2025年4月14日(月)
15:12 PM















* * *
ウォータフロント区
センター3-4
* * *

























佐藤先生

ちょっとお茶入れてくるわね。

どうぞ、お構いなく。

佐藤先生

あらぁ、素敵な受け答えができるようになったのねぇ。もうすっかり大人ね。

え……。

そうか……。
奥様との日々の会話で
すっかり敬語が板についちまったな……。

そんな事ないですよ、
まだまだ未熟者です。

佐藤先生

またまた、謙遜までしちゃってぇ。

佐藤先生

学校ではみんなに頼られる存在なんじゃない?

みんなに……頼られる……。























姐さん!ご機嫌いかがですか!

足元気をつけろよ、お嬢!

姉貴、聞いてくれ!
うちの猫が赤ん坊生んだんだ!

姉御、また空蝉見せてくれよ!

さすが姉御!
目にも留まらぬ早わざだぜ!

























いえ……。

……本当に……未熟なんです。

佐藤先生

あら、ゴメンなさい。
悪いこと聞いたみたいね……。

いえ、いいんです先生。

佐藤先生

あかねちゃん、コーヒーには砂糖入れる人?

はい。

佐藤先生

えーっと、さとうさとう……。

佐藤先生

あらー、どこ行ったかしら……。






キッチンの中を探す女性を見ながら



少女は先程のことを思い返していた。




あの時の……

あれは、いったい何だったんだろうか。





















2025年4月14日(月)
14:31 PM




























押せー!!!













少女の指がインターホンに触れんがその時。


























ーーダメだ、姉御!  
その先に
   未来はない!ーー















は!?













今の声は……いったい……。














……。

……冷静になれ、茜。

クシナダの本当の目的もまだ分からないのに負うリスクじゃない。

一旦ここを離れよう。

ウォータフロント区、か……。

尾行をされているフシもないし、さとう先生の家でも行ってみるか。































あれは幻聴とかじゃない。

それこそ通信の一種のような、明晰なものだった。

クシナダの新技術と考えればわからなくもない……が……。

クシナダの手の者がそんな事をするか?
……全く検討がつかない。

佐藤先生

おまたせー。





快活な女性は


キッチンから


コーヒーカップを二脚持ってきた。



漂う豊穣な香りが


少女の心を落ち着かせる。

ありがとうございます、先生。

ズッ……

……おいしい。

佐藤先生

良かったぁ。酸味の強い豆だからどうかと思ったんだけど……。

ふふふ……。





コーヒーを一口すすり



一息ついたその時、



少女の目の端に気になるものが映った。











それは



テーブルの上に置かれた



1冊のアルバム。


先生、あのアルバムって……。

佐藤先生

そうそう、くすのき園で撮った写真よー。今日あかねちゃんに会って、懐かしくなって引っ張り出してきたの。

佐藤先生

あかねちゃんもさっくんも映ってたわよ。

!!!

もしかすると、だいちゃんの写真もあるということでは?

佐藤先生

ほら、これ、みんなで神代港に遠足に行った時の写真!

佐藤先生

ホント、ちっちゃかったわねー。

佐藤先生

ほら、これ。



そう言って女性は写真の中を指さした。


そこにはポニーテールの幼児の姿があった。









これ、あかねちゃんよね。

うっわー……。
ちっちゃい時のアタシ、こんな顔してたんだ―。

写真なんて全く見たことなかったもんなぁ……。

で、これがさっくん。

この顔はよく覚えてる。
アタシや大ちゃんと一緒にいたさっくんだ。



女性は順繰りに写真の中の子供を紹介していく。



少女はおぼろげな記憶を掘り返しては



その思い出を結びつけていった。

この子はゆえちゃんだったかな?

ゆえちゃん……?
いたような気はするけど、あまり覚えてないなぁ……。

で、この子が……

だいちゃん!





今まで想いを寄せていた懐かしいその顔に


少女は思わず声を上げた。










佐藤先生

え?
この子があかねちゃんの言う
だいちゃんなの?

そうです、先生!

佐藤先生

あー、なるほど……。
私はゆうくんって呼んでたから
思い当たらなかったのかー……。

え?

だいちゃんじゃない?

もしかして、アタシはずっと間違えて……?

佐藤先生

そんな事はないわ。
あかねちゃんも間違っていない。

どういう事ですか、先生。





首をかしげる少女に


女性は言った。



佐藤先生

この子はゆうくんであり、だいちゃんでもあったのよ。

ゆうくんでもあり……、
だいちゃんでもある……?


























……ああ、繋がった。






















思い出の中の彼

つづく

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