妹の惑星

恐ろしい話をしよう。
今世界には1000人の男しかいない。

そしてそれ以外の人類、60億人は妹、妹、妹。

数少ない男に大量の女。
取り合いにならないはずがない。

そして世界中は男を巡って争いを始めたのである。

東京都足立区

雑魚

ヒャッハー!!!
男だ!!!
男がいるぞ!!!


それはまるで大学デビューで豹変した女子のような集団だった。
全身を似合いもしない高級ブランドで包み、無理矢理アヒル口を作りモテをアピール。
その必死さゆえに男がドン引きしようとも構わない。
最後は暴力で奪えばいいのだと目で語っている。
この区から埼玉南部でよく見かける山賊である。
彼女たちが目をつけたのは美麗な少年。
属に言うならショタ。

お兄ちゃん

……めんどいから解説やめていい?

りんりん

だめ


しかたねえな。
あーめんどくせえ。

彼女たちにとっては妹病アウトブレイク以来の獲物である。
彼女らは問答無用で襲いかかることにした。
もちろんこの間もアヒル口を崩すことはない。

雑魚

男ぉーッ!!!

怪鳥の如き怪奇きわまる叫び。
女たちは少年に飛びかかった。
その刹那、少年が天に拳を突き出す。

奥義。鳳凰転生!!!


その瞬間、炎が女たちを包み込む。

雑魚

ぎゃああああああああ!

愚か者どもが……


少年がつぶやいた。

見ていろ……大豪田ジャギ松


少年はそう言うと目標へ足を進めた。

埼玉県川口市

まゆまゆ

へくち!


高い声で大豪田真由(本名:ジャギ松)がくしゃみをした。
最近ではすいぶん声も高くなり、本当の女性になったかのようだ。
俺は真由にポケットティッシュを渡す。

お兄ちゃん

どうした?
風邪でもひいたのか?


バカは風邪引かないんじゃねえのか?
と言いそうになるのを寸前で俺は飲み込んだ。
言ったら真空波とかの人知を越えた必殺技で葬られていただろう。

まゆまゆ

なんかね。誰かが噂してたみたい。

お兄ちゃん

へぇー。
凄イネ。


俺はスルーすることにした。
このド変態どもならテレパシーの一つや二つ持っているに違いない。

まゆまゆ

ぶー。
お兄ちゃん、なんか冷たい!

常に絶対零度ですがなにか?
人知を越えるウイルスにかかるから、さーわーらーなーいーでーくーだーさーいー!
うーでーをくーまーなーいーでー!

俺がいつものように頭の中だけで罵倒を繰り返していると……

え?
ちゃんと言え?
チキン乙?

お兄ちゃん

死ぬやろが!!!

で、話を戻そう。
そこでいつものようにジュンが登校のグループに加わろうとしたわけだ。

じゅんじゅん

おっはよー!

両手でぱたぱたと手を振っていた。

そこにタンクローリーがツッコんだ。
「危険」ってデカデカと書いてあるヤツ。

まゆまゆ

お兄ちゃん危ない!

俺は真由に抱きかかえられて安全圏へ。
次の瞬間、タンクローリーが爆発。
火柱が立った。
ちゅどーんって。
周囲全部が火の海。

え?
鬱シナリオ死ね?

お兄ちゃん

え?
てめえのツイッターに突撃してやんよ?

いやいいやいやいや。
待って欲しい。
この連中がそのくらいで死ぬわけがないんだ。
だってわかるだろ?

ラスボスがどのくらい固いかってさ。
勇者の剣がないと勝てないレベルなんだって!

じゃあ話を戻そう。

全てを焼き尽くす炎。
その中からシュ○ちゃんの演じた人型ロボットのようにやたら雄々しく出てくるヤツがいた。
そいつは拳を天に突き出していた。

お兄ちゃん

え?
その状態って裸じゃないの?
お前さんも好きだねえ。
……まったく。
そこにツッコミ入れる君なら……わかるだろ?

お兄ちゃん

規制されてるんだよ!!!
DVDになりゃ全部映るんじゃね?
知らんけど。

で、そいつは炎から出ると雄叫びを上げたんだ。

じゅんじゅん

おどりゃああああああああッ!
どこのもんじゃワレエエエエエエエエェッ!!!

乙女(笑)のやたらドスのきいた高い声。
あのねアイツらを人間と思うから不条理だと感じるんだ。
ヤツらはガン○ムだと思えば……(なんか人生が嫌になった)

じゅんじゅん

出てこいコラァッ!
頭蓋骨かち割って、脳みそ掻きだしてから、背骨へし折ってやるぞ!!!


恐ろしく頭の悪そうな台詞を吐くジュン。

フフフ。このくらいでは無傷か。
なあジャック!!!

うん? 男の声?

じゅんじゅん

本名で呼ぶなボケェッ!!!
かわいくないんじゃゴラァアアアアアアァッ!!!

え?
ツッコミどころそこ?

フフフ。
ジャック、それに大豪田ジャギ松……
あのときのことを忘れたとはいわさんぞ!!!

全てスルーされてもな口上を続けるそのメンタル。
お兄さんだけは評価します。
ちなみに真由もぷるぷる震えている。

まゆまゆ

ジャギ松言うな! この……


真由はそこまで言って

まゆまゆ

ん?

と首を傾げる。

まゆまゆ

なんか言おうと思ったけど出てこなかった


首を傾げてかわいいアピールしても俺には通じません。

お前ら聞けコラァッ!


あ、キレた。

俺はここだー!!!


俺は声の方向を見る。
それは電柱の上だった。
正義の味方っぽく学ランの少年が立っていた。
なんか頭悪そう。

トラちゃん

ハハハハハ! ボクは虎山だ!!!


真由が再び首を傾げる。
今まで食べたパンの枚数を思い出すような顔をしている。
どうやら記憶にないようだ。

まゆまゆ

トラちゃん

虎山……剛次だ……

小さい声で少年が言った。
どうやら名前にコンプレックスがあるらしい。

まゆまゆ

剛次ぃ……? ごうじ……あー!!!


ようやく思い出したようだ。

じゅんじゅん

ふぇ?
マユマユ、誰?

まゆまゆ

えっと小学校で一緒だった虎ちゃん。
昔よく遊んでたじゃん。
超必殺技の練習台になってくれたり……

じゅんじゅん

あー!
新必殺技で人間がどこまで空を飛べるか実験をした。


(……なにこの鬼畜)

鬼どもの所行に俺はドン引きだ。

トラちゃん

そうだ!!! お前らに復讐するためにボクはここにやってきた!!!

あ、知ってる。
こういうの負け犬って言うんだよね。

お兄ちゃん

そうそうジュンの服持ってこなきゃな

負け犬の遠吠えのおかげで俺たちは少年への興味をなくした。
すると泣きそうな声が聞こえてくる。

トラちゃん

むーしーすーるーなー!!!

地団駄を踏む少年。
もうアキラメロ。
お前じゃ未来永劫この連中にかなうはずがない。

トラちゃん

うっきー!!!
鳳! 凰! 転! 生!!!

少年がなにかを叫んだその時だった。

ぱらりらぱらりらー♪
ずぎゃあああああああ!!!

叫んだ少年をバイクがひいた。

りんりん

あれ? ゴミ踏んだかな?

アバンギャルドな痛バイクで登校してきたのはリンだ。

おまわりさんコイツです。

俺は少年の残骸を見る。
うん。
まだ死んでいない。
このタフネス。
コイツも変態だ。

トラちゃん

うがあああああああああああッ!!!


あ、生きてた。

トラちゃん

まさか……お前は!!!
お前は!!!
すじぶくろ……


リンが瞬時にナイフを抜いて距離を詰めた。

りんりん

本名口にしたら、その場ではらわたぶちまけちゃうぞ♪
なあ、コラァッ!!!


こ、怖い……

トラちゃん

ひいいいいいい!

りんりん

って虎ちゃんじゃん。なにしてんの?


お前も知り合いか。

まゆまゆ

そういや虎ちゃん!
さっきも私のこと本名で呼んだよー!!!

じゅんじゅん

そうなのマユマユ?


雲行きがおかしい。

まゆまゆ

そうだよ!!!
ジュンジュンも変な名前で呼ばれたんだよ!!!

りんりん

これは……お仕置きが必要だな……

まゆまゆ

お仕置きだね♪

じゅんじゅん

お仕置きだよー!!!


そう言ってにやりと三人が笑った。
簀巻きにされてバイクに乗せられ学校へお持ち帰り。

そして俺には静寂と命の保証。

人生って誰かの犠牲の上で成り立っているんだね。
ありがとうショタ。
君の顔はもう忘れたけどまあいいや。

学校

そして半日が経過した。
屋上。
俺は変態どもの追跡を振り切り、静かなランチをとっていた。
すると突然、上から声がした。

トラちゃん

フハハハハ!!!
君が彼女らの弱点だね!!!

お兄ちゃん

おう生きてたか。おにぎり食うか?

トラちゃん

うん♪
じゃなくてボクの復讐がだな!!!

お兄ちゃん

まあいいから喰え

トラちゃん

あーい♪


猛獣には餌付け。
一度ご家庭でも試してください。
味を占めてカツアゲしに来るから。
もぐもぐと握り飯を頬張る少年。
なにを思ったのか俺の方をじっと見つめてきた。

トラちゃん

それにしても君は香水でもつけているのか?

お兄ちゃん

はい?


嫌な予感がする。

お兄ちゃん

虎ちゃん?

トラちゃん

なに?

お兄ちゃん

虎ちゃんは男の子だよね?

トラちゃん

なにを言ってるんだ?
こんな世の中でもう男が残っているはずないだろ?
ボクもアウトブレイクからだんだん女性化してきてこのざまさ

やばいよやばいよやばいよやばいよやばいよやばいよやばいよやばいよ!

お兄ちゃん

え、えっと俺ジュース買ってくるよ。
(逃げなきゃ!逃げなきゃ!逃げなきゃ!逃げなきゃ!逃げなきゃ!逃げなきゃ!逃げなきゃ!逃げなきゃ!逃げなきゃ!逃げなきゃ!逃げなきゃ!逃げなきゃ!逃げなきゃ!逃げなきゃ!逃げなきゃ!)


どきんどきんどきん。

トラちゃん

うん


と返事をしたはずなのに虎は俺の腕を握りしめる。

トラちゃん

なんかいいニオイがするんだよなあ? なんだろう?

お兄ちゃん

な、ナンダロネ?

トラちゃん

なんか……君の……ああ。にいちゃま……


頬を仄かに桜色に染め、はあはあと荒い呼吸をってちょっと待てコラァ!!!
そして虎は俺に抱きふせて……

まゆまゆ

あ、おにいちゃ……

りんりん

お兄様

じゅんじゅん

にいちゃ……

お兄ちゃん

こ、コレハチガウヨ?

命乞いをしたときにはすでに全てが遅かった。

りんりん

どうやら我が最大の必殺技を見せるときが来たようだ


ちょっと待てコラ。

まゆまゆ

わかるのか! リンリン!!!


なまずひげボケはヤメロ。

じゅんじゅん

そうだな我ら三人。最大の必殺技で


なあ殺す気だよな?! 俺を殺す気だよな!!!

りんりん

奥義!!!

まゆまゆ

奥義

じゅんじゅん

スーパーウルトラブロウ!!!

この日、校舎は倒壊した。
俺も一時は死にかけたがギャグ補正で次の日には復活した。
もし人類がこのまま絶滅しなければ、後の世のために俺の言葉が役に立つかもしれない。

俺以外全員妹。
しかもハーレム。
なんて素晴らしいんだ?

お兄ちゃん

そう思ったヤツは俺に土下座しろ!!!
全力で謝罪しやがれ!!!

お兄ちゃん

ざっけんなあああああああああああああッ!!!

こんなクソ世界滅びればいいのに!!!

第三話 妹の惑星☆ジェネシス

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