為人

生徒指導室を出ると
覚えのある匂いがしました

ボク、人より鼻がいいんです

結衣

……

為人

あー、この子知ってる
この間、高架下で見かけた子です

いい匂いだったので憶えてました

おとーさん

いい匂いのする相手のことは憶えておけよ
きっと相性の合う相手だからな

おとーさん

俺たちにとっては、特に、な…

為人

おとーさんのことを思い出したら
いつの間にか女の子の持ってた箱を取り上げてました

おとーさんがいつも、
「人には親切にしろ、いつか幸せが返ってくるぞ」
と言ってたからです

結衣

あ、あの…

為人

何組ですか?

為人

箱はそこそこ重かったので
運んであげようと思いました

どうせ1年の教室に行くだけですから
何組でも大して遠くはありません

結衣

B組です…

為人

ああ、よかった
ボクもB組なので全然ついでです

為人

じゃあ、ついでです

結衣

あ、スミマセン…

為人

歩きながら何か話をしようと思ったのですが
実はボク、同じ年代の女の子と
話したことないです

あー、そもそも、
同じ年の子とほぼ話したことないです…

為人

な、何を話せばいいですか?

そうだ、この間の高架下でのこと…

為人

あー
あれはダメかも…

為人

あの時、
鳥を見てた人を怒らせちゃったのは
きっと印象悪かったし…

為人

さすがに初めて話す女の子に
印象悪くなることなんて言いたくないし…

為人

ボクだって一応男の子なので
わざわざ女の子に印象悪くなる話なんてできないです

為人

いい匂いがしたから憶えていた、
なんて言ったら絶対ダメな感じがします

為人

う~~~ん…
何話せばいいのかな…?

為人

あ!そうだ!
高架の向こうに市場があることとか…

為人

市場の八百屋さん安いです!
…なんて情報は…
やっぱり違うのかな…

為人

あ!
でも八百屋さんの隣のお肉屋さん、
あげたてころっけオイシイです!

為人

そうだ、ころっけの話しよう!
ええと、何から話せばいいかな…

為人

何を話そうかと
頭ぐるぐるしているうちに
教室に来ちゃいました

結衣

あ、あの…
ありがとうございました…

為人

いえいえ…

為人

ボクは気さくに笑み返しました

結衣

びくり!

結衣

なんか凄味ある…!
さすが高校入学早々に地域の不良グループの頭になるだけあるわ!

為人

教室には30人くらい人がいました
こんなに同年代の人がいるのはボクにとって、
慣れないことだったのです

為人

ボクがいたのはCaliforniaのはずれの
林業中心の田舎町です

ボクが以前通ってた学校は人が少なくて
年下の子ばかりでした

為人

おかーさんはそこで
先生をしていたのです

為人

あー
てきとーに座って待ってればいいのかな?

第2話 終

第2話 3 オオカミ少年、ぐるぐるする

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