次の木曜日。
次の木曜日。
……あの、勇太、さん!
基礎生物の授業が終わり、我先にと講義室を出て行く学生達に紛れそうなフードに、怜子は思いきって声を掛けた。
何?
怜子の呼び止めに屈託なく笑い、怜子が座っている場所までやってきた勇太に、鞄から取り出したランチボックスを差し出す。
こ、これ。少しだけ。腹の足しにはなると思うから
ランチボックスの中身は、今朝自分のお弁当と一緒に作った、胡瓜と卵焼きとかにかまぼこを入れて巻いた巻き寿司。黄色と緑と赤が鮮やかな、怜子が得意とする料理の一つ。勿論、幽霊と歪みのことを最初に解決してくれた勇太への、御礼のつもり。
美味そう
無造作にランチボックスを開けた勇太は、中身を見て感嘆の声を上げ、そして一つ食べてまた感嘆の声を上げた。
美味い!
勇太が拒否したら怜子が全部食べようと思っていた巻き寿司は、あっという間に勇太の口の中に全て消える。
これ、兄貴の研究室に持ってったらあいつら絶対喜ぶぜ。あ、三森は肉とか魚とか食わないからあいつだけカッパ巻きな
口を動かしながら爽やかに笑う勇太を、怜子は自分の空腹も忘れ、嬉しく見守っていた。