突然何を言い出すんだ彼女は。

今しがた読んでいたスケルトンが主人公の冒険物語の内容はもうぶっ飛んだ。誰の心臓が何だってと問えば彼女は再び口を開いた。

「…言って、なかったっけ。おかしいな。貴方の心臓は私の物だから、いつ返してくれるのかなって」
ぽつりと呟かれた言葉は全くの意味不明だ。

「違いますよ。僕のは僕のですから。貴方のじゃありません」
「待って、何を言ってるの。貴方の心臓のことだよ。私のものだわ」
「それで?僕の心臓が貴方に手渡ったらどうなるんですか?」
「大切にするわ。抱きしめて一緒に眠るの」
「却下します。僕のですから」
「別に、今すぐでなくて構わないのよ!貴方がいらなくなってからでいいのよ」
「へぇ、僕が先に死ぬかどうかもわからないのに」
「ん?そもそも、その心臓は私のよ」
「貴方には貴方の心臓があるでしょう」
「じゃあ、貴方は、貴方の心臓が私の物ではないと、そういってるの?」
「そうです」
「…それで、その心臓をどうするの?」
「僕と共に眠りについて燃やして灰になって消えるんでしょうね」
「なんてこと!どうして私の物を!燃やす?灰になる?ふざけないで!」
「…だから、どうして?」

「それが私の物だからよ!」
ごめんよ、君が何を言ってるかわからないんだ!

さぁ、これはだれのもの?

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