ギィッ バタン

ヤティム、依頼が来たぞ。

ドアから入ってくるなり、相棒のラキヤが言った。

ここは〈砂漠の戦士団〉。
戦いを請け負う組織だが、結成して一年ほどしか経っていないこともあり、まだまだ知名度は低い。
依頼が来るのは、なんとビックリ数か月ぶりだ。

おっ、久々だなァ。
護衛? 討伐? それとも他の?

盗賊団の討伐だ。
〈黒豹団〉を名乗る賊が、東のリーフの町を拠点に活発化しているらしい。

リーフねェ。
あそこは元々治安が悪いからなァ。

これが手配書だ。
団長ほか数名、目撃者による似顔絵がある。確認しておけ。

どれどれェ…

…………

戦闘になれば、俺たちは、盗賊をその場で殺すことも多い。
人違いでは済まされんからな。しっかり顔を覚えておけよ。

いやコレ…
人違いすることあるかァ?

本物のヒョウを間違えて殺すことはあってもよォ。
他の人間と間違えることはねェよ。

本当に人間か?
先祖にネコ科交じってねェ?

耳は人間だろう。

耳はな。

耳だけな。

おい、あまり言ってやるな。

俺も顔に傷があるからわかるのだ。
見た目のことは、本人にはどうしようもない。

顔に傷がある程度のことで、知った顔されたくないだろうよ、こいつも。

っていうか、これで〈黒豹団〉って名乗ってんの?
正体隠す気ゼロかよ。名前を変えるかヒョウ柄を隠すかしろよ。

〈黒豹団〉なのに黒くないのがいっそ腹立たしいくらいだよ。

何に対して怒っているのだ。

こいつのネーミングセンス。

…何に対して怒っているのだ。

まあ…言って、似顔絵だからな。

目撃者の誇張が入ってるんだろうな。
〈黒豹団〉って名前のせいで、先入観を持っちまったんだろう、きっと。

何をブツブツ言っている。
準備はできたのか?

やつらはリーフに立ち寄る隊商を待ち伏せして、襲っているんだ。
現れる場所の見当はついている。今から向かうぞ。

はいはい、いつでもオーケーだよ。

砂漠を守護する〈戦士団〉。
しつけのなってないケダモノを、こらしめに行くとしましょうや。

――知りませんねぇ。
なにせ我々は、西ではなく北から来たもので…

ダメだってェ、ラキヤ。
「知らないか」なァんて親切な聞き方したら、「知らない」って答えるに決まってんじゃん?

お前さんらに言いたいことは二つだ。
一つ、俺たちはとある盗賊団の討伐依頼を受けてここにいる。

二つ、俺たちは、手配書で見てお前さんの顔を知っている。
――っていうか、

本当にその顔なのかよ、ちくしょう!!!!

 

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