ワトリーは、足早に走りながら
ジョセフの後を追っていた。

頭の中で不安が大きく膨れ上がっていく。

エイミーに何かあったのではないか
という思いが、

ワトリーの胸を締め付けていた。







一方先に楽屋へ案内されたジョセフとポテトは

その場で立ち尽くし、
視界が一瞬ぼやけた。

それは、

ジョセフが推しに推していた
アイドルのシオンが、

無残にも倒れている姿だった。


シ、シオンちゃん…

シオンちゃんが、死んでいる??

ジョセフ

シオンちゃん…
こ、殺されたのか?

現場の状況から見て自殺ではなさそうだった。

ジョセフは殺猫事件の
可能性があると判断した。

シオンちゃん俺が必ず犯猫を捕まえてやるからな

その通りです!先輩に解決できない事件なんてありませんから!

よし、フェリックスを呼ぶんだ

またフェリックスさんですか?

おれの相棒、いや、助手みたいなもんだからな

まあ、呼ばなくても、ワトリーが近くにいるから
すぐ駆けつけてくれるかと思いますけどね

ジョセフ

それもそうだな

そして、ジョセフはシオンの冷たい身体の

そばにひざまずき、彼女のために手を合わせた。

シオン…安心してくれ。この優秀な警察官ジョセフが、必ず真相を明らかにしてやるからな…

ワトリーはジョセフを追いかけ楽屋に向かった。

楽屋前の廊下では、騒然とした空気が広がっていた。

多くの猫たちが周りで口々に騒いでおり、
状況を把握しようとする者、

ただ狼狽する者とでごった返していた。

ワトリーは近くにいた清掃員に声をかけた

ワトリー

何があったのだ?

ジム

それが・・・出演者さんが
亡くなっていてね・・・

清掃員は割られた花瓶をほうきで掃いていた。

その言葉を聞き、ワトリーは
その猫たちをかき分け、奥へと進んでいく。

部屋の中央には、ひときわ異様な光景が

広がっていた。そこには、

血まみれで倒れている1匹のメス猫がいた。

無惨にも胸部を鋭利な刃物で刺され、

動かない彼女の姿は、恐ろしいまでの

静けさを漂わせていた。

ま、まさか!

恐る恐るそのメス猫の顔を確認する

ワトリー

エイミーじゃないのだ

ポテト

先輩、これ…自殺ではなさそうですね

ああ、現場を見ればわかる。
周りが荒らされているし、
犯猫と被害者は抵抗しあった形跡がある。これは正面から刺されたんだ

ワトリーは、その言葉に耳を傾けながら、
楽屋内の状況を目で追った。

確かに、倒れた猫の周囲には、
弁当が散乱していた。被害者が必死に
抵抗したのだろう。

そして荒らされたシオンのバック。
窃盗の目的だったのか?




ワトリーはふと机の下を確認した。

ワトリー

床が濡れてるのだ

机の上には蓋が閉まってある飲み物
水はどこにもないこれはいったい?






楽屋で殺害されたのはアイドルのシオンだった

しかし先ほどからエイミーの姿がみえない。

その疑問がワトリーの胸に重くのしかかった。

ワトリー

エイミーはいったい
どこへ行ったのだ?

ワトリーは、エイミーへの不安を抱えつつも
目の前に横たわる無残な姿のメス猫を
見て胸が痛んだ。

ジョセフが言った通り、犯猫は正面から
この猫を刺していた

でも正面から襲われたのなら、
悲鳴や物音が上がって、誰かがすぐに駆けつけるはずなのだ

疑念を抱いたまま、ワトリーは
周囲をじっくりと観察した

壁、鏡、そして床にも血が飛び散っている。

かなりの力で刺されたのだろうか。被害者は
鋭利な刃物で右胸を一突きされていた。

しかし、ワトリーはそこでさらに異変に気づく。

唇が切れて血がにじんでいるのだ

ジョセフ

ワトリー、鑑識がくるから
あまり現場を荒らすなよ

ワトリー

わかったのだ

鏡の前にはクラシックミニカーが置かれていた。
シオンの物なのか。

その時、マネージャーのアレクが
楽屋に入ってきて、緊張した声で言った。

アレク

ジョセフ、防犯カメラの映像を
確認してほしい

ジョセフ

わかった

ワトリー

ボクも行くのだ

アレク

ワトリー、今回はだめだ。
すぐに帰ってくれ

なぜなのだ?
ボクも手伝うのだ!

ジョセフ

まあまあ、ワトリーたちは
俺の助手みたいなもんさ。
安心して任せてくれ

ワトリーもついて行き警備室のドアの前につくと

アレクは不穏な顔をした

アレク

ワトリー今回は・・・

ワトリー

ボクは大丈夫なのだ

ポテト

防犯カメラの映像があれば
すぐに犯猫がわかりますよ

ポテトはそう言って画像を見始めた。

ジョセフ

ここは楽屋前の廊下だな

アレク

シオンの楽屋前の映像だ。シオンの楽屋に入ったのは3匹・・・

最初に映っていたのは、

お弁当を持ったスタッフ。

次にメイクさん。

続いて同じアイドルグループのサリー。

サリーが楽屋から出た数分後、
シオンの楽屋のドアが開いた。

ポテト

誰か出てきました。

アレク

シオンだ

シオンは楽屋の中と廊下を確認している素振りだった

ワトリー

何かを確認してるのだ

幽霊じゃないです。

ジョセフ

控室から出てどこへ

ワトリー

廊下の窓を閉めたのだ

ポテト

控室に戻りましたね

ジョセフ

この時はまだ生きていたってことだな

ジョセフ

さっきの三匹が楽屋に出入りしたのか?

アレク

いや、もう一匹…

映像を早送りした。

20分後、エイミーが楽屋に入る様子が
映し出される

そして

!?

映像の中のエイミーは、楽屋に入り、

しばらくして慌てた様子で勢いよく

楽屋から出ていった

ワトリー、これ見て

ワトリー

何か持っているのだ?

これ、携帯電話かもしれない

そしてそのまま、裏口から外に
出ていく姿が映し出された。

エイミーが…
いったい何があったのだ?

ワトリーはその場で呆然と立ち尽くし、

頭の中は混乱していた。

つづく

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