盟主の不眠症治療生活が始まった早々に、翔子とレムはお互いの夜の欲望を抑えられないで、昨夜はやはり体を重ねてしまった両者。
だが、昨夜のセックスは今までの行為とは違って、彼は一切、自らを挿入しないで純粋に彼女を悦ばす為に抱いたセックスだった。
だんだんであるが、彼自身も自分だけが気持ちいいだけではなく、相手を悦ばしてあげよう…と思って、行為に及ぶようになってきた。
リリアから見れば、これは珍しい光景に見えた。
多分、自分に出会って間もない頃の彼なら、相手などお構いなしに、単純に自らの欲望さえ満たしていればそれでいいと思っていただろうと思う。
だが、翔子が来てからというのも、彼は自らの相手となる女性にも不器用なりに彼なりに喜ばしてあげようという感情が入ってきた様子だった。
不眠症治療生活が始まって、本日は3日目。
朝から翔子は、1階のキッチンを借りて、朝のティータイムのためのお茶を用意している様子だ。
キッチンの机の上には、ハーブが沢山載せてあり、彼女はその配合をしている。
おぼろげに記憶に残した、現実世界に居た時に飲んでいたストレスと不眠症に効果があるハーブティー。
何種類かのハーブが置いてある。カモミール、マリーゴールド、ラベンダー、レモンバーム、セントジョーンズワートなどだ。
それをティーパックに一つまみずつ入れている。最後のセントジョーンズワートだけ、きちんとスプーンで1杯だけにして、柔らかくティーパックを閉じた。
キッチンの火にかけられているのは、やかんに入れた熱湯だ。
最後にきちんと沸騰をさせて、彼女はそれをティーポットの中にティーパックを入れて蒸らすようにゆっくりと熱湯を注いだ。
カモミールの柔らかいリンゴのような香りがキッチンに漂う。なかなか優雅な香りがした。