夜明け前になっていた。どこをどう歩いたのかも思い出せず、私は気が付けば、国王の王室まで歩いて来てしまっていた。
すっかり泣き腫らした目。鏡はないが、きっと今の私は、ひどい顔をしているだろう。国王は既にお休みになられているだろう、既にその部屋には居ないだろうと分かっていて、その場所まで歩いてしまっていた。
扉に手を掛ける。すると私の右手は、霞のように扉を通り抜けてしまった。その非現実的な光景に、思わず苦笑した。
私にとっては、騎士様こそが、『霞のようなひと』でしたから。
今更になって、その言葉の意味というものに気付いた私がいた。
嘘のように、扉を潜り抜ける。