18 突撃!突貫交渉人 その8
上の方から人の声がするな……気づかれないよう、気をつけて。
階段を登って行く――
!
え!? 人!
ボソボソと聞こえる人の声は、更にその上から。それが故に存在感なく佇む人の存在に反応が遅れたのである。
……
あ~~~い、~死~~
のらりくらりと物騒……!
ちっ戦わねばならんか!
戦ならばわたくしが。
スッと前に出るビエネッタ。
そうだな。戦いたまえよ僕の騎士。役目を果たしておくれ。
そしてニヤリ。
ただし、僕と共に、だ!
僕らはここに残ろう! 先に行きたまえハウス君。
いいだろう。ここは任せた。
ファンバルカ様は一緒に行かれないのですか。
せっかく君と再開できたのだ。また離れることもないだろう。
僕は一秒でも君と一緒にいたい。
照れも隠しもせぬ。ありのままの気持ちであるならば。
ともに溶解液に落ちようと言うことでしょうか?
???
ちょっとついていけなかったな?
場面変わって砦の最上階。
さて……カディナスを掌握するには、議会の中枢ランドル派を押さえる必要があるじゃろうな。
そのことだがなドネル。
俺は、手を引かせてもらおうと思っていいる。
え
兵力の貸付も……なしだ。
は
な……なんで!?
何でも何もなかろう……簡単に司法局に目をつけられるとはどういうことだ?
そんな間抜けと組んでもリスクしかない――
い、いやそれはわしの責任ではなくて……ゴニョゴニョ
ハッ そ、そんなことを言ってよいのか? わしはお前たちの内部事情を全て知っておるのだぞ。
今更手は切れぬ。勝手な真似をすれば……わかっておろうな?
それがお前の切り札か。
何事も、リスクは……あるということか。
瞬きほどの、黙考。
貴様が消えるのが……一番リスクが低そうだ……
な! なな、な!
慌てふためくドネル伯。ゆらり、アジトのリーダーが近づくと、恐怖のあまり尻もちをついてしまった。
あわわわ……わ、わ、……
弱者をいたぶる趣味はない……
苦しむ暇もなく、土に返してやろう……
やめてくれ! やめ、ああ! 助け
待て!
・ ・ ・
お前たちは始末を命じたのだがな……失敗したとは情けない。
やはりお前の命令だったか。
阻止して悪かったな。お陰でピンピンしてるよ。……それはともかく、
その男に死んでもらうわけにはいかない。正しく法の裁きを受けてもらわねばならない!
裁き? 法は我らを救わない……ならば、その施しは不要。俺の手で、カタをつけてやろう。
やめろ!
貴様らは、やめろとほざくだけ。そんなものは、届かんな……
ひ、ひっーーーーひ……
落ち着け!
考えてみろ。俺の目の前で罪を重ねて、どう切り抜けるつもりだ? 流石に見逃せんぞ……
……
貴様も含めて始末するだけだが……
できるはずがない……!
言っておくが、俺自身の強さを過信しているから言うんじゃないぞ。
たとえ俺が殺されたとしても、司法局にはすぐに連絡が行き、追求は止まらないだろう。
決して逃げられはしない……
……
八方塞がり、そう思わせたいのか?
追い詰めて追い詰めて、さぞ楽しそうだな……?
大臣に手を出さないなら……お前たちの逃走に目を瞑る。
態勢を立て直すなりなんなり……時間が必要だろう?
……
どういう風の吹き回しだ……
お前たちを今どうこうする余裕は、こちらにもないということ。
この辺で手打ちにしよう……どうだ?
……
なかなか……柔軟だな。さぞ出世頭と言ったところか?
男から、殺意が収まる。
た、助かった……
お前はどっちにしろ終わりだ。
死んだほうがマシだったと思うほどの追求が待っているぞ。覚悟しておけ……
追い詰めている!
ではな。二度と会うことはないだろう。
そう願いたいね、……多くの意味で。
ふう、ようやく片付いた。無事か、ハウス君。
場が丸く収まりかけた頃、人形遣いが登場する。
彼がハウスの方針に異を唱える場合、ややこしいことになる。彼の性格上、問題はないと思われるが――
孤軍飛び出し、怪我のご様子もなし。さすがでございますね。
いや、戦闘はしていないからな……
どういうことだ!?
響き渡る怒声!
なぜここに、悪魔が。
悪魔を討伐し、過去に決着をつけろと。そういうことなのかブツブツ……
おい、何をした人形遣い!! すごい形相で睨まれてるぞ! せっかく丸く収まるところを!
し、知らない! 恨まれる覚えなど――
――恨み?
いや――
~~~~~~~!!
その視線の先には、ビエネッタ。呪詛を込めんがごとき眼力で一時も視線をずらさず。
恨まれる覚えなど――いくらでも心当たりがある、んだっったな……
――――
続く