2020年?月?(?)7:09 AM



今日は変な夢も見なかったし、
なんの変哲も無い朝……になるハズだった。




ハルト

ん?

自室から出ようとした俺は、
急に妙な違和感を覚え、
ドアの前で棒立ちになった。

そしてフと視線を下ろしたとき、
足もとに1枚のトレカが
落ちていることに気がついた…。

ハルト

こりゃミチコのトレカだ。
一応、拾っておいてやるか。
やれやれ…。

とりあえずトレカをポケットに突っ込み、
俺は自室を出た。

ミチコ

…………。

ハルト

…………。

朝食の時間。
母ちゃんはテレビ、親父は新聞に夢中。
そんな中、俺と妹のミチコは、
訝しげな表情でお互いを凝視していた。

ミチコ

な、なによお兄ちゃん…。
人の顔じろじろ見て…。

ハルト

お、お前こそまじまじと…。
一体どうした?

ミチコはしばしの沈黙の後、ボソリと呟いた。

ミチコ

な、なんか…
既視感があるの

ハルト

きしかん?

ミチコ

うん…デジャヴってやつ?

ハルト

ほ、ほほ~~
…なるへそ。
それ聞いたことあるぞ。

ミチコ

も、もしかして
お兄ちゃんも!?

ハルト

いや俺は…
そ、その逆かも?

ミチコ

逆…? あ、ああ~、
もしや未視感…
“ジャメヴ”ってやつ?

ハルト

ん?写メブー??
…まぁよく知らんが、
なんとなく違和感感じるんだよ。
その…家の間取りに。

ミチコ

間取りに違和感!?

ハルト

あ、ああ…
それで、実はお前の顔にも
ちと違和感が…

ミチコ

なんですって!!!

ミチコは鬼の形相で前に乗り出してきた。
俺は慌てて言い訳。

ハルト

いやなんでもありません!!!
そんなに美人だったっけと
思っただけであります!!!

ミチコ

え!!!!!

ハルト

は…はははは!あ、そうだ!
ト、トレカ1枚落ちてましたぜ旦那…!

俺は素早く、
さっき自室で拾ったトレカを妹の目の前に置いた。

ミチコ

あ…ああ…
これデジャヴだ

ハルト

ん?
これってデジャブっていう
カード名なのか?
…随分タイムリーだなぁ。

ミチコ

ううん…そうじゃなくて、
今もの凄い既視感増したの…
怖いくらいに…
い、一体なんなの…?

ハルト

…う、う~ん、ま、人生なんて
深く考えるだけ
大抵取り越し苦労だ。
あんま思い詰めんの止めようぜ~。
じゃ、学校行ってくら。

とりあえず俺は、
電気あんま食らわなくて良かったと思い、
家を出た。

学校に到着し正門を通過した瞬間、
チャイムがけたたましく鳴り、
友人のユウタが焦った表情で俺を見た。

ユウタ

お、おい、
本鈴鳴ったぞ。

ハルト

やべーなオイ。
一限目おっかない英語教師だよ。
さっさと校舎に入ろうぜ。

俺らは足早に校舎に入り、上履きに履き替えた。
そして5メートルくらい歩を進めた…その時。

ユウタ

お~いハルト?
何処行く気だ~?

ハルト

…何処って、教室だよ。

ユウタ

…おいおい
オレらの教室は一階か?

ハルト

……。

ハルト

……そ、そうだな。
一階じゃぁないよな。
何やってんだオレ…?
……で、でも。

それでも脳内の3割くらいは一階だった気がしてる。

ユウタ

…3割?
はっはっは、面白い。
じゃぁその3割の思い出
ここでジックリ
聞かせてくれない?
どうせもう遅刻だしさ~。

ハルト

いや…具体的にはどうも…
ただ感覚的には…

ユウタ

ほ…本気かハルト!?
お、おまえ病気じゃ…。

ハルト

…だ、大丈夫大丈夫!
細かいこと気にすんのヤメヤメ!
さ、三階までレッツラゴー!

ユウタ

…二階だよ教室は。

ハルト

……へ?

その瞬間、自分じゃ到底制御できない何かが
俺の中で…いや外で…?起きていると思った。

しかし考えてみれば人生この方、
何かを上手くコントロールできた試しなんて
殆ど無い。

こんな時は、誰か凄い奴にでも
なんとかしてもらおう。
学校の先生?お医者さんか??

いや、こんな時は大抵……。

ミハネ

ハルト、どうしたの?
さ、教室はこっちよ。

ハルト

あ、あら?
ミハネも遅刻か?

ミハネ

なんか迎えに来た方がいい気がして。
ハルト、ちゃんと歯を磨いてきた?
教科書は持ってる?

ハルト

あ、あはははは…
ってオイ!

ユウタ

プフッ…。





次回へつづく。

番外編「デジャヴとジャメヴの狭間で」

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