2023年某日
くすのき園
2023年某日
くすのき園
アタシは……アタシは……。
流石だな。
もう少し手こずると思っていたが。
ん……。
あ……。
わ……
若親分!
なんだ、グラビティ・ミストか。
なんだとは挨拶だな。
ヴァニラ・キャンディ。
顔色がすぐれないようだが
どうかしたか?
別にぃ。
手駒の心配するとか、
アンタらしくないな。
おいおい、勘弁してくれよ。
これでも俺はオマエらの
母親役なんだぜ?
かわいい我が子の心配ぐらいするってもんだろ。
……ふん。
かわいい我が子なら、ホイホイ死地に向かわせんじゃねーよ。
言ってくれるねぇ。
それこそ親心ってもんさ。
獅子は我が子を千尋の谷に落とすって言うだろ。
よく言うぜ。
一体それで何人のヤツが帰ってきたんだ?
俺の目の前にいるヤツぐらいだな。
チッ。
まあいい。
今日はオマエと喧嘩をしに来たわけじゃない。
アタシの仕事っぷりが
信用できなかったって?
そう噛み付くなって。
オマエの仕事は信頼しているさ。
俺は事後処理に来ただけだ。
事後処理だと?
ああ、そうさ。
事あるごとに仏さんをポンポン作り出してたら、次第に騒ぎになるからな。
仏さんをなかったコトにする作業だ。
おおかたコンクリート詰めにでもして、ニュー神代港に沈めるんだろ。
仏さんを物理的に消すには
それも選択肢の一つだ。
有効利用が最も望ましいけどな。
じゃあどうするっていうんだ?
どうするっていうか、なぁ……。
論理的な消去をしなければ社会的に問題が出るってことだ。
……論理的な……消去?
あぁ。そうさ。
仏さんには、仏さんを知るもの達がいる。そいつらの記憶がある以上、いつしか仏さんへとたどり着く。
その綻びこそが、いつの世でも悪いヤツがのさばりきれない原因だ。
自分たちが悪いヤツって認識はあるんだな。
ああ、当たり前さ。
そこがブレたら、
求心力がなくなっちまうわ。
脱線したな。
仏さんを論理的に消去するためには
社会的な関係性すべてを網羅し、
錯覚させる必要がある。
そこで……。
仏さんの人脈……家族構成……
ありとあらゆる関わりを
クシナダの技術力を以って、
別人へと置き換えるのだ。
それが……
『とりかえばや』だ。
とりかえ……ばや……?
まあ、オマエやオマエの連れも関係性を持ってしまったからな。
『とりかえばや』の影響は避けられないが、勘弁してくれよ。
ちょっと待て!
何をする気だ、グラビティ・ミスト!
ん?
俺たちもなんか関係あるのか?
なあに、ちょっとボーッとするだけだ。
うぅ……これは……
とりかえばや第一章
うう……。
この感じ……どこかで……
雲散霧消《ロスト》
うわあぁぁぁぁ!!
とりかえばや
つづく