翌日、メイは副司令官に呼び出された。

凌の鋭い目がメイを見つめ、
彼女の緊張した面持ちが一層強まった。

副司令官 凌

霜月メイ、なぜ単独行動に出た?

メイ

はい、エリナさんが連れ去られ
緊急事態と判断しました

ならば、なぜ罠だと分かった?
あのまま部隊が魔獣に囲まれたら
多くの犠牲者が出ただろう、それが分かったのか?

メイ

それは...

メイは言葉に詰まった。

自分でもなぜ罠だと気付いたのか
分からなかった。

あの時、魔獣がメイに近づき
死の恐怖を感じた瞬間

何かが彼女に警戒を促していたのだ。
しかし
それを凌に伝えることはできなかった。

凌は困惑しているメイの様子をじっと見つめた。

副司令官凌

...

副司令官凌

霜月メイの資料を見たが、訓練学校では優秀だった。
成績も戦闘能力も上位クラスだ。

副司令官凌

しかしなぜ、魔獣は霜月を襲わない?魔獣に意思があるとでもいうのか?

凌はメイの顔に近づき、
何かを探っているかのように見つめる

メイ

こ、こわい

メイ

あ、あの副司令官、魔獣はなぜ群れで襲わないのですか?

本来、魔獣は動物や精霊が
邪悪な呪いをかけられ、
その邪悪さが増殖することによって
生まれると伝えられている。

その魔獣には本能のまま群れることはあっても、
人間のように知恵を使うことはないと
されてきた。しかし、
昨日の戦闘では魔獣がエリナをさらい、
罠を仕掛けた。
凌は今までとは違う何かに違和感を覚えていた。

メイ

もとは動物と精霊だった...

副司令官 凌

学校で習っているはずだが?

メイ

わ、忘れちゃったのかな..
ハハハ

霜月、前日の銃訓練では最下位だな

メイ

は、はい...

凌は冷たい眼差しをメイに向け、
指令室の空気が一瞬で張り詰めた。

彼の心には疑念が募っていた。

なにかが違う..

なにかがおかしい..

凌はゆっくりとメイの周りを歩きながら、
その視線を一瞬たりとも外さなかった。

副司令官 凌

学校では銃も剣も上位クラスだったお前が、なぜ最下位にいる?

メイ

そ、それは...その...

メイの声は震えていた。凌は一呼吸置き、
そのままメイの前に立ち止まった

持っていたペンでメイの胸を突きながら、
その眼差しをさらに鋭くする。

副司令官 凌

お前は何者だ?

凌の問いは鋭く、
まるで刃のように彼女の心に突き刺さった。

メイは凌の鋭い視線から逃れることができず、
その場に立ち尽くした。

二人だけの指令室には、凌の言葉だけが響く。

メイの背筋が凍るような感覚に包まれ、

息を呑む音さえ聞こえるほどの
静寂が漂っていた。

凌の目は鋭く光り、その視線は一瞬たりとも
メイから逸れなかった。

副司令官凌

メイ

....

メイは嘘がばれるかもしれないという恐怖と、
信頼してほしいという願いの間で揺れ動く
彼女の心は混乱していた。

自分は誰なのか、本当に凌に話すべきなのか、
その答えを探そうと必死だった。

その時、ドアが開き、國光が現れた。

司令官 國光

あれ、おじゃまだった?

國光が場の空気を和らげるように言った。

凌はすぐに姿勢を正し、「國光様」と敬礼した。

國光は凌の頬をつまみながら、

司令官 國光

凌、またそんな怖い顔しちゃって

司令官 國光

昨日の件で呼び出しておいてその顔はないでしょ

副司令官 凌

はい、では報告いたます

凌はメイに向き直り

副司令官 凌

もう下がれ、だが私はお前を疑っていることを忘れるな

奥で國光が手を振る中、メイは部屋を後にした。

凌の冷たい視線を思い出す。
「お前は何者だ?」という言葉が
心の中で何度も反響していた。





次の日

メイと翔太はタケルとエリナの
見舞いに来ていた。

タケルの病室に入り、カーテンを開けると、

タケルとエリナがまさに
キスをしようとしている瞬間に遭遇した。

メイ

えっ!ご、ごめん!

違うの!これは誤解しないで!
ただ差し入れを持って来ただけ

恥ずかしさに顔を赤らめつつ、
エリナは病室を後にした。

彼女の元気な様子に、メイは心から安堵した

翔太

お前、病院で何やってんだよ

そっちこそ、今いいところだったのに来るなよ!

メイは笑顔で「元気そうでよかった」と言うと、三人は一緒に笑い合った。

笑いの中、翔太が真剣な顔で話を切り出した。

翔太

最近、魔力が強くなった魔獣が各地方で暴れているらしいぞ

魔力が強くなった?

翔太

ああ、以前なら都に来なかった魔獣が、最近は都に出現するようになったし、集団で行動したり、待ち伏せしたりしていたのはおかしいと思わないか?

翔太

魔獣の中で何かが変わった可能性がある

人間みたいに知恵がついたら厄介だぜ

翔太

ああ、今は邪獣までしか見てないが鬼獣まで出てくるようになったら、太刀打ちできるかどうか..

メイ

そんなに強いの?

強いというか、魔力を持って攻撃してくるやつらだ
俺たちの持ってる武器が通用するかどうかわからない

翔太

隊長クラスなら魔剣術も扱えるが、俺たちはまだ使えない

メイは蓮が魔獣を制圧した時のことを
思い出した。

闇を切り裂くような凄まじい光と稲妻が
魔獣の体を引き裂いた光景が
鮮明によみがえる。

メイ

あれが魔剣術……

翔太

明日、各地から司令官が集まるそうだ。今回の魔獣に対する対策会議が開かれるらしい

翔太

俺たちも警備にあたることになってるがタケル、お前はどうする?

タケル

もちろん行くさ!
いつまでもこんなところにいるわけにいかない

タケル

それにエリナちゃんとさっきの続きもしないとな~

メイ

フフフ

三人は再び笑い合い、明日の健闘を誓った

つづく

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