パチパチ、パチパチ。
火がはぜる。
パチパチ、パチパチ。
火がはぜる。
じいさま、しっかり・・・!
ベシワク、わしのことはいい。秘宝は!? 秘宝は無事か!?
頭から血を流すじいさま。
逃げまどう島のみんな。
聖殿は燃えさかっている。
あの火の奥に、秘宝があるはずだ。
僕が確認してきます! じいさまは早く安全な場所に!
――遅いよ。
突然、女の声が割って入った。
聞こえたのは頭の上からだ。
もう、私がもらっちゃった。
誰だ・・・?
見知らぬ女が、夜空に浮いていた。
手にかかげるのは、島の秘宝――
返せ! それは、島の大切な――!
へえ、大切なものなんだ。
私は、魔女リリーシカ! これが大切なら、大陸へおいで。遊んであげる!
魔女、リリーシカ――!
見つけた!
僕は驚きに目を見開いた。
島を襲った魔女に秘宝を奪われてから、七日七晩。
魔女を追って大陸へやってきた僕は、なんとさっそく目当ての顔を発見した。
大陸の東端、港町ビプル。
こんなに早く見つかるとは。
待てっ、そこの貴様! 止まれ!
追いついて、ためらわず剣を抜く。
背の高いその女は、僕を見て首をかしげた。
誰だ? 強盗なら、もっと人目のない場所をおすすめする。衆人環視で返り討ちに遭うのが趣味なら別だけど。
白々しい、強盗は貴様の方だろう! 僕たちの島に現れて、秘宝を奪った魔女リリーシカ・・・覚えがないとは言わせないぞ!
リリーシカ? 彼女が君の島に現れたと?
“彼女”?
まるで自分とは別人だと言いたげな言葉に、今度は僕が首をかしげる。
君が、リリーシカだろう? 顔がそっくりだ。
たしかに私は彼女と同じ顔をしている。だが、私は彼女ではない。
信じられないな。証拠はあるのか?
彼女は眼鏡をかけてなかっただろう。
・・・たしかに、かけてなかったけど。
私は眼鏡をかけている。だから私は彼女ではない。証明終了。
いやまちがい探しか! 眼鏡なんて簡単に着脱できるだろうが。
なんと・・・そこに気づいてしまうか。
何で気づかれないと思うんだよ!?
う~ん、しかし私は彼女とは別人で・・・
ああ、ちょうどよかった。
とうとつに、彼女は上を指さした。
証拠が降ってきた。
その言葉とどちらが早かったか。
コンニチハ。ワタシは魔女リリーシカさまのしもべ、ジルウェット。リリーシカさまの命により、ルーガル、アナタを殺しに来ました。
うん、ありがとう。ちょうどそういった客が必要だったんだ。
空から現れた異形の敵に、彼女、ルーガルは余裕そうに微笑んだ。