歴史眠る古代の石塔 その2
石塔の中に足を踏み入れる!
……その、直前。扉の前に誰かいるではないか。
おやおやそこのお二方。毒りんごはいらんかね。
いらないが。
種明かしをされて騙される道理は、なし!
怪しげなりんご商人と遭遇したのである。
誰をターゲットにしてるの、それ?
道理のわからぬ愚か者とか。
間接的にファンバルカ様を立てる手口。なかなかやりますね。
どういうこと? ……ああ、毒りんごに引っかかってないから、ってことか。
わかりにくすぎる。
初対面の人とも成立してしまうヘンテコ会話。
さあて、中だよ。
ちょっと待て。
さっきの、誰だい!? 未踏の秘所じゃなかったの??
新規エリア開拓を狙う、気炎の商人。このような辺境に足を運ぶとは、凄まじい商人魂です。
騙されてはいかん。あれは単なるカモフラージュ
お早いお気づきで!
――けど、あたしの速度には遠く及ばない、ってね!
止める暇もない! 瞬く間に眼の前を通り過ぎる小柄な影!
何か手に置かれる。
そいつは置き土産だよハッハーーー!
りんごはもういいよ!
いち早く危険を察知したビエネッタの斬撃によりりんごは宙で鮮やかに四つ切り、八つ切り!
……そしてその間に女は遥か彼方。
何だったのでしょうか?
うむ。世界は広い。おかしな人もいるのだろうさ。
じゃあないよ。じゃあないよ君。遺跡に侵入するなんて探索者に決まっているじゃないか。
発見されて間もない、所有者の曖昧な遺跡の宝をぶんどろうという寸法か。
なんと恥知らずな。
どの口である! 見よ、深刻なエラーを受けて固まるビエネッタ。
……先程の瞬間的な記憶を破棄しました。危ないところでした。
今の矛盾を見逃せば、発生源たるファンバルカ様を消し去る他に道はありませんでした。
何を言っているのかな!?
気を取り直し進む……
UBIBI……
ZURIRI……
誰もいないかと思われた遺跡は、モンスターの根城になっていた。
蹴散らしますかファンバルカ様?
無論。僕らの前に現れたこと、後悔させてやるといい。
一切の躊躇なし。殺戮マシーンと化した彼女の向かうところ、死屍が累々と積み上がる!
ウハハハハハイーーヒッヒッ!!
殺戮マシーンと化した彼女の向かうところ、けったいな男の笑い声も響く!
おやッ!?
高笑いをしていたら、背後から巨大なクモが襲いかかるではないか!
いかな戦力をもった人形といえど、四方は守りきれぬ。つまりファンバルカの背後はガラ空き。
ピンチ! 戦えない僕はつまり??
あぎゃーーーー助けてくれーーーー!
・ ・ ・
主人の体たらくを見てビエネッタは――迷わず武器を投げ放つ。
剣は巨大グモの眉間に吸い込まれる。歪な叫び声をあげ崩れ落ちる。
ビエネッタ君!
抜群の機転。離れながらにして、敵を屠ることに成功した。
だがそれは同時に、ビエネッタが丸腰になったと言うこと。
UJAAAAAAAAAAAAAAーーー!
BUHIIIIIIIIIIーーーー!
ここぞとばかりに喜声をあげ特攻をかけるモンスターたち! それにビエネッタは――
――
迷わず己の右腕をひねり上げ、関節を破壊する!! ねじ切れた肘から内部のケーブル類が覗く……
そして、そのままギザギザな断面の肘を、モンスターの土手っ腹に叩き込む!
OGOBO!
人体凶器か……!? 苛烈さとしては十分、しかし敵を破壊するには及ばないように思うが……
NGYAAAAAAA・ ・ ・
BYOBYOBYOVBYOYO~~~!
炎化! 体内のビオラ=エイルを爆撃剤として噴射したのだ。体の奥から過剰なエネルギーに晒され、耐えきれず崩壊するモンスターの体。
残るは黒焦げのシミのみ。圧倒的な破壊力である。
ひえええ肘がぁ~~大丈夫かい~~~?
大丈夫とは愚問。壊れたこの体では戦闘力が3割は低下しましょう。
つまり、全滅です。
現状分析がシビアすぎる。
全滅はかなわない。さっさと応急処置をするとしよう。さ……見せてくれたまえ。
軟膏と包帯を取り出し、簡素な処置をする。
またしてもファンバルカ様の貴重な保有物を破壊してしまいました。お許しを。
かくなる上はこの体の永久廃棄を。
それこそ貴重な資産の破壊になってしまうじゃないか。却下だ却下。
大丈夫か、と聞きたのはそういうことではなかったのだがね……
やや寂しげな笑みを浮かべるファンバルカ。……を、見逃すビエネッタではない。
ファンバルカ様はお加減が悪いご様子。休憩が必要でしょうか。
りんごがありますがいかがですか。
あいたたた……
感情は見逃しまくりだった!
まだまだ遺跡探索は始まったばかり……!
続く