今日は、結構降るわね。
あの子、どろんこになって
ないかしら

降り続く雨音の強さに、やんちゃなお嬢ちゃんを
想ってコトリと首を傾げる。
その時、

突如、ショート音が響き、真っ白な視界が暗転する。

ッ?!

弾けたように跳ねた体が傾き倒れる。
咄嗟に右手を地に着いて支えようとしたが、
右手は端から砕け、そのまま地面に
倒れ伏してしまった。

あっ?ガ……
そっカ。頭ノひビから雨ガ入ッテ
…アァ、今度こソ、おわり、カナァ

……フフ、幸せ、ダッたなぁ。
最後に、チャント、役に立テタ、のカナ

真っ暗闇の中、静かに、
幸福感に包まれた終わりを待つ。
その時、

おばぁちゃん!

お嬢チャン……?

騒がしい幸せが、やって来た。
小さな体で、必死に駆け寄ってくる。

おばぁちゃん!どうしたの?
どうして倒れて……あぁっ!腕が……!

イインだよ、オ嬢ちゃン。こっちへ、オイデ

おばぁちゃん、あのね、あのね、
私、謝れたの。ちゃんと、
ごめんなさい、出来たの!
仲直り、出来たの……

そうかい。それは、本当に、良かったねぇ。

あノね、おジョうちゃん。
バラの、花言葉

もう、時間がない。

バラ……?

うん

最後に、どうしても伝えたい。

ご、ホン

あなたに出会えたことの心からの喜び

キュうほン

いつもあなたを想っています

ジュういっ、ポン

最愛

ひゃク、いっポン……フフッ

これ以上ないほど愛しています

よツバの、クローバー……

どうか、幸せになって。

最後の力で、左腕を上げ、
小さな体を抱き締めた。

全身が砕けていく中、
ノイズの隙間から最後に聞こえたのは、
柔らかくて、温かい音。

fin.

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