歴史眠る古代の石塔 その2

石塔の中に足を踏み入れる!

……その、直前。扉の前に誰かいるではないか。

おやおやそこのお二方。毒りんごはいらんかね。

ファンバルカ

いらないが。

種明かしをされて騙される道理は、なし!

怪しげなりんご商人と遭遇したのである。

ファンバルカ

誰をターゲットにしてるの、それ?

道理のわからぬ愚か者とか。

ビエネッタ

間接的にファンバルカ様を立てる手口。なかなかやりますね。

ファンバルカ

どういうこと? ……ああ、毒りんごに引っかかってないから、ってことか。

ファンバルカ

わかりにくすぎる。

初対面の人とも成立してしまうヘンテコ会話。

ファンバルカ

さあて、中だよ。

ファンバルカ

ちょっと待て。

ファンバルカ

さっきの、誰だい!? 未踏の秘所じゃなかったの??

ビエネッタ

新規エリア開拓を狙う、気炎の商人。このような辺境に足を運ぶとは、凄まじい商人魂です。

ファンバルカ

騙されてはいかん。あれは単なるカモフラージュ

お早いお気づきで!

――けど、あたしの速度には遠く及ばない、ってね!

止める暇もない! 瞬く間に眼の前を通り過ぎる小柄な影!

何か手に置かれる。

そいつは置き土産だよハッハーーー!

ファンバルカ

りんごはもういいよ!

いち早く危険を察知したビエネッタの斬撃によりりんごは宙で鮮やかに四つ切り、八つ切り!

……そしてその間に女は遥か彼方。

ビエネッタ

何だったのでしょうか?

ファンバルカ

うむ。世界は広い。おかしな人もいるのだろうさ。

ファンバルカ

じゃあないよ。じゃあないよ君。遺跡に侵入するなんて探索者に決まっているじゃないか。

ファンバルカ

発見されて間もない、所有者の曖昧な遺跡の宝をぶんどろうという寸法か。

ファンバルカ

なんと恥知らずな。

ビエネッタ

どの口である! 見よ、深刻なエラーを受けて固まるビエネッタ。

ビエネッタ

……先程の瞬間的な記憶を破棄しました。危ないところでした。

ビエネッタ

今の矛盾を見逃せば、発生源たるファンバルカ様を消し去る他に道はありませんでした。

ファンバルカ

何を言っているのかな!?

気を取り直し進む……

UBIBI……

ZURIRI……

誰もいないかと思われた遺跡は、モンスターの根城になっていた。

ビエネッタ

蹴散らしますかファンバルカ様?

ファンバルカ

無論。僕らの前に現れたこと、後悔させてやるといい。

一切の躊躇なし。殺戮マシーンと化した彼女の向かうところ、死屍が累々と積み上がる!

ファンバルカ

ウハハハハハイーーヒッヒッ!!

殺戮マシーンと化した彼女の向かうところ、けったいな男の笑い声も響く!

ファンバルカ

おやッ!?

高笑いをしていたら、背後から巨大なクモが襲いかかるではないか!

いかな戦力をもった人形といえど、四方は守りきれぬ。つまりファンバルカの背後はガラ空き。

ファンバルカ

ピンチ! 戦えない僕はつまり??

ファンバルカ

あぎゃーーーー助けてくれーーーー!

ビエネッタ

・ ・ ・

主人の体たらくを見てビエネッタは――迷わず武器を投げ放つ。

剣は巨大グモの眉間に吸い込まれる。歪な叫び声をあげ崩れ落ちる。

ファンバルカ

ビエネッタ君!

抜群の機転。離れながらにして、敵を屠ることに成功した。

だがそれは同時に、ビエネッタが丸腰になったと言うこと。

UJAAAAAAAAAAAAAAーーー!

BUHIIIIIIIIIIーーーー!

ここぞとばかりに喜声をあげ特攻をかけるモンスターたち! それにビエネッタは――

ビエネッタ

――

迷わず己の右腕をひねり上げ、関節を破壊する!! ねじ切れた肘から内部のケーブル類が覗く……

そして、そのままギザギザな断面の肘を、モンスターの土手っ腹に叩き込む!

OGOBO!

人体凶器か……!? 苛烈さとしては十分、しかし敵を破壊するには及ばないように思うが……

NGYAAAAAAA・ ・ ・

BYOBYOBYOVBYOYO~~~!

炎化! 体内のビオラ=エイルを爆撃剤として噴射したのだ。体の奥から過剰なエネルギーに晒され、耐えきれず崩壊するモンスターの体。

残るは黒焦げのシミのみ。圧倒的な破壊力である。

ファンバルカ

ひえええ肘がぁ~~大丈夫かい~~~?

ビエネッタ

大丈夫とは愚問。壊れたこの体では戦闘力が3割は低下しましょう。

ビエネッタ

つまり、全滅です。

ファンバルカ

現状分析がシビアすぎる。

ファンバルカ

全滅はかなわない。さっさと応急処置をするとしよう。さ……見せてくれたまえ。

軟膏と包帯を取り出し、簡素な処置をする。

ビエネッタ

またしてもファンバルカ様の貴重な保有物を破壊してしまいました。お許しを。

ビエネッタ

かくなる上はこの体の永久廃棄を。

ファンバルカ

それこそ貴重な資産の破壊になってしまうじゃないか。却下だ却下。

ファンバルカ

大丈夫か、と聞きたのはそういうことではなかったのだがね……

やや寂しげな笑みを浮かべるファンバルカ。……を、見逃すビエネッタではない。

ビエネッタ

ファンバルカ様はお加減が悪いご様子。休憩が必要でしょうか。

ビエネッタ

りんごがありますがいかがですか。

ファンバルカ

あいたたた……

感情は見逃しまくりだった!

まだまだ遺跡探索は始まったばかり……!

続く

21 歴史眠る古代の石塔 その2

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