Ⅹ エピローグ

大丈夫?フェリシア、ベティ

泥だらけのフェリシアを抱き寄せ、ウィルフレッドは訪ねた。

ええ……ありがとう。でも、どうして私たち、助かったの?

掠れた声で、フェリシアは問う。
三人がいるのは、恐ろしい魔物が侵入した部屋の一角、大きな鏡の裏側だった。

昔、妖魔は鏡が苦手だと聞いたことがある。乳母が話した昔話だから、真相は分からないけどね。それで思いついたんだ、この鏡の裏側へ逃げ込めば、助かるんじゃないかって

だから……私たちの手を引いて、鏡の裏側へ逃げ込んだというわけ?

そうだ。それが正解だったみたいだ。あの妖魔は、部屋を空き放題に荒らして帰って行ったんだから

案外、おっちょこちょいなのね

そうかもな

ベティが呟くと、ウィルフレッドとフェリシアは笑った。

未知なる怪異との遭遇から無事生還したフェリシアとウィルフレッドの絆は、吊り橋効果によりいっそう強まった。
ベティは相変わらずの言動で、学内で<毒舌令嬢>と呼ばれるようになったという。

End.

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