理事長(兼校長)

ミハネくん、
それはお父さんの影響かね…?

ミハネ

…はい?















理事長(兼校長)

君のお父さんは日本でも指折りの
SF作家だ…。
発表した作品は尽く大ヒット。
数多くの文学賞も受賞している。

ミハネ

…それがなにか?

理事長(兼校長)

そしてお母さんは、
資産家のご息女だったね。
…キミは裕福な家庭に、
容姿、才能、頭脳に恵まれた
前途有望な生徒だ。
しかし私が何より評価していたのは、
高い規範意識…。
キミには良き模範生となって
欲しかったのだよ。

ミハネ

ご期待に添えず、
ガッカリさせてしまいましたか?

理事長(兼校長)

…変な噂が立っても困るのでね。
思想信条の自由は尊重するが、
校内の秩序を乱すような行動は
是非とも慎んで貰いたい。
それができないなら、
残念ながらキミの2期目は……。

ミハネ

仰りたいことは分かりました。
では、失礼します。

2020年4月27日(月) 7:14 AM

ハルト

んん………?
こりゃ、なんだ?

ハルト

いや~はっはっは…。
この、いかにも別れました~
みたいなイメージはなに?
なんか心がやたら
ザワつくんですけど…。
単なる夢?そ、それとも…

俺はすかさずベッドから飛び起き、
ミハネに連絡するために、スマホを探した。


しかし………。

ハルト

な、ない…
こういう時に限ってない…
一体誰のせいだ!?
俺か!!まったく~~~

…床に這いつくばり、ベッドの下を探っていたら、
背後でカチャリとドアが開く音が聞こえた。

ミチコ

お兄ちゃん
朝っぱらから
なにやってるの?
モグラごっこ?

ハルト

ミ、ミチコ……。
俺のスマホ見てないか?

ミチコ

まぁた無くしたの?
いい加減そのだらしない性格
なんとかしたら?
…まぁ、それよりねぇ

妹のミチコ(15)は、
トレカデッキケースをベッドの上に置いた。

ハルト

ん?自作トレカか?
好きだねお前も

ミチコ

まぁね
トレカ作りって心が和むの。
世界にたった一つだけの
完全オリジナルデザインよ。

ミチコ

この新作4枚の
感想ちょうだいな

ミチコが見せたのは、
この前ミハネが黒板に描いたそれだった。

ハルト

オ…オイオイ
妹にまで伝播してるって
一体どういう…

ミチコ

お兄ちゃん?

ハルト

ミ、ミチコ……。
悪いことは言わん、
このイラストはやめとけ。

ミチコ

は!?

ハルト

特にこの剣のヤツはな……
三バカトリオしか思い出さん。

ミチコ

な、なによソレ!!
失礼ね!!

ハルト

お…落ち着けっ
い、いやその…こ、これは
既に存在するから……!

ミチコ

わ、わわわたしはパクりなんか
してないわよ!
ど、どこのどいつの作品と
同じなのか言ってみなさいよ!

ハルト

い、いやあの・・・
未来、らしいぞ??

ミチコは鬼の形相で俺に電気あんまを食らわせた。

ハルト

うぎゃ~~ひゃっひゃっひゃ!
す、すまんかった!
創作意欲削ぐようなこと
ばかり言って!
いまの無し!!取り消します!!

ミチコ

あっったりまえでしょーーー!!
妹をからかうんじゃないわよ!!

電気あんまの刺激のせいか、
さっきまで何を悩んでたのか
サッパリ忘れてしまった。

ハルト

と…とりあえず、
学校行ってきます。

朝っぱらからキョーレツなの食らって
ライフゼロ……。

回復するには…多分あれしかない。
一日に一度だけ拝めるあの特別な……。

ミハネ

おはようございます!!

ハルト

お、おう!
おはよっ
毎朝よくやるな!

ユウタ

おはよう
ミハネちゃん

生徒会役員による朝のあいさつ運動……。

これのせいで、ミハネのギャップにやられた
男子生徒が多いんだなぁ~

まったく、よくもこうコロリと表情を
変えられるもんだ……。

ユウタ

ププッ
嬉しいくせに。

ハルト

な、ななななにがっ

教室に入ると、
黒板の周辺に人だかりができていて、
女子生徒1人が泣いている。

…と、黒板に描かれた絵が視界に入った。

ハルト

……………。
や、やべぇ…こ、これって、
今朝見たやつに似てるわ。
描いたのは…ミハネか?

モチヅキ

こ、これを今朝見たの。
見た直後にフラれて……グスンッ
…へ、下手でごめん。
て、手が震えてその…。

ワタノハラ

い、いいのよ。
よく描けてる。

ヤマシタ

あ、あわわわ…
臨兵闘者皆陣烈在前…
生徒会長よ、去れぇ!

アリハラ

か…神楽塚さん…
あ、あなた、恐ろしすぎるわ。
まるで脳内潜入されてる気分よ…

ニシダ

ゴキュッ…

その時、ミハネが教室に入ってきた。
見慣れたクールな表情で……。

ミハネ

………。

ヤマシタ

ひっ…!

ハルト

お、おいミハネ…!
このイメージは
なんのつもりで送った!?

モチヅキ

そ…そうよ。
なんのつもりなの…?
一体わたしに
何の恨みがあって…。

ミハネ

…わたしは
何も送ってないわよ。

ハルト

え、ええ?!

モチヅキ

う…嘘!

ミハネは目を見開き、
ゆっくりと俺たちを見回した。

ミハネ

…そうだ。一つ教えておくけど、
私はこの前、並行世界から受信した
情報をあなたたちの
ハイヤーセルフに転送しただけよ。

アリハラ

は!?

ミハネ

実際にあなたたちに絵を見せたのは、
ハイヤーセルフの裁量なの。
おそらく、今回彼女に見せたものも
ハイヤーセルフからの
重要なメッセージでしょう。

ハルト

んん??
ハイヤーサービスがなんだって?
いきなり専門用語言われても
わかりませんわ先生。

ミハネ

フフ…昨日もそんなこと言ってたわね

ハルト

昨日?
んなこと言った覚えないぞ?

ミハネ

あら、そう。
まぁ気にしないで。
真実は無数にあるから。

ハルト

…………。

ミハネ

さて、
これから選挙活動が始まるわ。
気合い入れよっと。

ユウタ

おお…?
ミ、ミハネちゃんの
今日2回目の微笑みだ。
珍しい…。

ミハネ

私も本気だから…。
1つのあり方に固執しないで、
これから、どんどん自分を
アップデートしていくんだ。

ハルト

……???

モチヅキ

……???

ミハネは窓に映るレンズ雲を見つめ、
大きく息を吐いた。

すると……次の瞬間。

キィ…キィイイイイイイン 
キィ…キィイイイイイイイン

どこからともなく
金属を擦りあわすような音が響いてきた。

ハルト

な、なんだ?
誰かが近くでブランコ漕いでるぞ。

ユウタ

あ、ありえないでしょ。
これは何処か工事現場の…。

ニシダ

い、いや、
なんか空全体から
響いてる気がするっす。

キィ、キィイイイイイ
ビウォオオオオオオオン
ボコボコボコボコボコ

ハルト

な、なんか
やばくね?

ワタノハラ

な…なにこれ…怖い…

ヤマシタ

ま…まさか
こ、これは…!

ミハネ

……





次回へつづく。











第2話「追いつけない気持ち」

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