○ 大学・教室


授業が終わった大学の教室。
将太が教科書などを片づけているとマナーモードのスマホが震えて、メールが届く。

ユウナ

『心理学の課題が意味不明すぎて泣きそう_(:3∠)_』


彼女である結那からのメールを見て、くすりと笑う。

ショウタ

『この前、心理学の授業楽しいって話してたのに』


返信するとすぐに返信が返ってくる。

ユウナ

『初めは楽しかったんだけどね…』

ユウナ

『何でこれ取っちゃったんだろ…人の心なんて分かんないよね(´・_・`)』

ショウタ

『あー、でも俺も去年取って苦戦した思い出が…』

ユウナ

『ショウ君去年取ってたの!?なら、ちょっと教えて欲しいんですけど…ダメ?』

ショウタ

『いいよ(^_^)今日、うちに来る?』

ユウナ

『お願いします!ショウ君大先生
 (`・ω・´)!』

ショウタ

『はいはい( ´∀`)なら、駅前で待ってて』

ユウナ

『すぐに向かうねっ!』

ショウタ

『はーいヽ(´▽`)/』


スマホをポケットにしまって立ち上がり、教室を後にする。

#01「ハンバーグ」

○ 駅前


都心部から程なく離れた距離のとある駅。
駅前の東側は開発が進み、人で賑わっている。

近所にはショッピングモールがあり、連日テレビで取り上げられる人気店などが入っている。
一方で西側は住宅街に面しており、東側ほどの賑わいはなく閑静な住宅街が広がっている。
西側改札をくぐり抜けると将太はスマホでメールを送る。

ショウタ

『今、駅に着いたよ』っと…送信


送信ボタンを押し、ポケットにスマホをしまおうとすると着信がある。

ショウタ

もしもし?

ユウナ

おーい


スマホだけではなく、少し離れたところから結那の声が直接聞こえる。

ショウタ

あれ?


声のする方を向くとベンチに座っている結那が手を振っている。

ユウナ

こっちだよー


結那の所に駆け寄っていく。

ユウナ

遅いよー!

ショウタ

意外と早かったね

ユウナ

これはレポートも見せてもらわないとなー

ショウタ

はいはい

ユウナ

なによー

ショウタ

さ、行くよ


将太はベンチに置いてある結那の鞄を持ち、歩き始める。

ユウナ

あ、ちょっと待ってよ


結那は慌てて立ち上がり、将太を追う。
空いている手を握り、笑う。

ユウナ

えへへ


手を繋いで歩き出す2人。

○ 住宅街・道


将太のアパートへの道。

ユウナ

あ、ヴァレンタインだ

ショウタ

はい?


結那が突然、小走りで路地に入っていく。

ショウタ

ちょ、おい


慌てて追いかける。

ショウタ

ヴァレンタインて、11月だぞ。まだ


将太も路地に入っていくと結那がしゃがみ込んでいる。

ショウタ

どうした?


のぞき込むと結那が猫を撫でている。

ユウナ

えへへー

ヴァレンタイン

にゃー

ショウタ

なんだ、猫か

ユウナ

猫じゃないよー

ユウナ

ヴァレンタインだよー

ヴァレンタイン

にゃ

ショウタ

なんでそんな名前?

ユウナ

今年の2月14日にショウ君の家に行く途中に出会ったんだー。
だから、ヴァレンタイン

ショウタ

もうちょっと短い名前つけられなかったの?

ユウナ

例えば?

ショウタ

うーん…猫の助とか


結那が笑い出す。
心なしかヴァレンタインが将太を見る目つきが険しくなる。

結那

あははっ。猫の助だってー。おかしいねー

ヴァレンタイン

にゃー

ショウタ

なっ


顔を赤くする。

ショウタ

ほ、ほら、行くぞ結那。勉強しなきゃ

ユウナ

えー…もうちょっと…ヴァレンタインと遊びたい

ショウタ

じゃあ、俺だけ先帰っちゃうぞ

ユウナ

えー…それはもっとやだ…仕方ないなぁ

ユウナ

またね、ヴァレンタイン

ヴァレンタイン

にゃー

ユウナ

ねーねー、ショウ君

ショウタ

なに?

ユウナ

ハンバーグ食べたい

ショウタ

唐突だなぁ、作れなくはないけど…挽肉あるし

ユウナ

ふっふっふっ

ショウタ

何その笑い

ユウナ

ミステリアスな女のイメージ

ショウタ

なんじゃそりゃ


路地から元来た道へ出て行く。

○ 将太の家・玄関


鍵を開け、将太が中に入る。

ショウタ

散らかってるけど我慢してね

ユウナ

お邪魔します!なんか、ショウ君の家久しぶりだな

ショウタ

そうだっけ?

ユウナ

そうそう。学校では良く見かけてたけど、最近忙しそうだったし…

結那

あー、最近バタバタしてたからなぁ…

結那

寂しい思いさせちゃってごめんね


将太、結那の頭をポンポンと撫でる。

ユウナ

…去年の心理学の課題コピーさせてくれたら許す

ショウタ

それはだーめ

ショウタ

さ、上がって勉強。勉強


ぶーと言っている結那の背中を押して中に入っていく。

○ 同・リビング


勉強している2人。
すると結那がうつらうつらと船をこぎ始める。

ショウタ

ゆうな、ゆうな

ユウナ

はっ!寝てない寝てない。起きてる起きてる


しばらく時間が経過すると再びうとうとし始める。

ショウタ

ゆうな、コーヒーでも淹れようか?

ユウナ

ごめん、お願いします…

○ 同・キッチン


将太がやかんでお湯を沸かす。
その間に、マグカップを2つ用意し、戸棚を漁り始める。

ショウタ

確か、実家からクッキーが…あれ?確かここに…しまった気がするんだけど…


ごそごそと戸棚を漁っているとお湯が沸く。
コンロの火を止め、コーヒーを淹れる。
結那のコーヒーには砂糖1つとフレッシュ2つを入れ、かき混ぜる。
マグカップとクッキーの缶を持ってリビングに向かう。

○ 同・リビング

ショウタ

お待たせーって…


結那が机に突っ伏して寝息を立てている。

ユウナ

すーすー

ショウタ

あらら…


コーヒーを机に置き、結那の寝姿を見つめる。

ショウタ

仕方ないなぁ


立ち上がり、押し入れから薄い毛布を取り出し、結那にかける。

将太が自分の鞄からルーズリーフを取り出す。
本棚からレポートをまとめたノートを手に取り、ペラペラとめくる。

ショウタ

えーと…あった。これだこれだ


机に向かい、ノートを見ながらルーズリーフにメモを書いていく。

ショウタ

ん?


結那の手が、空いている将太の手に触れる。
そっと結那の手を握り返す。
コーヒーを飲みながら過去の自分の心理学のノートとプリントに目を通していく。

空っぽのマグカップ。

ショウタ

ふぅ


筆記具を置き、ため息をつく将太。
結那を見ると相変わらず幸せそうに寝ている。

ショウタ

結局起きなかったな…さてと


時計を見ると17時を指している。
結那と繋いでいた手を離し、立ち上がる。
簞笥からエプロンを取り出し、キッチンに向かう。
そっとリビングの扉を閉める。

○ 同・キッチン


冷蔵庫を開けて食材を確認する。

ショウタ

明日、買い物行かなきゃなぁ


ひき肉、卵など食材をテーブルに置いていく。
ちらっと隣の部屋で寝ている結那を見るが起きる気配がない。

ショウタ

さて、起きる前に作っちゃいますか


腕まくりをして料理を始める。
ハンバーグ、コーンスープ用に玉ねぎ1個をみじん切りにする。


みじん切りにした玉ねぎをバターを入れた鍋に入れて、弱火~中火で炒める。塩、こしょうをさっと振り味をつける。


飴色になったらハンバーグ分だけお皿にに移して冷ましておく。
玉ねぎが入った鍋に缶詰のコーンクリームを加え、更に同じ分量の水を加えて温める。


温まってきたら、コンソメを入れて10分ほど焦げないように気にしながら煮ていく。

ショウタ

コーンスープはこれでOKで…次はハンバーグか…牛乳…


冷蔵庫から牛乳を取り出し、ボウルに牛乳を注ぐ。
パン粉を入れて、牛乳に浸しておく。


じゃがいもとにんじんは一口台の大きさに切る。


にんじんはバター10グラムと砂糖小さじ1を加えて電子レンジで温める。
じゃがいもは少量の水と一緒に電子レンジで温める。


どちらも爪楊枝を刺して、すっと通ったらOK。


挽肉をこね、先ほど冷ましておいた炒めた玉ねぎ、牛乳に浸したパン粉、卵を入れてこねていく。


全体的に混ざり粘り気が出てきたら、成型していく。
その際、空気を抜きながら小判型に整えていく。
最後に真ん中を少しだけへこませる。

ショウタ

フライパンに油を引いて…


フライパンを熱し、ハンバーグを並べる。最初は強火で焼き、ひっくり返して蓋をして中火で蒸していく。


電子レンジで温めたにんじん、じゃがいもはお皿に盛りつけておく。
ハンバーグが焼き上がったら、お皿に盛りつけハンバーグを焼いたフライパンでソースを作っていく。
同時進行で目玉焼きを作る。


ケチャップ、ウスターソースを加え、混ぜながら弱火で軽く水分を飛ばす。
ソースをハンバーグにかけ、目玉焼きを盛りつけたら完成。


コーンスープをカップに盛りつける際にフレッシュを回し入れて、洋食屋さんの雰囲気を出して完成。

ショウタ

かんせーい

ショウタ

さて、眠り姫を起こしますか


エプロンを外しながらリビングに向かう。

○ 同・リビング

ユウナ

あ、こっちに来る!


リビングのドアを開けるとドタドタと音がする。

ショウタ

??


扉を開けると、慌てて自分の寝ていた場所に戻っている結那の姿が見える。

ショウタ

あれ?起きてたの?

ユウナ

う、うん

ショウタ

ご飯出来たから机の上片付けて

ユウナ

はーい


将太がキッチンに戻る。

ユウナ

…ん?


机の上を片付けていると、心理学の要点がまとめられているルーズリーフを見つける。
将太、台ふきを持ってくる。
 

ショウタ

もーまだ片付けて無いの?

ユウナ

ショウ君…これ

ショウタ

あー、それ、結那が寝ちゃって暇だったからまとめといた。帰ったらそれ見てちゃんと勉強するんだぞ?

ユウナ

…うん、ありがとう

ショウタ

ほら、ハンバーグ冷めちゃうから

ユウナ

え!ハンバーグ!?

ショウタ

食べたかったんでしょ?

ユウナ

うん!

ショウタ

じゃあ、これ。テーブル拭いて


将太が台ふきを結那に渡す。
結那が慌ててテーブルを片付けていく。
キッチンからハンバーグの盛りつけられたお皿を持ってくる。

ユウナ

うわぁ!美味しそうなハンバーグ!

ショウタ

あと、これも

ユウナ

…コーンスープ?

ユウナ

相変わらず女子力高い…

ショウタ

まーねー


将太が笑う。
机に並べられた料理。

ショウタ

ほら、食べようよ

ユウナ

うん


2人が手を合わせる。

ショウタ

いただきます

ユウナ

いただきまーす


結那、ハンバーグを口に運ぶ。

ユウナ

美味しい!


笑顔の結那。

ショウタ

良かった


ほっとする将太。

ユウナ

コーンスープも美味しい!


将太もコーンスープを飲み、味を確認する。
将太の顔が料理を作っている時と重なる。
結那、コーンスープのカップを持ったまま固まっている。

ショウタ

ん?どした?

ユウナ

え?あ、何でもないよ

ショウタ

そう?

ユウナ

ねぇ、ショウ君、また料理作ってくれる?

ショウタ

まぁ、別にいいけど

ユウナ

ほんと!?

ユウナ

じゃあ…次はオムライスが良いな

ショウタ

オムライスかぁ…

ユウナ

楽しみだなぁ

ショウタ

もう決定事項なの?

ユウナ

ふっふっふっ

ショウタ

出た、ミステリアス


将太と結那の笑い声。

第1話 おわり

・*°☆今回の材料一覧☆°*・

*ハンバーグ(2人前)
  合挽き肉…300g
  玉ねぎ…中1個
  卵…2個(一つはトッピング用) 
  パン粉…ひとつかみ 
  牛乳…50cc 
  ケチャップ、ウスターソース…適量

*付け合わせ
【茹でじゃが】
  じゃがいも…2個 

【ニンジンのグラッセ】
  ニンジン…1/2個 
  バター…適量 
  さとう…小さじ1

*コーンスープ
  クリームコーン缶…1缶 
  フレッシュ…2個 
  玉ねぎ…1/2個
  バター…10g
  固形スープ…1個
  塩・胡椒…少々

#01「ハンバーグ」

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