キャットタウンの一角には、古びたビルの二階にひっそりと佇む探偵事務所があった。

窓から差し込む柔らかな朝日が、埃っぽい空気の中に金色の光を投げかけている。

その事務所の中には、いつものように
フェリックスとワトリーがいた。

フェリックスは大きな肘掛け椅子に座り、
足を組んで新聞を読んでいた。


一方、ワトリーはソファーに座り
手に持ったマグカップから立ち上る
ココアの香りを楽しんでいた。
ワトリーはフェリックスの猫友であり、
探偵の助手として日々彼を支えている。

彼がフェリックスを「フェリス」と親しみを込めて呼ぶのも、長年の信頼関係があってこそだ。

フェリス、キャットタウンにサーカスが来てるのだ

新聞から顔を上げたフェリックスは、
微笑みながら頷いた

そうだね、一度見に行ってみようか

その瞬間、事務所のドアがコンコンと
ノックされた。2匹が一斉に振り向くと、
ワトリーが立ち上がり、ドアへ向かった

お客さんなのだ

扉を開けると、そこには
キャットタウンの警察官、
ジョセフが立っていた。

彼は少し緊張した様子で言った

よ、よう…

どうしたのだ?

じ、実は…

キャットタウンにサーカスが来ているのを知ってるか?

知っているのだ
今度見にいくのだ!

それがな、今朝
事故があってな...

事故?

ああ、サーカスの看板であるメス猫がリハーサル中に転落して亡くなったんだ

それは、かわいそうなのだ

そうなんだ…

で、何か用なのか?

これから現場検証なんだ

そうか、仕事頑張ってなのだ

そう言ってワトリーはドアを締めようとした。

その時、ジョセフがそのドアを手で止めた。

来て…

何?聞こえないのだ

一緒に来てくれ

事故なんでしょ?

そうだけど…普通じゃない気がするんだ

調査してほしいってことなのだ?

そ、そうだ…

フェリスどうするのだ?

フェリックスはクスっと笑いながら言った

まあいいでしょう、いつも助けてもらってますから

お!そうだそうだ!
恩を返してもらうぞ




こうして、フェリックス、ワトリー、そして
ジョセフの三匹は、何か異変が起きたのではないかと疑いながら、サーカスの現場へと向かった。






サーカスの現場に到着すると、そこにはすでに
警察猫のポテトが待っていた。

先輩、遅いですよ!

すまんな

そちらの方たちは?

ああ、おれの友人でね、探偵なんだ。見学したいというから連れてきた

そうですか、猫が亡くなっているというのに見学とはお気楽な猫たちですね。

何を言っているのだ、ジョセフが来て欲しいって…んぐぐ

ジョセフは慌ててワトリーの口を押さえ、

さ、さあ仕事しなくちゃね。ワトリーくんは大人しく見ていてね

ポテトはため息をついて報告を続けた

はい、亡くなったのは、ここの
スターだったメスのセリアさんです。

セリアさん

今朝のリハーサル中にロープが切れて転落し、亡くなりました

ロープが切れた?

ええ、宙づりになって演技をする演目がありまして、
そのリハーサルだったようです

そのロープは?

これですね

ロープが切れたんだ、
これは事故だろう

そうですね、管理が悪かったんですかね

しかし、フェリックスはそのロープを
じっと見つめて何かに気づいた様子だった。

彼の目は鋭く、
何か異常を見つけたように輝いた。

これはただの事故ではないかもしれない、と。

その瞬間、サーカス団に隠された陰謀が、
徐々にその姿を現そうとしていた。

つづく

1話 キャットタウンに来たサーカス団

facebook twitter
pagetop