05 洞窟に潜む魔物 その3
やはり悪事を働いていたなファンバルカ。
秘宝の強奪だと? 許されることではない!
なぜだ? 誰の迷惑もかからないだろう。
緊張感の高まっていく二人――
この洞窟は国の管理対象なはず。そこで取れる鉱石、資源……そういったものは厳重に管理されなければならない。
何らかの力を秘めた秘宝なら、なおさらだ。
ふん、中央のお役人が言いそうなセリフだね。だが、
残念ながらそんな法律はない!
ギルドの方では確かにそんな相互扶助的な取り決めもあるがね。僕はギルドの会員でもないし……許された範囲で好き勝手やらせてもらうよ。
どうだまいったかお坊ちゃん!
言って従うような輩ではないか……
ファイティングポーズ――
秘宝を渡せ。抵抗しなければ怪我はさせまい。
優しさまで見せるその感じ。いいね、その独善。
虫唾が走る!
秘宝をどう使うつもりだ? その人形を更に凶暴にしていくのだろう。危険すぎる……
まさか。これはビエネッタ君を人間にするために必要なものなんだ。
人間? フフッ、フッ……
もっとマシな嘘をつくんだな。人間になど無理に決まっているだろう。
そんなものは口実で、その人形で悪事を働くつもりだな?
18年前のこと、忘れたとは言わせないぞ。お前はその人形で!
ヤメロォォ――――!
やめろ……僕は……もう、しない。あんなことは……
信用できるものか。その人形が元凶なんだぞ。それを引き連れている時点で、何を企んでいるかなんて――
追い払え……ーーーーー!
ビエネッタ君!
追い払います。
!!
!
鍛え上げられた拳が剣を阻む! むろん斬り捨てるつもりはなかったとはいえ、凄まじい速度で振るわれた剣を防ぐのは並大抵のことではない。
うぐぐ、ぐぐ……馬鹿力……すぎるだろ……
なるほど、ただのインテリヘロヘロではなさそうだ。
それなりに……動けなくては、単独行動などしない、のでな……!
!
反対の拳でビエネッタに向けて素早いジャブ! ビエネッタは軽々とかわすが、
間髪入れず、すばやい膝蹴り。下からの突き上げに軽く体が浮かぶ。拳はフェイントか……!
軽く右にかしいだ体を、地に腕をついて立て直す――
!!
いけない! 今は支えとなるべき腕を失っているのだった。そのまま右肩から転ぶ。
せッ!
裂帛の気合と踵落とし!
容赦ない。骨を砕かんが勢いで振り下ろされた足を
させてたまるか!
ぎゃっ何だこれ!?
それは、ぬいぐるみ。ハウスの顔に張り付き動きを止めたのだ。ぬいぐるみの背中から伸びる複数の糸がファンバルカの指まで繋がれていた。
くそっくそっ離れろ……!
きゅー
もがきやがる……全然離れないぞこいつ……!
巧みな操作術。首を右に振ればそれに追従し、両手で鷲掴みにしようとすれば瞬間浮かび上がり、指先が空を掴んだ後に再び顔に覆いかぶさる。
やめろおおおおお!
そんなに時間をかけていいのだろうか。
・ ・ ・
はあ、はあ、やっと……
やっとの思いで人形を引っ剥がし、再び周りの様子を確認するが。
ううううぉぉぉおおおあああ!?
惚れ惚れする裏拳! ハウスの顎を強かにえぐり吹き飛ばす。
錐揉み3回転半……! 半ば壁にめり込む形で動きをとめ、沈黙する。
…………
どうだまいったか~~!
ファンバルカ様、助けてくれたのですね。
ありがとうございます。おかげで。
!
滅多にないビエネッタからのお礼……! ファンバルカは喜びに打ち震える!
そうでなければ、惨殺するしか生き残る道はなく。お命を奪っていたでしょう。
おおっと~~~!
喜びで震えるところが、冷や汗で震えてしまったよ……やれやれ、結果オーライだ。
ぐ……ぐ……
さて、長居は無用だ。急いで帰るとしよう。
逃れられんぞ……ここをしのいだところ……で……
…………
どうかな……僕たちは、できることをするだけ、さ――
呻く司法局の男はそのままに、洞窟を去る2人。
妨害はあるだろう。障害はあるだろう。だが2人の歩みを止めるには、これだけでは届かない。
敵が多いのも考えものですねファンバルカ様。
そうだねえ。僕は喧嘩を売っているつもりはないのだが……歯向かう人ばかり現れる。
これでは夜道を歩けない。おお怖い。
鳥目だからですか?
文脈は見えているかいビエネッタ?
続く