若い騎士風の男

……ふう

騎士風の大男

おう、待ってたぜ
その分だと上手くいったみてぇだな?

若い騎士風の男

へへ、オヤジの言う通りにしたら大成功だ!
オレ、もうお腹いっぱいだよ

騎士風の大男

当たり前だ、俺様を誰だと思ってやがる
ペテンのサムとはこの俺のことよ

若い騎士風の男

でも、こんなに上手くいくなんてね

騎士風の大男

あの町の酒場は少し泣かせる話でもすりゃ
すぐタダ飯タダ酒を振る舞ってくれるって
仲間連中から聞いてたからな

騎士風の大男

ま、俺様にはチョロ過ぎる相手だったぜ

若い騎士風の男

オヤジは凄いなあ……
オレ騎士のフリなんて生まれて初めてだから
いつバレるかってずっとヒヤヒヤしてたよ

騎士風の大男

ったく、お前はまだまだだな

騎士風の大男

せっかくそれっぽい鎧を着てんだから
それっぽく偉そうにしてりゃいいんだよ

若い騎士風の男

でもこんな鎧、どこで手に入れたの?

騎士風の大男

裏の人間にゃ色々裏のルートがあるんだよ

若い騎士風の男

凄いなあ、オヤジはカッコいいなあ

騎士風の大男

ちゃんとイチから仕込んでやるから安心しな
お前もいずれは立派なペテン師だ

若い騎士風の男

うん!

若い騎士風の男

……それにしてもオヤジ、
酒場の人たちはちょっと可哀想だね

騎士風の大男

あァん?

若い騎士風の男

結構いい人達だったけど
騙されてたって知ったら傷つくだろなぁ

騎士風の大男

おいおい……
ペテン師がカモを気遣ってどうするよ

若い騎士風の男

でも……

騎士風の大男

でもじゃねェ!

騎士風の大男

……ったく、要はあの連中が
俺たちに騙されたと気づかなきゃいいんだ

騎士風の大男

あの連中のことを思うならなおさら
堂々と騙し続けてりゃいいんだよ
それがペテン師なりの気遣いってもんだ

若い騎士風の男

はぁ~……さすがオヤジ
言うことが違うなぁ……

騎士風の大男

それじゃ、次の仕事だ!
昼までに西の町に向かうぞ

若い騎士風の男

あ、オヤジ、待ってよ~!

 一方、その頃……

店主

よし、今日も一日よく働いたぜ!

スノッリ

おう、お疲れさん

店主

あんたもな、スノッリ
どうだ、久々に仕事になりそうか?

スノッリ

ああ、少し登場人物を整理すれば使えそうだ
アイツらのおかげで今回は傑作の予感だぜ

店主

いつになく手の込んだ作り話だったもんな

スノッリ

ありゃ恐らくその筋のプロだな
特にハミルカルの方は慣れた感じだった

スノッリ

おかげでオレもいい話が書けそうだぜ

店主

そいつは俺にとってもありがたいな
何しろアンタのツケがまた溜まってきてる

店主

ハミルカルもマゴーネも随分よく食ったし

スノッリ

へへ、まあ印税が入ったら
すぐに倍返ししてやるよ

店主

おう、期待してるぜ
人気作家のアンタなら間違いない

スノッリ

ははは、この酒場に入り浸ってると
ネタに困らなくて助かるよ
アイディア料なんか安いもんだ

店主

まあ、食うに困ったヤツらが必死に頭絞って
作り話を提供しに来てくれるわけだからな

店主

アンタもよくこんな仕組みを考えたもんだよ
一番のペテン師は誰なんだか

スノッリ

よせよ、人聞きの悪い

店主

しかし騙した気になってる詐欺師どもは
このカラクリを知ったらどう思うのかねぇ

スノッリ

ああ、オレもそれが楽しみでな
いずれ充分稼いだら全部ネタばらしした本を
書いてやろうと思ってるんだ

店主

ははは、そいつはいいや!

スノッリ

実はもう、タイトルも決めてあってな
マスターの意見も聞きたいんだが

店主

ほう、どんなタイトルだ?

スノッリ

――『アルサラムの酒場』っていうのさ

-Fin-

第四話 真実の真実の真実

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