光に飲まれた一行が目を覚ますと
そこはどこまでも広がる草原だった。



レン

んー…
俺たちは一体…



レンがぼーっとしていると
知った声が聞こえてくる。

悪魔

あ、あれ!?
こんなはハズでは…!

レン

あ、お前。


そこには先程まで戦っていた悪魔がいた。
しかし、どこかうろたえているように見える。

サナエ

ここが黄泉の国なのかしら?

マコ

とりえあず、みんな無事みたいですね。

トラ

無事って言うの、コレ?

一同が悪魔を無視しつつ
そんな呑気な会話をしていると
どこからともなく光の矢が飛んできた。


悪魔

ぎゃぁぁ!!

レン

トラ

あ、倒された。

レン

哀れ…


悪魔は塵となって消えてしまう。


そこへ馬へ乗ったひとりの男が現れた。
矢を放った主のようだ。
同じく馬に乗った数人を伴っている。

シマ

大丈夫か?


現れた男は和装に身を包んでいたが、
どことなく現代のそれとは異なっていた。

トラ

おぉ!ボク知ってるよ!
この服装って
なんか昔の時代のやつだ!

サナエ

えっ!?
テーマパークにでも飛ばされたの?

シマ


何を言っているのだ?
しかし…その服…
お主らも彼女と同じ国から来たのか?

レン

彼女?

シマ

ふむ。
とりあえず一緒に来てもらおうか。

そう言うと、彼は部下と思われる者に指示した。


特に抵抗せずに
レン達は現れた男たちに言われるまま
馬に乗せられ、何処かへ向かうこととなった。






馬に乗せられ進む一行だが
彼らに飛び込んできた景色は
現代のものと異なっていた。








不安に駆られつつも
彼らは館のような場所に通された。


シマ

少し待っていろ。


そう言うと、男は奥へと引っ込んだ。


手荒な真似は受けていないとは言え
監視の置かれた中で
レンたちは大きな会話もできずにいた。



レン

なあ、明らかにおかしいよな。

マコ

ここは、どこなんでしょう?

サナエ

テーマパークにしては
凝ってるわよね。

トラ

テーマパークじゃないと思うなぁ…



一同がヒソヒソと話していると
ひとりの少女を伴い、男が戻ってきた。

シマ

待たせたな。

トキ

レン

うわぁ
明らかに時代違う人いるよ!



男が連れてきたのは
ゴスロリファッションの少女だった。

男やその他の住人、
建物の感じとは雰囲気がかけ離れている。


シマ

どうだ?トキ殿。
知り合いか?

トキ

いいえ、シマ様。
知り合いではありませんわ。
でも…



そう言うと、ゴスロリに見を包んだ少女は
しげしげとレン達を見つめた。


トキ

服装を見るに同じ時代のようですわ。
…貴方たち、
何年から飛ばされてきましたの?

レン

何年から?
…いやいや、俺たち全く
状況が飲み込めてないんだけど…

トキ

まぁ。見たところ
同じ退治屋かと思いましたが
状況把握能力の低い方たちなのかしら。

レン

トキ

仕方ありませんわね。



そう言うと、彼女はどこからともなく出した
ティーカップで紅茶をすすった。

トキ

わたくしが説明して差し上げましてよ。



紅茶を一口飲み終えると
彼女は説明を始めた。

トキ

わたくしはトキと申します。
2015年の4月から
この時代に飛ばされて参りましたの。

レン

2015年4月って…
俺たちが飛ばされたのの一か月前だ。

トキ

まぁ。
わたくしがこの時代に来てから
ちょうど1ヶ月でしてよ。
時間のズレはないのですね。

トラ

ていうか、
”この時代に飛ばされた”って
どーゆうこと?

トキ

見てわかります通り、
こちらは飛鳥時代ですわ。

レン

見てわかるって…

レン

って、飛鳥時代!?

トキ

人々の服装や建物の様式…
食べ物などをとってみても
飛鳥時代にしか見えませんわ。

レン

いやいや、そんなハズ…

マコ

悪魔が見せている幻影とか…

トキ

それも考えて色々調べましたけれど
どうやら違うようなのです。

サナエ

つまり、あのザコ悪魔に
飛鳥時代に飛ばされる
嫌がれせを受けたの?

トラ

こんな手の込んだ
嫌がらせするかなぁ?
しかも自分はやられてるし。

マコ

黄泉の国とか言っておいて
飛鳥時代というドッキリですね!

レン

いやいや…

トキ

あなた方は悪魔に
飛ばされてきましたの?

サナエ

トキは違うの?

トキ

ええ、わたくしは儀式の最中に…

レン

儀式…?

トキ

ええ。
それはさておき、
帰る方法ですが…

シマ

そこからは私が話そう。



しばらく黙って聞いていた男が
話に割って入った。


シマ

私はシマと申す。
このあたりを取り仕切っている。

マコ

偉い人ですね!!

シマ

うむ。
お主らを帰すことができる
力を持った方がおられるのだが…



そう言うと、シマは渋い顔をした。

シマ

今この国では
先の大戦で封印した悪魔が、
復活しようとしているのだ…
その影響でその方が
力を使うことができない。


シマがそう言うと、
トキがすっと前に出た。

トキ

つまり、その悪魔をなんとかしなくては
帰れないということですわ。

シマ

トキ殿!
これは我々の問題。
貴殿たちに迷惑をかけるわけには…

トキ

迷惑だなんて。
退治屋が悪魔を倒すのは
当然のことですわ。

トキ

幸い、追加で4人も参りましたもの。



トキはにっこり微笑むと
レン達の方を見た。

レン

え?え?

トキ

つまり、この時代を脅かしている
悪魔を倒し、その”力を使える方”に
帰してもらうのですわ。
簡単でしょう?

レン

いや、そんな簡単に行く訳…
なぁ?

マコ

なるほど!
そーゆうことですね!

サナエ

なら、ちゃちゃっと
やっちゃいましょうよ♪

トラ

飛鳥時代の夜…
想像しただけで…

トキ

皆様、賛成ですわね。

レン

え、あれ?

トキ

とはいえ、わたくし達だけで
勝手に動くわけにも参りませんわ。

シマ

それについてだが…


そう言うと、シマとトキは互いに目配せする。

トキ

わたくしだって、
1ヶ月何もせずに過ごした
わけではありませんのよ?

シマ

今晩、全国の当主を招いての宴を行う。
そこで、今後の対策を話し合う予定だ。

シマ

トキ殿は参られてから悪魔退治など
多大な協力をいただいておる。
話し合いで同意を得られれば、
お主たちも好きに動くことができるだろう。

トキ

と、言うことですわ♪


互いに微笑み合っていたトキとシマだったが
ふいにシマの表情が険しくなる。

シマ

本来、このようなことを
異国、いや、違う時代の者に
頼むべきではないのだろうが…

シマ

我々には悪魔と戦う力が不足している。
…どうか、力になって欲しい。



シマはまっすぐにレン達を見据えた。

トキ

これが帰る方法なのですから。
迷惑だなんて思わないでくださいませ。

サナエ

任せておいて!
しかも、飛鳥時代の観光なんて
滅多にできない貴重な体験だわ♪
名物なにかしら…

マコ

わたしたちに
出来ることなら喜んで!

マコ

うぅ…それに早く帰らないと
会社の締切が…

トラ

夜になる前に終わらせたい…

レン

それは無理だろ。

トキ

貴方も協力してくださいますわね?

レン

うぐ…

レン

こうったら、やるしかないな!

シマ

…かたじけない。








こうして飛鳥時代に飛ばされた一行は
この時代を脅かす悪魔と
対峙することになったのだった。



















シマ

お主たち、とりあえず
ここに性別と名前、職業を書いてくれ。

サナエ

ボールペン持ってたかしら?

マコ

あ!シャーペンならあります!

しかし、木簡(もっかん)に
シャーペンでは
木が削れるだけでかけない!!

レン

このすずりと筆で…

マコ

うう…
すずりとか、昔つかいましたけど…
使い方を忘れて…こうでしたっけ?
(水を入れないでゴリゴリ)

トラ

おねえちゃん、水入れないとダメだよ。

サナエ

あ!そうだ!
シマさん!!

シマ

む?

サナエ

電池が残っているうちに
撮っとかないと♪

シマ

む!?
今の光は一体!?
おぉ、私が写っている!!??

トキ

シマ様。
顔が怖いですわ。

サナエ

はい、もっかいいくよ~
ピースで~

シマ

ピース!?

トキ

(ピース)

トラ

ボクも入る~!

レン

何してんだ、全く…

マコ

サナエさん!サナエさん!

サナエ

どうしたの?

マコ

職業のとこ、
OLって書いてわかりますかね??

サナエ

うーん…

サナエ

”オフィスレディ”で
いいんじゃない?

トラ

ちょwwwww

レン

そ〜ゆ~意味じゃない!!!

シマ

…おふぃすれでー?





つづく




悪魔退治珍道中 第二話

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