最近の由衣は、どこか暗く不安そうな表情をさせていることが多くなった。

 力なく微笑む彼女の姿は、心なしか痩せたようにも見える。


 ーーあれから、もうすぐ一カ月。


 大学に通っている僕は、バイトも辞めるとほとんどの時間を彼女の為に費やした。

 大学にいる間は勿論のこと、帰宅してからも決して彼女の側を離れない。

 こんなに不安そうにしている彼女を、一人になんてしておけるわけがなかった。


 彼女が作ったシチューを口へ運ぶと、ベッドの上ですやすやと眠る由衣を見つめる。

 その顔は、眠っていてもどこか疲れた表情をしている。

 きっとアイツに悩まされて、心身共に疲れきっているのだろう。

ーー大丈夫。由衣のことは必ず僕が守るから

 眠る彼女の頬にそっと触れると、触れた指先を滑らせ優しく微笑む。

 すると、それが少しくすぐったかったのか、由衣は小さく

由衣

んっ……

と声を漏らすと寝返りをうった。

 そんな彼女を見てクスリと微笑んだ僕は、先程買ったばかりの小さな箱をポケットから取り出した。


 ーー明日はいよいよ、僕達の交際記念日。


 ここ最近は、暗い表情ばかりさせていた彼女だったが、明日はきっと笑顔を見せてくれるはず。


 手元にある小さな箱を見つめて微笑むと、その視線を由衣へと戻して、緩んだ口元をゆっくりと開いた。

明日は楽しみにしててね。

ーーおやすみ、由衣


 眠る彼女の額にそっとキスを落として満足気に微笑んだ僕は、彼女の眠りを妨げないよう静かに部屋を後にしたーー。

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