武蔵帝都軍は御堂総帥、
國光の父が直轄する精鋭部隊であった。
そこに入隊できるのは、
訓練学校で選ばれた優秀な人間だけ。
新兵たちは厳しい訓練プログラムをこなし、
最新の知識と技術を常に習得することが
求められていた。
しかし、このエリート軍隊の中で、
メイの成績は常に最下位だった。
武蔵帝都軍は御堂総帥、
國光の父が直轄する精鋭部隊であった。
そこに入隊できるのは、
訓練学校で選ばれた優秀な人間だけ。
新兵たちは厳しい訓練プログラムをこなし、
最新の知識と技術を常に習得することが
求められていた。
しかし、このエリート軍隊の中で、
メイの成績は常に最下位だった。
訓練学校など出ていない彼女は、
実習も戦術も全てがダメで、
講義室で居残りの復習を命じられていた。
どうしよう、難しくて全然わからない…私、ただの女子高校生なのに、こんなの無理だよ…
剣術だったらなんとか追いつけそうだけど…
メイは剣の構えを取り、
空気を斬るように動かしてみた。
その瞬間、講義室のドアが開いた。
まったく、復習していると思えば…
凌が部屋に入ってきた。彼の声に驚いたメイは
慌てて椅子に座り直し、勉強する振りをした。
す、すみません…
凌はメイをじっと見つめ、ため息をついた。
霜月、なぜ我々は知識と技術を習得することが求められると思う?
えっと…魔獣を倒すため?
その答えに、凌の眉がひそめられた。
メイは内心で焦る。
あれ、違う?
えーっと・・・
他国と戦争するとか?
凌の表情はますます険しくなる。
・・・
やば..こわい顔になってる
確かに、今は魔獣討伐のために我々も動いているし、
国を守るためなら戦争も
するだろう。
しかし、一番大切なのはなんだ?
そう言って、凌は机の上に両手をつき、
メイの目をじっと見つめた。
メイはその真剣な視線に心臓がドキドキした
凌は無言でメイの答えを待っている。
メイはその整った顔立ちに見とれてしまい、
思わず息を呑んだ。
・・・
聞いているのか?
は、はい
呆れた表情を浮かべた凌は、
少し声を落として言った。
我々の最優先事項は、国家と市民の安全を守ることだ。魔獣討伐や戦争はその一部に過ぎない。
災害や事故が発生した際には迅速に対応し、国民を守る。それが我々の使命だ
凌の言葉には、
単なる知識や技術以上の
重みがあった。
彼女は初めて、
自分の役割と責任の重大さを
真に理解した気がした。
霜月、プールに来い
プールですか?
しかし、凌は何も答えずに
さっさと部屋を出て行った。
メイはしばらくその場に立ち尽くし、
なぜプールなのかと考えた。
彼女の頭の中では、夕方のプールで
凌と楽しく遊ぶ姿が浮かんでいた。
二人が近づき、見つめ合うと、
凌がメイにキスをする――そんな妄想が広がる。
そんなわけないよね...
遅いぞ、霜月!
すみません、水着を取りに行ってました。すぐに着替えます
泳ぎの練習ではない。
そのままでいい
そう言うと、突然メイをプールに突き落とした。
ドボン!!
え?
今から溺れている人間を救助する方法を教える
凌は上着を脱ぎ捨て、
自分もプールに飛び込んだ。
いいか、溺れている人間はパニックになっている。
その目の前に私が来たらどうなる?
助けてと言います
いや、違う。こうだ
凌はそう言うと、メイの頭を水の中に押し付けた。
突然のことでびっくりしたメイは、
ゴボゴボと水面に浮き上がろうとするが、
凌の手がしっかりと押さえつけている
い、息が..できな...
凌の手が離れると、メイは水面に飛び出してきた
ぶはー!!
いいか、溺れている者は冷静さを失っている
前から助けようとすると、パニックになっている相手にしがみつかれて危険だ
だから、後ろから近づいて助けるようにするんだ
どこを見ている
ちゃんと話を聞いているのか?
は、はい!
ふと気づくと、
メイは凌の両腕をしっかり掴んでいた
あ、すみません
いいんだ。これも訓練の一環だ
その言葉に、メイは少しだけ安堵したが、
心の中はまだドキドキしていた
では、溺れた人間を抱えて岸まで泳ぐ練習をする。私を岸まで抱えて泳ぐんだ
ハイ!
すぐに凌の後ろに回り首をロックした。
しかし、凌は驚いた様子で
ぐっ!!おい首が締まる・・・
メイは気にせず勢いよく彼を引っ張り始めた。
メイの目線はプールの水面に固定され、
彼女は全力で凌を引っ張り続けた。
凌は突然の首ロックに苦しんでいたが、
メイはその様子を演技だと勘違いしていた
副官が暴れている、これも演技なんだ、私が助けなきゃ
使命感に燃え、さらに強く締め付けた。
ようやくプールの端にたどり着き、
メイは凌を引き上げた。
しかし、凌は意識を失いかけていた。
・・・
副官?!
こ、これはもしかして、
溺れたときのあれね!
でも..
恥ずかしがってる場合じゃない、これは訓練なんだから
自分に言い聞かせ、
凌の鼻をつまみ、首を上げた。
ま、まて・・・
凌の声はメイには聞こえていなかった。
ドキドキ
彼女は人工呼吸を試みるために
凌の口に自分の口を重ねた。
!!
ど、どうするんだっけ?
これではただのキス・・・
舌を入れるんだっけ、
ち、ちがう・・・そうだ、息を入れるんだ!
フー!!
ぶは!!
息があるのに人工呼吸するな!!
す、すみません
凌は息を整えながらも、どこか優しさの
ある目でメイを見つめていた。
次からは、もっと冷静に対処するんだ
凌はそう言って、メイの肩を軽く叩いた。
はい・・・
メイは恥ずかしさと共に、
少しだけ自信を取り戻した気がした。
つづく