敬一の手を引いたまま連れて来たのは星華公園だった。
 幸い人通りはそんなに多くない。視界に映るのも散歩に来ている高齢者位だ。
 少ない人通りだが、それでも避けるように外れにあるベンチに座る。

明彦

大丈夫か、ケイ

敬一

うん、何とか……アキ君に情けない所を見られちゃったね

明彦

気にするな。俺達友達だろ

敬一

アキ君……有難う。今は君の純粋な言葉に救われるよ

 言いながら敬一は力なく笑った。

明彦

ケイが弱ってるの、初めて見た気がする。
さっき出会った女子と何かあったのか? 本当は知っているんだろ?

敬一

やっぱりわかっちゃうか……

 言いながら敬一は溜息を吐いた。

敬一

さっき会った女の子……天音芹菜(あまねせりな)だと思う。
俺の中学時代の元カノだよ

明彦

何……!?

 明彦は言葉が出なくなる。
 敬一は小学校6年生の時に転校し、中学時代は一時的に明彦達との関係が切れた時になる。
 高校再会の時に大きく姿を変えていた敬一……その原因があるのが中学時代という気がしていた。そこに元カノというキーワード。何も無いと思える程明彦は大らかではなかった。
 敬一は記憶を手繰るようにしながら話を続ける。

敬一

性格はかなり変わってたけど……いや、変わったんじゃないな。きっと俺が変えてしまったんだと思う……。上手く別れられなかった俺が……

明彦

そんな事……

 口を挟もうとする明彦を敬一は制した。

敬一

無かったら良かったんだけどね……彼女の発した言葉、もの凄く覚えがあるんだ。別れの時俺は……確かに言ったんだよ。彼女が待てないなら終わりで良いってさ

明彦

…………

 敬一の告白に明彦は言葉を失った。

敬一

逆に言えば待ってくれれば終わらない、好きになるとも取れるよね。迂闊だったな……

明彦

ケイ……

敬一

彼女が一度好きになった男をそう簡単に忘れられないような……愛情深い子だってわかっていた筈なのに……それにつけ込むような別れ方をしてしまった。
悪いのは全部俺だ

 そこまで一息に言った敬一は再び溜息を吐いた。

敬一

はぁ……面倒な事になったな。まぁでもアキ君は何も心配しないで。
これは俺の問題だから……俺がケジメをつけないと

 言いながら立ち上がる。

敬一

今日はこのまま1人で帰るよ。ちょっと頭を整理しないと……。
ごめんね、面倒事に巻き込んじゃって。それじゃあ

明彦

あ、ケイ……!

 言い捨てるようにして歩き出した敬一を明彦は追い掛けそうになって……結局辞めた。

明彦

俺も何か力になれたら良いんだが……

2-3 天才旧友の独白

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