お見舞いに来た太一が病室を出たのを見送って……里子は錠剤の包装をポケットから取り出して、そっとほくそ笑んだ。

「うまくいったわ」

彼女はカフェインを錠剤にした薬剤を飲んでいた。そのせいで、血液検査時に血中カフェイン濃度がかなり高かったのだ。


里子は引き出しから携帯を取り出して、友人の静香にメッセージを送る。

『あなたの言ったとおり。これであなたの元彼にもっと貢がせることができるわ』

程なくして、静香から返事が返ってきた。

『そうでしょう。私の計画通り……あの男は別れ話をしてもきっと、最後の缶コーヒーを渡す。だから、医師の私が、あなたの健康に影響のない程度の最大量のカフェインを渡した。あとは、あなたの演技の賜物ね。これできっと、あなたをぞんざいに扱うこともなくなるでしょう』

里子はそのメールを見てクスっと笑い、返信した。

『それにしても本当に、良くあんなカモ男を私に譲ってくれたわね。何をねだっても断らないし。退院祝いには、車でも買って貰おうかな……』

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