パチパチ、パチパチ。
火がはぜる。

ベシワク

じいさま、しっかり・・・!

首長

ベシワク、わしのことはいい。秘宝は!? 秘宝は無事か!?

頭から血を流すじいさま。
逃げまどう島のみんな。

聖殿は燃えさかっている。
あの火の奥に、秘宝があるはずだ。

ベシワク

僕が確認してきます! じいさまは早く安全な場所に!

リリーシカ

――遅いよ。

突然、女の声が割って入った。
聞こえたのは頭の上からだ。

リリーシカ

もう、私がもらっちゃった。

ベシワク

誰だ・・・?

見知らぬ女が、夜空に浮いていた。
手にかかげるのは、島の秘宝――

ベシワク

返せ! それは、島の大切な――!

リリーシカ

へえ、大切なものなんだ。

リリーシカ

私は、魔女リリーシカ! これが大切なら、大陸へおいで。遊んであげる!

ベシワク

魔女、リリーシカ――!

ベシワク

見つけた!

僕は驚きに目を見開いた。

島を襲った魔女に秘宝を奪われてから、七日七晩。
魔女を追って大陸へやってきた僕は、なんとさっそく目当ての顔を発見した。

大陸の東端、港町ビプル。
こんなに早く見つかるとは。

ベシワク

待てっ、そこの貴様! 止まれ!

追いついて、ためらわず剣を抜く。
背の高いその女は、僕を見て首をかしげた。

ルーガル

誰だ? 強盗なら、もっと人目のない場所をおすすめする。衆人環視で返り討ちに遭うのが趣味なら別だけど。

ベシワク

白々しい、強盗は貴様の方だろう! 僕たちの島に現れて、秘宝を奪った魔女リリーシカ・・・覚えがないとは言わせないぞ!

ルーガル

リリーシカ? 彼女が君の島に現れたと?

“彼女”?

まるで自分とは別人だと言いたげな言葉に、今度は僕が首をかしげる。

ベシワク

君が、リリーシカだろう? 顔がそっくりだ。

ルーガル

たしかに私は彼女と同じ顔をしている。だが、私は彼女ではない。

ベシワク

信じられないな。証拠はあるのか?

ルーガル

彼女は眼鏡をかけてなかっただろう。

ベシワク

・・・たしかに、かけてなかったけど。

ルーガル

私は眼鏡をかけている。だから私は彼女ではない。証明終了。

ベシワク

いやまちがい探しか! 眼鏡なんて簡単に着脱できるだろうが。

ルーガル

なんと・・・そこに気づいてしまうか。

ベシワク

何で気づかれないと思うんだよ!?

ルーガル

う~ん、しかし私は彼女とは別人で・・・
ああ、ちょうどよかった。

とうとつに、彼女は上を指さした。

ルーガル

証拠が降ってきた。

その言葉とどちらが早かったか。

ジルウェット

コンニチハ。ワタシは魔女リリーシカさまのしもべ、ジルウェット。リリーシカさまの命により、ルーガル、アナタを殺しに来ました。

ルーガル

うん、ありがとう。ちょうどそういった客が必要だったんだ。

空から現れた異形の敵に、彼女、ルーガルは余裕そうに微笑んだ。

ビプルの出会い①

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