あまりに暇すぎて俺が『空中浮遊』という新たなスキルを獲得した頃、やっと母親が帰ってきた。傍らには妹の結もいる。
もう日が完全に落ちているためか、母親は洗濯物の取り込みやら夕飯の支度やらで動き回っているが、結の方はリビングのテーブルに座って俯いたまま動かない。やはり家族の死を知って落ち込んでいるんだろうか。
結は俺より2才年下の妹で、中学2年生だ。身長は150cmに届くかどうかという小柄な体躯だが、バレー部に所属し運動神経も悪くはない。勉強の方はあまり得意ではないようだが、結構頑張り屋なので努力で補っているようだ。学力は平均以上、運動はできないわけではないという程度の俺とは正反対。好みなんかもかなり違っていた。
結とは一時期かなり仲が悪かったが最近ではそれも無くなり、そこそこ良好な関係だったと思う。
まあ好感度を抜きにしても家族がいなくなればショックは受けるだろう。夕飯の時間になっても結と母親の間に会話は無く、気まずい沈黙が場を支配していた。
その空気に耐えられなくなった俺は二階にある自室に戻り、気を紛らわせるために新たな心霊スキルの習得に励んだのだった。