普段、瑞希は女っ気のかけらも無いような格好で過ごしている。
もちろんお出かけ用の服はもってはいるけれど、その中に『男の子とデートするための勝負服』は含まれていなかった。
身動きのとりやすいパーカーやジャージの類ばかり引き出しに完備されていて、いざという時になって瑞希は泣きそうになった。
こんな時に頼りになるのは、やはり小学校時代からの大親友、高槻茜だ。
デートの前日である週末の深夜になって泣きつくと、
普段、瑞希は女っ気のかけらも無いような格好で過ごしている。
もちろんお出かけ用の服はもってはいるけれど、その中に『男の子とデートするための勝負服』は含まれていなかった。
身動きのとりやすいパーカーやジャージの類ばかり引き出しに完備されていて、いざという時になって瑞希は泣きそうになった。
こんな時に頼りになるのは、やはり小学校時代からの大親友、高槻茜だ。
デートの前日である週末の深夜になって泣きつくと、
まったく、瑞希って昔から甘えベタなのよ
と、ひとしきり愚痴をこぼしながらも、茜は戦闘用具を持参で朝一番に堀川家に来てくれる事を快諾してくれた。
そして、
なにこれ?
ヘアバンドで前髪をアップした瑞希が声を漏らした。
見ればわかるでしょう? つけまよ、つけま
つけまって着けまつ毛か?
鏡台の前に女子が二人。
そんなのいらねーし。普通の化粧で十分だろ
気恥ずかしそうに瑞希が抵抗した。
女の子は目力でビックリするぐらい印象がかわるんだから、ちゃんと着けなさい
いらねーし!
ほら、しのごの言わないで着けるの。前日になって泣きついてきたのはどこの誰だったかしら?
あたしだけど……
んじゃあ、わたしの言う事を聞いてもらわなくちゃ困るわね。抵抗したら金輪際、ヘルプには着てあげないわよ?
そう言って動き回る瑞希を押さえつける茜。
そんな~あかね~っ
普段はアップしている前髪を下ろして、少し横に流すように茜がセットしてやる。
鏡の向こうに映った瑞希を見ながら茜が言った。
ほら、瑞希。すっごく可愛くなったじゃない?
べ、べっ別にかわいくねーし!
朱顔の瑞希がそれを否定する。
女の子らしく、というか唯一かわいらしく見せられそうなブラウスとキャミの組み合わせ、それにショートパンツのコーデにしてみた。
あいにくスカートの類は普段から瑞希が嫌がってほとんど買わなかったために、相性のいい組み合わせが無い。
うわああっ、やっぱこれおかしいんじゃねえの?!
大丈夫よ瑞希、自信を持ちなさい
んでもようぅ?
ぐずる瑞希を諭(さと)しながら、堀川家の玄関から送り出す。
ほら、急がないと待ち合わせの時間に間に合わないよ!
わ、わかった行って来る!
せっかく茜をヘルプで読んだのにギリギリまで瑞希が納得しない具合で、もう待ち合わせ時間までは猶予が無かった。
運動部女子らしくいつもの様に全力疾走とはいかず、瑞希はちょっと小走りといった感じで駆けていく。
そんな姿を茜は見送った。
心配しなくても瑞希はとっても可愛いもの。仏光寺君もびっくりするわきっと
そう呟いた茜は、手に持っていた携帯電話で時刻を確認する。
まだもう少し時間には余裕があるみたいね……ってこれ、あらま
茜が手に持っていたのは瑞希の携帯電話だった。