お疲れ様です、ユウトくん

いのり……待っていてくれたのか

教室、入りませんか？

はい、どうぞ

缶ジュース？

はい、さっき皆さんとはお疲れ様の乾杯をしたのですが

ユウトくんとは、まだですので

お疲れ様です

お、お疲れ様

ユウトくん、ありがとうございます

え？

私をアイドルにしてくれました

それは、いのりが頑張ったからで

ユウトくんがいなければ頑張れなかったと思います

私は地味で根暗な女の子でしたから

この声のことで苛められたこともありました

変な声だってバカにされていました

そんなこともあって、歌うことは好きだけど、人前では歌うことができませんでした

みことちゃんみたいになりたいって思ってはいても、その為の行動を何もしていませんでした

ユウトくんとの出会いが、私の背中を押してくれたのです

多分、私は………ユウトくんのこと好きなのかもしれません

！

一目惚れ……ってやつですかね

………

来須いのりさん

はい？　何でしょうか

オレの方が、先に一目惚れしていたよ

オレがあそこに来たのは、君の歌声に導かれたからだ

オレがしばらく呆けて君を見ていたのは、ただ見惚れていただけ

苦手なダンスを頑張る姿を見ていたら放っておけなくなった

君が傷つけられたと知ったとき、怒りをどこにぶつければ良いのかわからなかった

君を手放したくないと思うようになった

そして、アイドルになった君の輝きを見て、惚れ直したところだ

私がアイドルになったのは一時の夢です

魔法が溶けた私は地味な来須いのりに戻りました

いのりはアイドルの仕事には興味ないのか？

みことの事務所の人たちが君の歌を聴いて、話しだけでもって

君は注目されているんだよ

私みたいな地味な子がアイドルなんて、おこがましいですよ

このステージを見て、地味な子とは誰も思わないさ

とても輝いていた

ユウトくんは？　どうするのですか

………オレはダンサーを目指そうと思う

素敵な夢です。頑張ってください

踊っているユウトくん、恰好良いですから

当たり前だろ？

それで、本物のアイドルになってみないか？

無理です

歌うことは好きですが、それとアイドルになることは別ですよ

だ、だって、アイドルって恋愛禁止じゃないですか？

！

好きな人に、好きと伝えられないのは嫌です

………

いのりは可愛いな

私は、真面目に話しているのですよ

オレはアイドルとして輝く君をもっと見たい

でも、毎日君に好きだと囁きたい

私がアイドルの道を選んだらそれは難しいです

方法ならあるよ

何だ、この声は

掃除用具入れから何かが

君たちの悩みを解決する方法ならあるぞ

そんなところで、盗み聞きしていたのかよ

成神くんが、いのりんを押し倒さないか心配でね

…………押し倒す？　それも悪くないな

おいおい、冗談だろな

もちろん、冗談だって

その方法というのは？

いのり、もう少し驚いたらどうなんだ。ずっと、この人たちいたんだぞ

そうですよね、驚きました

いのりん、最初に我々はみことCGを作成して、それに合わせていのりんが歌う方法を考えていたよな

はい

声優さんがアフレコするみたいに……でしたよね

それと似たようなものだ

バーチャルアイドルだよ

え？

もちろんバーチャルアイドルは恋愛禁止。だけど、いのりんは中の人になるだけだから恋愛禁止にはならないだろ？

人前に立って何かすることはないよ。バーチャルアイドルを通してだからね

もちろん収録現場では他の出演者と顔を合わせる。だが生身の君が大勢の前や画面に露出することはない

声優さんだって、テレビで顔出ししているのは一部だろ？

それなら、恥ずかしくないかもしれません

なるほど、事務所に相談してみるよ

いのりはダンスは下手だけど、歌唱力のレベルは高い。何より努力家で頑張り屋だ

きっと、素敵なアイドルになれるよ

あれ？　このままだと私、アイドルになる流れでは？

ゲーム同好会にとって、いのりんは既にアイドルだぞ

アイドル研究会のメンバーもいのりんを我らのアイドルと認めているよ

いのりんのバックアップ部隊、及び親衛隊はたくさんいるから心配するなよ

いのりんの親友ちゃんが、「組の若いのに護衛させるわ」とか何だか怖いこと言っていたし、在学中のいのりんの身の安全は保障されてるよ

いのり、大事なことはひとつだけだ

いのりをアイドルにするのは、オレだ

まずは、オレの為の、アイドルになるんだよ

いのりの歌声でオレは踊る……だから

オレを好きになってください。君が好きで好きで仕方ないオレを

この気持ちが、オレを次のステージに連れて行ってくれる

…………はい

好きになりましたよ

私を次のステージに連れて行ってください、ユウトくん

では、誓いの口づけを

え

お前たちの前でかよ

既成事実見せつけてもらわないと、手出したくなるだろ

手出すなよ

……じゃなくて……生徒会長から清く正しいキスをさせよと言われている

生徒会長の差し金かよ

目を閉じているから早く済ませて

ああ………やりにくい

そ、そういえば、皆さんは気付いていました？

いのり、雰囲気ぶち壊すなよ

だって、キスなんて恥ずかしいですから。恥ずかしくて倒れちゃいますよ。それより、ユウトくんに言わないといけないこと思い出しました

キスより大事なことって？

カーテンコールで挨拶をしているときですけど………

みことちゃんCGの目から涙が流れたんです

そんな機能は付けていないし、カテコのときは何の操作もしていなかったぞ

じゃあ、きっと、それは………

………みことが泣いていた

がんばれ　ユウト！

私の弟は最高のダンサーだよ

私もそう思います。成長したユウトくんを見て感動していたのですよ

そうかな？……だとすれば、嬉しいよ

えへへ、

じゃあ帰りましょうか

いのり、目を閉じて

オレの気持ちは高まっているんだ。キスをお預けなんて、嫌だからな

やっぱり、皆さんの前でやるのですね

見てないから、安心して

背中向けてるから、安心して

ほら、邪魔者はいないから、目を閉じて

……は、はい

そんなに緊張しなくても良いよ

オレは優しいからさ

次は……お、初登場ですね

はじめましてー

バーチャルアイドルのＩＮＯＲＩさんです

緊張しているね、ところで、髪どこで切ってるの？

バーチャル美容師さんにカットしてもらいました

似合ってるね……

ダンサーのユウトも初登場だ
今回の新曲の振り付けと作詞作曲も担当したとか、凄いね

はじめまして、色々やってみたかったのですよ。皆さん、楽しんで聴いてくださいね

見どころはバーチャルアイドルとの絡みとか

では、そろそろ曲の準備を

はい

はい、がんばります

おやおや、本当に手をつないでいるように見えますね

みなさん、よろしくお願いします