前方から音が発せられたと思った直後に、後方の花瓶が割れる。

百目鬼 柏

チッ、外したか…次は当てる

一瞬のことで何が起こったか理解できなかったが、前方にいるカラスの化け物が手にしているライフルを見て、自分に向かって銃弾が放たれたとわかった。

早く走れ、なるべく角を曲がるんだ!

花木 聡一

弾って…ここは日本だぞ!

早くしろ!!死ぬぞ!!

花木 聡一

ひ、ひぃいいい!

百目鬼 柏

止まれえええ!ぶっ殺してやる!!

左だ、左に曲がれ…次は右だ!

花木 聡一

うわあああああああッ!

後方から何度か銃声が聞こえたが、無我夢中で廊下を走る。

そこの部屋に入れ!!

花木 聡一

わ、わかった!!

命からがら部屋に入ると、長机にきれいに並べられた食器が目に入った。

早く、テーブルの下に隠れろ!

花木 聡一

いや、そんなのすぐにバレるだろ!

大丈夫だ、私が何とかする!

母さん、腹減ったよぉお!何か食べさせてくれ!

花木 聡一

さっきの化け物に声が似ている!?

テーブルクロスをかき分けて机の下にもぐるとしばらくして乱暴にドアが開けられる

百目鬼 柏

いない…クソッ、よりによってまた”目”が使えないところに隠れやがったか

花木 聡一

”目”ってなんのことだ?

百目鬼 鮎

…柏ちゃん、お腹を空かせているの?

百目鬼 柏

チッ、…あんたか

百目鬼 鮎

どうしたの?やっと私をお母さんって呼んでくれたのに…

百目鬼 柏

ああ?俺がか?呼ぶはずねえだろ!!

百目鬼 柏

そんなことより、ここによそ者が来なかったか!?

百目鬼 鮎

そんなことですって…

百目鬼 柏

その様子じゃこっちの出口から出ていったか…じゃあな

百目鬼 鮎

待ちなさい!

カラスの化け物はもう一つの入口から部屋を出ていく。

花木 聡一

なんだこの家族…仲がいいわけじゃないみたいだな

花木 聡一

いずれにせよ、あいつが出ていってくれて良かった

百目鬼 鮎

…おかしいわね

おい、まずいぞ

花木 聡一

え?

百目鬼 鮎

おかしい、おかしい、おかしい、おかしい、おかしい、おかしいおかしい…

百目鬼 鮎

私を、わたしを、ワタシを…お母さんってッ!

百目鬼 鮎

お母さんってお母さんてお母さんお母さんお母さんってオカアサンッテ…

百目鬼 鮎

確かに言っていたのにッ!!!!

突然、長机が投げ飛ばされ並べられた食器が豪快に割れる

花木 聡一

ひッ…!?

百目鬼 鮎

あら?あたなた達…

花木 聡一

あ、あの俺は…

話しても無駄だ、すぐに逃げろ!!

百目鬼 鮎

あなた達のせいだったのね…あの子が私をお母さんって…

百目鬼 鮎

言ってくれたと思ったのにぃいいい!!

細い見た目から想像できない怪力で太い机の脚や椅子を投げつけてくる

花木 聡一

た、助けてくれぇええええ!

つづく

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