為人

ボクの名前は
犬上 為人(いぬがみ なるひと)
父は…
ええと、何というか、海外の人で
母は日本人です

為人

両親が亡くなったので
日本在住の母方のおばあちゃんに引き取られて
この街に来たのです

為人

入学式が終わるとすぐに
ボクは担任の先生に生徒指導室に呼ばれました

君の大体の事情はおばあさまから伺っているよ

大変だったね…

為人

いえ…

入学式に間に合うように編入できてよかった
クラスメイトと一緒にスタートできるね

為人

ハイ
そうですね

日本語はどの程度わかるのかな?
授業についてこれそうかい?
何だったら補習を受けてみるかな?

為人

先生が心配してくれているのは
ボクがつい先日まで
Californiaで暮らしていたからです

為人

あ、いえ、日常会話はほとんどダイジョブです
母が子供の頃から教えてくれてました

為人

母は教師をしていました
いずれ役に立つからと
母はボクにいろんなことを教えてくれました

為人

あ、流行の言葉、ちょっとワカリマセン

ははは、それは追々憶えていくだろう

編入試験の成績も非常に良かったし、あまり心配はなさそうだね?
何かあったら気軽に相談してくれよ?

為人

ハイ、あの…

うん?

為人

あの、奨学金、受けたいです
おばあ…じゃなくて、祖母にお金使わせるのが、チョット…

なるほど…
育英会の資料を取り寄せてみよう

為人

オナガイシマス

お願い、だね
わかったよ
資料が届いたら知らせよう

じゃあ、一足先に教室に行ってくれ
この後、HRがあるからね

為人

ハイ
失礼します

あの年で両親を失ってしまうなんて…
大変なことがあったというのに
しっかりした子だなあ…

さて…
しんみりしているわけにはいかないな
奨学金のことを教頭や校長にも相談してみよう…

つづく

第2話 2 オオカミ少年、しんみりさせる

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