ミハネくん、
それはお父さんの影響かね…?
…はい?
君のお父さんは日本でも指折りの
SF作家だ…。
発表した作品は尽く大ヒット。
数多くの文学賞も受賞している。
…それがなにか?
そしてお母さんは、
資産家のご息女だったね。
…キミは裕福な家庭に、
容姿、才能、頭脳に恵まれた
前途有望な生徒だ。
しかし私が何より評価していたのは、
高い規範意識…。
キミには良き模範生となって
欲しかったのだよ。
ご期待に添えず、
ガッカリさせてしまいましたか?
…変な噂が立っても困るのでね。
思想信条の自由は尊重するが、
校内の秩序を乱すような行動は
是非とも慎んで貰いたい。
それができないなら、
残念ながらキミの2期目は……。
仰りたいことは分かりました。
では、失礼します。
2020年4月27日(月) 7:14 AM
んん………?
こりゃ、なんだ?
いや~はっはっは…。
この、いかにも別れました~
みたいなイメージはなに?
なんか心がやたら
ザワつくんですけど…。
単なる夢?そ、それとも…
俺はすかさずベッドから飛び起き、
ミハネに連絡するために、スマホを探した。
しかし………。
な、ない…
こういう時に限ってない…
一体誰のせいだ!?
俺か!!まったく~~~
…床に這いつくばり、ベッドの下を探っていたら、
背後でカチャリとドアが開く音が聞こえた。
お兄ちゃん
朝っぱらから
なにやってるの?
モグラごっこ?
ミ、ミチコ……。
俺のスマホ見てないか?
まぁた無くしたの?
いい加減そのだらしない性格
なんとかしたら?
…まぁ、それよりねぇ
妹のミチコ(15)は、
トレカデッキケースをベッドの上に置いた。
ん?自作トレカか?
好きだねお前も
まぁね
トレカ作りって心が和むの。
世界にたった一つだけの
完全オリジナルデザインよ。
この新作4枚の
感想ちょうだいな
ミチコが見せたのは、
この前ミハネが黒板に描いたそれだった。
オ…オイオイ
妹にまで伝播してるって
一体どういう…
お兄ちゃん?
ミ、ミチコ……。
悪いことは言わん、
このイラストはやめとけ。
は!?
特にこの剣のヤツはな……
三バカトリオしか思い出さん。
な、なによソレ!!
失礼ね!!
お…落ち着けっ
い、いやその…こ、これは
既に存在するから……!
わ、わわわたしはパクりなんか
してないわよ!
ど、どこのどいつの作品と
同じなのか言ってみなさいよ!
い、いやあの・・・
未来、らしいぞ??
ミチコは鬼の形相で俺に電気あんまを食らわせた。
うぎゃ~~ひゃっひゃっひゃ!
す、すまんかった!
創作意欲削ぐようなこと
ばかり言って!
いまの無し!!取り消します!!
あっったりまえでしょーーー!!
妹をからかうんじゃないわよ!!
電気あんまの刺激のせいか、
さっきまで何を悩んでたのか
サッパリ忘れてしまった。
と…とりあえず、
学校行ってきます。
朝っぱらからキョーレツなの食らって
ライフゼロ……。
回復するには…多分あれしかない。
一日に一度だけ拝めるあの特別な……。
おはようございます!!
お、おう!
おはよっ
毎朝よくやるな!
おはよう
ミハネちゃん
生徒会役員による朝のあいさつ運動……。
これのせいで、ミハネのギャップにやられた
男子生徒が多いんだなぁ~
まったく、よくもこうコロリと表情を
変えられるもんだ……。
ププッ
嬉しいくせに。
な、ななななにがっ
教室に入ると、
黒板の周辺に人だかりができていて、
女子生徒1人が泣いている。
…と、黒板に描かれた絵が視界に入った。
……………。
や、やべぇ…こ、これって、
今朝見たやつに似てるわ。
描いたのは…ミハネか?
こ、これを今朝見たの。
見た直後にフラれて……グスンッ
…へ、下手でごめん。
て、手が震えてその…。
い、いいのよ。
よく描けてる。
あ、あわわわ…
臨兵闘者皆陣烈在前…
生徒会長よ、去れぇ!
か…神楽塚さん…
あ、あなた、恐ろしすぎるわ。
まるで脳内潜入されてる気分よ…
ゴキュッ…
その時、ミハネが教室に入ってきた。
見慣れたクールな表情で……。
………。
ひっ…!
お、おいミハネ…!
このイメージは
なんのつもりで送った!?
そ…そうよ。
なんのつもりなの…?
一体わたしに
何の恨みがあって…。
…わたしは
何も送ってないわよ。
え、ええ?!
う…嘘!
ミハネは目を見開き、
ゆっくりと俺たちを見回した。
…そうだ。一つ教えておくけど、
私はこの前、並行世界から受信した
情報をあなたたちの
ハイヤーセルフに転送しただけよ。
は!?
実際にあなたたちに絵を見せたのは、
ハイヤーセルフの裁量なの。
おそらく、今回彼女に見せたものも
ハイヤーセルフからの
重要なメッセージでしょう。
んん??
ハイヤーサービスがなんだって?
いきなり専門用語言われても
わかりませんわ先生。
フフ…昨日もそんなこと言ってたわね
昨日?
んなこと言った覚えないぞ?
あら、そう。
まぁ気にしないで。
真実は無数にあるから。
…………。
さて、
これから選挙活動が始まるわ。
気合い入れよっと。
おお…?
ミ、ミハネちゃんの
今日2回目の微笑みだ。
珍しい…。
私も本気だから…。
1つのあり方に固執しないで、
これから、どんどん自分を
アップデートしていくんだ。
……???
……???
ミハネは窓に映るレンズ雲を見つめ、
大きく息を吐いた。
すると……次の瞬間。
キィ…キィイイイイイイン
キィ…キィイイイイイイイン
どこからともなく
金属を擦りあわすような音が響いてきた。
な、なんだ?
誰かが近くでブランコ漕いでるぞ。
あ、ありえないでしょ。
これは何処か工事現場の…。
い、いや、
なんか空全体から
響いてる気がするっす。
キィ、キィイイイイイ
ビウォオオオオオオオン
ボコボコボコボコボコ
な、なんか
やばくね?
な…なにこれ…怖い…
ま…まさか
こ、これは…!
……
次回へつづく。
ナンチャイさんありがとうござます!
とても嬉しいです!
これからも楽しんで頂けるよう頑張りたいと思います。
イラストは絵師様に描いていただいています、素敵ですよね(*^_^*)