それぞれがそれぞれの国にて〈3〉

 時をまた同じくして、ハルトとクロエの国に挟まれた小さな国。
 この国にも王族は居るが、注目すべき人物は他にいる。
 おさげのそばかす娘。ヒマリ・スワーノ。一般市民、健康第一な17歳だ。

ヒマリ

んー、いい天気〜!洗濯物がよく乾く〜!マカァナ様、いつもありがとうございます!

マカァナと言うのは人ではない。この惑星で多く信仰されている宗教のうちのひとつ、ブディエ教で最も中心とされている仏のひとりである。残念ながら、この惑星に神様・仏様は概念でしか存在していないが、ヒマリはマカァナを厚く信仰していた。
 そんなヒマリの将来やりたい仕事は……。

ヒマリ

よぅし、今日は外で読経しよ!気合い入れてお坊さん修行、頑張んなきゃ!

 そう、お坊さんである。
 ヒマリはまだ市民学校へ通っているが、そこを卒業後は本格的にブディエ教の道に進むつもりであった。お坊さんになって、迷いし人々に安心と光を届けたいと言うのが彼女の夢である。
 この物語は、そんなヒマリが暮らす、135ある国の中でも特にのほほんとした小さな国に、隣の国の王子がお忍びで遊びに来たところから始まるのである……。

〈つづく〉

それぞれがそれぞれの国にて〈3〉

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