首尾はどうだね?

手こずってますね。どれだけ揺すっても知らないの一点張りで

ふん……随分と我慢強い娘なんだな

今はレオンが相手してます。もうすぐ落ちるでしょう

ほぅ、レオンか! ならば私も顔を出すとするかな

モナード

ぐふっ……

レオン・ハーグレイヴ

そろそろ吐いちまえ。鼻血でどんどん呼吸しづらくなるぞ

モナード

ぜんぶ話しただろレオン! 俺は本当に何も知らねえんだ!!

レオン・ハーグレイヴ

あぁさっきも聞いた。だが信じられねぇ

レオン・ハーグレイヴ

なぁモナード、いい加減観念しろよ。これ以上粘って何になる? もっと面倒くさい奴が来ないうちに――――

ジョン・サンレオーネ

レオン!! この丸眼鏡の小童め!!

レオン・ハーグレイヴ

……来ちゃいましたか

モナード

じょ、じょじょじょジョナサン……?

ジョン・サンレオーネ

面白い声で鳴く娘だな。前にどこかで会ったか?

レオン・ハーグレイヴ

会ったも何も、モナードだよ。スラムの西区を任せてたろ

ジョン・サンレオーネ

おぉそうだそうだ! 質屋のモナード! いかつい顔して細かい計算が得意な奴だ! いやぁレオンの記憶力は相変わらずだな!

モナード

な、なぁジョナサン。俺は今までもアンタの言うとおりに働いてきた。こんな扱いを受ける理由が分からねぇんだが……

ジョン・サンレオーネ

そう焦るなモナード。君、お喋りは好きか?

モナード

はっ?

ジョン・サンレオーネ

私は喋るのは好きだよ。相手を知ることで自分もまた顧みれるからな。だが今回は別のお喋りだ。ある狂人の話をしてやろう

ジョン・サンレオーネ

男の親は酷い毒親でな、麻薬漬けで毎日情緒不安定、殴って怒鳴ってを繰り返され、男は後に抑うつ症だと診断された。自分の感情やストレスを内に抱えすぎていたんだな

ジョン・サンレオーネ

そのカウンセラーからは自分の抑圧された感情を表に出すことだと言われた。だが男にとって人と対話する手段は暴力しかなかった。そんな彼が親に何をしたと思う?

レオン・ハーグレイヴ

…………

ジョン・サンレオーネ

男には一定以上の拷問の才能があった。開花させた男は独特のカリスマを纏い始め、今では北部の麻薬売買をすべて取り仕切るマフィアのボスになった

モナード

それが……アンタってことか?

ジョン・サンレオーネ

何を言っている。これは海の向こうの話だ。今では「口割り」なんて呼ばれているが、そういう奴にも青い頃があったという話だ

ジョン・サンレオーネ

まぁかく言う私も若い頃にやんちゃをしていてね、手荒なことも随分とやってきた。そういったことには心得があるつもりでね、試してもいいかな?

モナード

……はっ? 何するつもりだよジョナサン!

ジョン・サンレオーネ

ふん、辞書か。お前らしいチョイスだなレオン。これで殴り続けるのも大変だろうに

レオン・ハーグレイヴ

拳だと手を痛めるし下手な鈍器よりはいいだろ

ジョン・サンレオーネ

責めてるわけじゃないぞ? お前は忠実だからな。本の角というのは確かに鈍器よりは柔らかい。殺さずに絶妙なバランスで痛めつけることができる

ジョン・サンレオーネ

だが、シンプルにいくのがダメなら変化球でいくべきだ。モナード、確認しておくぞ?

ジョン・サンレオーネ

私はお前達に資金の洗浄を主に任せている。その他いろいろなこともな。その代わり私のファミリーはスラム街全域の統治をしている。実際私達が町に介入してからは大きな事故事件も減ったしな。だがここ最近でスラムで不審死が頻発している

ジョン・サンレオーネ

これに見覚えはあるな?

モナード

……MALICE、だろ?

ジョン・サンレオーネ

そうだ、私達が独自に配合して作り上げた新しい麻薬・MALICE(マリス)。即効性が高く従来のメタンフェタミンよりも感じられる解放感・高揚感がすさまじい

ジョン・サンレオーネ

お陰で国の一流のアーティストやアスリートが御用達になっている。だが、その分依存性が群を抜いて高く低品質の薬では快感を感じる前に死に至ることもある

レオン・ハーグレイヴ

…………

ジョン・サンレオーネ

話を戻そう、モナード。ここ最近スラム街の各地で純度の低いMALICEが流れているらしい。麻薬の過剰摂取らしき死体が今日で19人だ。増えすぎだと思わないか?

モナード

だ、だから何で俺に聞くんだよ!?

ジョン・サンレオーネ

お前を疑ってるからだモナード。先週の死んだ子供たちは西区の子だったしな。資金洗浄や死体処理で私に雇われてる者はいるが関わりがどれも薄い。低品質とはいえMALICEを流せるほどうちの組織と繋がっている者がいるとすれば、それはお前しかいない

モナード

ちげぇよ俺じゃねぇ!! 俺は金勘定を任されてただけだし麻薬の業者とも接点はねぇよ! 俺を疑ったら他の全員も同じだろ!?

ジョン・サンレオーネ

だからこうやって一人ずつ「面接」してるんじゃないか。スラムの連中とは最近顔を合わせてなかったしな

レオン・ハーグレイヴ

それにお前、俺が来た時に全速力で逃げてたろ? あれはどう説明するつもりだ?

モナード

あれはっ……うちの甥っ子が手術受けなきゃいけないから金をちょろまかしたんだよ……ちゃんと耳をそろえて返すつもりだったんだ

モナード

誓って言うが俺は麻薬とは何の関係もねぇ! これはただの冤罪――――

モナード

ぐほぉっ!?

ジョン・サンレオーネ

やかましいぞモナード。素直にとっとと吐け

モナード

げほっごほっ……ジョナサン何を…………!?

ジョン・サンレオーネ

安心しろ、ただのウォッカだ。度数74%のな。どうだ染みるだろう?

ジョン・サンレオーネ

モナード、私は明日早いから最後のチャンスだ。本当にMALICEを流してないんだな?

モナード

バカッやめろジョナサン!! んなもん近づけたら…………!!

ジョン・サンレオーネ

あぁ危険だな。だから早く答えた方がいいぞ? 私は若くないからお前の膝に落としてしまうかもしれん

レオン・ハーグレイヴ

……これが変化球か

ジョン・サンレオーネ

どうなんだモナード、そろそろ手が震えてきたぞ?

モナード

ほ、本当に何も知らねぇんだ!! 俺でもねぇし俺の仕事仲間にも心当たりはねぇ!! 信じてくれジョナサン!!

ジョン・サンレオーネ

……よし、いいだろう

ジョン・サンレオーネ

まだ半分残ってるから持って帰るといい。それと、甥っ子の手術代は心配するな。日頃の働きの礼だ、足りなければケチなことしないで私のところに来い

モナード

はあーっはあーっ……!?

ジョン・サンレオーネ

シャワー浴びろよ? ひどく臭うからな

ジョン・サンレオーネ

さぁレオン! 帰るとするか!

レオン・ハーグレイヴ

…………

結局ヤロウは吐きませんでしたか?

ジョン・サンレオーネ

いや、あれはシロだ。少なくとも奴の周辺ではなさそうだ

レオン・ハーグレイヴ

昨日西区で2人、その前は南区で4人……まるでいたちごっこだ

ジョン・サンレオーネ

まったく煮え切らん……この分だともっと近しい者も疑った方がいいのかもな

レオン・ハーグレイヴ

そう肩を落とすなジョナサン。まだこれだけの人数なら警察は見向きもしないさ。支払いが遅れてるアスリートをリークすれば警察もマスコミもそっちに食いつく

ジョン・サンレオーネ

また一時しのぎか。忌々しいことこの上ないな。ホプキンスの連中も顔色を窺っておると言うのに

ラッドがホプキンスの下っ端を捕まえたみたいです。吐かせますか?

ジョン・サンレオーネ

いや、ただの下っ端なら今までも散々捕まえて殺してきたさ。見せしめに首でも放り投げておけ

レオン・ハーグレイヴ

…………

ジョン・サンレオーネ

どうした、浮かない顔だなレオン?

レオン・ハーグレイヴ

いや別に。何でもない

ジョン・サンレオーネ

お前には期待しているぞ。この時代、忠義というのが得難いものというのはお前も知ってるだろう。半年前に拾った時の私を褒めたいぐらいだ

レオン・ハーグレイヴ

……なあジョナサン

ジョン・サンレオーネ

なんだ?

レオン・ハーグレイヴ

もし俺が裏切り者なら、迷わずに俺を殺すか?

ジョン・サンレオーネ

あぁ勿論だ

ジョン・サンレオーネ

だがそれまでは信用しよう。どんな理由でも私のために働くならな

レオン・ハーグレイヴ

……そうかよ

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