……それで?
うん……えっとね
それって……!
そう、前に三上くんが好きだって言ってたホットケーキストラップ。可愛くて私もつい買っちゃった
ストラップだけじゃないんだよ? 三上くんって茶髪の大人な女性が好きなんだよね? 私元からちょっと茶色っぽい髪色だったんだけど、こっそり染めたんだ……似合ってるかな?
三上くんのこと何でも知ってるんだよ、住んでるのは○○郡で電車で通ってるんだよね私とは反対の方向だけど、弟さんがいてサッカー部の主将なんだよね、甘党で帰りに喫茶店でホットケーキを食べるのが好きで、考えるとき顎に人差し指と親指を添える癖があるんだよね、それに――――
――――あのさ
何が……言いたいの?
あっ……そうだね。私ばっかりしゃべっちゃって。ごめんね
私、三上くんが好きです。私と付き合ってください
…………
一つ聞いていい?
えっ? うん何でも聞いて――――
お前、誰?
――――えっ?
俺さ、お前と話したことないよね? なんか、廊下とかですれ違うくらいだけどさ、なんかやけに見るなって思ってたけど、ずっとつけてたの?
それさ、マジでキモいよ
…………
それにさ、俺のことをやたら調べて気を引こうとしてたっぽいけど、普通に知らないやつのこと好きになったりしないし
ごめんだけど、俺はお前と付き合えないし関わりたくないです、ってことでいい?
…………なんでそんな酷いこと言うの?
私、三上くんに見てもらいたくて、必死だったんだよ……? 好きになってもらおうと頑張ったのに、キモいなんて……
……だからさぁ
ただのキモいストーカーだよ、お前
――――!!!
ちょっと、元気にしてる? 学校来なくなってもう1週間だよ?
…………うん
お母さんは?
……仕事行ってる
……あのさ、辛いなら話聞くよ?しんどくない?
……大丈夫
……ほんとに?
…………
まあさ、いつまでも沈んでるわけにいかないし、気分転換しなよ。趣味とかやってさ、来月とかでいいから学校来なよ
趣味……
私の趣味……何だっけ
えっ?
……私、今まで何してきたんだろう
高校に入学して三上くんに一目惚れしてから、ずっと夢中で……彼に振り向いてもらうことばかり考えてきて……
私……誰だっけ
彼に好かれたくて……髪も染めてキーホルダーも買って――――
――――バカみたい
――――ううん、そうじゃないよ。運が良かっただけ。それでもありがとう
…………すみません
えっ?
私が誰か、ご存じありませんか?
はっ……?
ぇ……あっ……!?
教えてください、あなたの中身を
私にも、分かるように
待たせたな
…………