祈雨丸の背後から鋭い声がかかった。
祈雨丸の背後から鋭い声がかかった。
何者だ。
そこで何をしている……!
では、顔を上げよう。(運よく?)祈雨丸の正面には、鏡が据え置かれていた。それに映り、背後の声の主の顔が見えた、見えたい…
これで魔法使いのほうは鏡に映らないとかだったらエグいホラーだな…などと考えたりした……
おお……!かっこよい………!では鏡を通し、背後の人物が鋭くあなたをにらみつけていた。
盗人か? 火事場泥棒とはまさにこのことか
幾分幼い声に怒りをにじませた少女は、いつだったか緋奈子に写真を見せてもらったこともある、彼女の妹、朱華綾緋であった。
緋奈子によく似ているが、年のころは12,3くらいの少女。だが視線の鋭さは、緋奈子よりもよほどシノビらしくある。
暫く鏡越しで少女の顔を見つめ、そのまま
このような場所でお目にかかることになるとは。綾緋さん……ですね。成程、シノビの顔をしていらっしゃる
その言葉には、柔らかささえある感じ。
名前を呼ばれたことに一瞬瞠目し、そしてその声色の柔らかさに若干の戸惑いを見せる。
……何故わたしの名を?
しかし、すぐにその戸惑いは消え、警戒心を露わに。わずかな殺気さえ漏れている。
その手は既に苦無を握っていた。
しかし、よく観察すれば若干動きがおかしい。
片腕をかばっているような動き。
怪我をしている、というのはそこから想像に難くない。
ふむ、しかしこちらは武装せずとも優勢を確信している、それに対立する気もないので、ゆっくり振り返り微笑む。
姉君から伺っておりますよ、大事な愛しい妹だと
泥棒などとんでもない。しいて言えば……そうですね、私の目的は”火消し”、と言ったところでしょうか
警戒心が解けないようであるなら、また異境を介して退場する流れのつもりですが……どうかな?
ほうほう…では
緋奈姉さまの……!?
と今度こそ驚きを露わにし、瞳を揺らす。
それには、幾分かの喜びと戸惑い、そして迷いや疑いなど、様々な感情がないまぜになったようなもので、しかし、さっと視線を逸らす。
そしてやや沈黙があってから。
……ただの火事場泥棒というわけではないようだな。だが、我が蔵に侵入したのは事実。朱華家次期当主として、見逃すわけにはいかない
と言う。
しかし、殺気は収まっており、どちらかと言えば様子をうかがっているような雰囲気だ。
加えて、祈雨丸の言葉に苦々しくつぶやく。
……“火消し”などと。ふざけたことを……。戯れに付き合う暇はない
ほう…では
泥棒ではありませんと最初に断ったつもりでしたが……
と困りつつ
……蔵満祈雨、あなたの姉君から私の名を聞いてはいませんか?
と問うてみよう。
『きーやんの笑顔は破壊力あるからなぁ……』って舞台裏の火鼠が
『破壊力?そうね、あるわね』って斜歯のサイボーグが言ってますね
ほう、では
お前が……!
と何か合点がいった様子。同時に、ぐーっと顔をゆがめる。若干の敵意のような?
緋奈姉さまを……
たぶらかしている……!!
と、なんだか地を這うような声で……
たぶらかしてるwwwwwwwwごめん
ふふ
たぶらかしている…?
妙な認識だな、とこちらはとても困惑している……!
ごめんて(PL謝罪) 緋奈子ちゃん、彩緋ちゃんに何話したんだよぉ……!とんでもない誤解(真実)招いてるよぉ……!
誤解(真実)
『べ、別に変なことは言ってないし!? ただ、最近よく話すとかだけで……!!綾緋が勝手に勘違いしてるだけだから!!』
くっ……!やはり碌な男ではない……!人の家の蔵に勝手に入るなど……!!
とかブツブツ。しかし小さく息を吐いて、気を落ち着けてから低く問う。
……それで、その蔵満祈雨が何用だ
否、否。確かに私は……常に正しい人格であるとは到底言えない…いや、ええと、そうではなくて
とこちらもこちらですこしあわあわして
朱華の家で起きた出来事、緋奈子さんから伺いました。……私は、彼女に仕掛けられた誤解を解くために、そして彼女を救うために動いています。
この闖入には、謝罪いたしましょう。しかし、事件の足取りを追うには、舞扇についての情報が必要だったのです
我が血脈に誓って、盗みなどは働いておりませぬ。それでも疑うのであれば、どうぞお調べなさい
緋奈子ちゃんの心は盗んでますよ(??)
誤解、だと? 緋奈姉さまが儀を襲撃したのは確かな事実だ。このわたしを……
そこまで口にしてから、喉に痞えるように言葉に詰まった。そして俯き、呻く。
……いや、そんな……、緋奈姉さまに、あんなこと、できるはずは……でも……
緋奈姉さまがしたことは“この目で見たし、この体にも刻まれている”。それを誤解と言うなど、愚かにもほどがあるぞ
顔を上げてそう言い放つ。しかしその目は揺れていた。
それに、扇が何だと?……確かに朱華の家に継がれているものではあるが……、それに、残念だがここには扇はない。
そして息を吐き、続ける。
……いいだろう。これ以上お前自身について追及はしない。する暇もない。だが、これだけはいっておく。部外者が首を突っ込むな。これは我が家の、朱華の問題だ。“朱華だけ”でどうにかする
この目で見た…か。あの廻烏にも言いましたが、五感など宛てにならぬ災厄が既に我らを蝕んでいることを理解して頂きたいものですがね
と呟く。
幼くも猛き朱華の次期首魁よ、あなたは穏忍の……妖魔の術を前にしても、目で見た全てしか信じぬと申すか。たったそれだけの情報で、苦しむ愛しき者に、更なる苦を与えるというのか?
と、穏やかだった言葉が僅かに、
説教じみた…あるいは、諭すような、
力のこもったそれになる。そして
緋奈子さんは、この祈雨に助けを乞うた。ならば、それに応えずして……なにが友を名乗れよう
と、答えるぞ。彩緋ちゃんのそれは……例の呪いなのかな?
……っ!
言葉に詰まった。
そして痞えていたものを吐露するように、半ば泣き叫ぶように言う。
では、どうしろと!?
あの場面は皆が見ていた!
緋奈姉さまが炎を向け、舞扇を奪い……!!
でも、でも!わたしは信じられない!
そんなことできる人じゃない!
だからこそわたしが当主になったの!
優しい姉さまにそんなことをさせたくなかったから!
お前が……お前が、姉さまの友だと、言うのなら……
囁くように絞り出した。
姉さまを、助けて……
その言葉に、祈雨は目を細めて微笑む。
それは蔵満祈雨ではなく、祈雨丸、
あるいは祈雨昏水都早社宮司としての微笑み。
そして静かに囁く。
あの人は必ず救いましょう。それこそが祈雨の望み
ああ、人に願われたから、祈雨丸はそのために力を尽くすんだ……
神モードに入ってしまった……なんとなく……
ちょっと肩ゆさぶって『友!?友なの!?そうなのねぇ祈雨!?』ってしたいPL、でも『なにが友を名乗れよう』ってかっこいいと思うからまだ友で良いや()
ふふwwwww
その微笑みに綾緋は若干の安堵の色を浮かべる。
わずかに浮かんでいた涙を乱暴に拭って、当主の顔に戻った。
…………わたしは、次期当主として、姉さまを赦すことはできない。でも、きっと姉さまには何か事情があると思うから…。
急いでほしい。……今でこそ外には漏れていない筈だが、もし外部……特に廻鴉に嗅ぎつけられれば、ハグレモノの家を取り潰す口実にされかねない。それだけは、何としても避けなければ
おや……ではその言葉を聞き
……廻鴉?……(少し考え、言葉を選ぶ)……緋奈子さんは現状、朱華の謀叛者とされておりますが、まだ始末の依頼は出していないのですね?
安易に外部に漏らすわけにはいかない。それこそ隙になるし、それに……、まだ、わからない、から……
後半は、当主というよりも綾緋としての逡巡が感じ取れる。
だから、
まだ、朱華以外、誰もこの事実を知る筈がない