突然現れた青白い男はハル達の前に姿を晒す。
シンプルな黒のローブに身を包み、目元を隠す布がある為、表情は口元でしか捉えることが出来ない。異様ではあるが、ハル達を襲った未知の状況に対して、何かしら知っているようでもあった。
アエラスの密度が
加速度的に高マって
暴発しタのダ。
突然現れた青白い男はハル達の前に姿を晒す。
シンプルな黒のローブに身を包み、目元を隠す布がある為、表情は口元でしか捉えることが出来ない。異様ではあるが、ハル達を襲った未知の状況に対して、何かしら知っているようでもあった。
アエラス?
暴発?
そもそも貴方は誰?
我ガ名はリザ。
パトリダの調和ヲ乱す者に
会イに来タ。
パトリダ?
……の調和?
え~っとリザさんって
言うんすね。
何かさっきの黒いの
知ってるんすか?
ユデアの子らヨ。
アエラスの循環を
軽視スる暴挙に、
無知とイう言い訳でハ
許されンゾ。
ユデアの子!?
えっ?
一体貴方は……
おいおい、
さっきからおめぇが
何言ってるか分かんねぇぞ。
そもそもこんなとこで
一人で何してたんだ?
お前でハない。
そコノお前だ。
近付こうとしたダナンには一瞥もくれず、リザが指示した者――それはロココだった。
え!?
ぼ、僕のこと!?
おいテメーさっきから
ウゼーっつーの。
喋んならそのうっとおしいのを
御開帳しろよ。
リザとロココの間に歩を進め、好戦的な姿勢をとるランディ。話の通じぬリザに苛立ちを感じるのは自然と言える事だった。
静マれ。
グッ!!
動けねぇ!
な、何を……
グ……グ、グギギ、
何で動けないんすか?
貴方と敵対
したいわけじゃないわ。
貴方が何を言いたいかが
私達には理解出来ないの!
リザに不思議な力を使われ身体が動かないユフィは、唯一動く口で訴える。
リザはユフィに顔を向けぬまま前進する。そう、ロココに向かって。
おいっ!
やめろ!!
こっちこいコラァ!
貴方の要求は何?
私達は出来る限り
それに応えるつもりよ。
ダナンの言葉には反応しなかったリザだが、ユフィの要求という言葉に明らかに反応した。そしてそれにはっきりと答えた。
この者の命ダ。
アルパガスに容赦はセん。
!!
何言ってるか
分かんないっすけど
アンタがロココを
狙ってるんなら、
大人しくしてないっすよ。
ンギギギ
愚か者ガ。
力で何トか出来るもノか。
グギギギギ!
!?
う、
ごけぇっ!!
馬鹿ナ!
我が呪縛かラ自力で
脱すル者が!?
ウギャア!!
なっ!!
何だこりゃ!?
金縛りはとけたが
ガハッ!
息……苦し……
ハァッ、ハァ、
ま、まずい……
アエラスを変質さセタ。
お前達には有害デしかない。
時間が経テば充分、
致死量ニなる。
毒みたいなもんかよ
チ、クショー。
身体中を束縛していたリザの言う呪縛は解けたが、その代わり毒素のようなものが全員を襲う。
立っているどころか、息をするのも一苦労する状態。身体中の痛みと吐き気、目眩、痙攣、脱力が次々と襲ってくる。
ハルが先程の呪縛を解きかけたが、それをきっかけにリザはこの呪縛を変質させたらしい。
ア、アガ……
ハ……
流石のお前モ
これではドうすル事も出来まイ。
身体全体を蝕む病があるとするなら、この痛みと同じぐらいだろうか。オルビストの黒い気が精神的な蝕みだとしたら、今は物理的な蝕み。焼け焦げるような体内からの痛みが間断なく襲ってくる。
さ、せな……
い、す……よ!
全員がうずくまる中、ハルだけが膝を付き立ち上がろうとする。
顔面蒼白だが、リザに抗する意思だけは燃え盛るようだ。
頑丈さダけは
認めてやロう。
だがそれでは我には
追い付けまイ。
リザはハルを横目に、ロココの眼前まで進もうとする。ふらふらで気力も尽きかけているハルなど鼻で笑うかのように足取りは涼やかだ。
ハルは刀の射程距離を横切るリザを瞳に写し、大きく呼吸をする。肺に腐臭のする煙を入れられたと錯覚するくらい気持ちが悪い。身体中には鋭い痛覚が走っている。
「自分が止めなきゃ、ロココがやられるっす!」
突然ハルはそう想像した。そんな未来が訪れ、不甲斐ない自分を殺したくなるほどの後悔に押し潰されるビジョンが見えた。
「嫌っす…………
そんなこと! 絶対に!」
その時のハルは痛みを感じていなかった。鬼義理の柄に手を掛け、無心に抜刀していた。