ハロルド

アヤを、殺す…どうして…?
あの後、すぐに追い出されて理由を聞けなかった…

チャールズ

ハロルド

ハロルド

…父様

チャールズ

10歳おめでとう、愛しい息子よ

ハロルド

あ、ありがとうございます!

ハロルド

…そういえば、殺すとなると、圧倒的に難しいのが父様だ。だって…

ハロルド

盗聴器…いったい誰が仕掛けているんだろう…

ケヴィン

やあハロルド、そんな顔してどうしたんだ?

ハロルド

そういえば、兄さんは俺がどんな動物をこっそり飼おうと、すぐに見つけ出して始末した…まさか…

ハロルド

に、兄さん、あの…

ケヴィン

なんだい?弱みでも握りたいのかい?

ハロルド

ち、違う…昨日のことなんだけど…

ケヴィン

ああ、あれのことか

ハロルド

やっぱり…

ケヴィン

お父様が手紙を寄越した事だろう?一応お前当てにも来ていたよ。隠そうと思っていたが、やっぱり知ってたのか

ハロルド

あ、あれ…?

ケヴィン

…チッ
ほら、これだ。受け取りなよ…
流石に中身までは見てないからさ

ハロルド

あ…ありが…とう…

ケヴィン

お父様も変だよな?大至急で手紙を寄越したって聞いたのに、書いてあるのは日常の事ばかりだった

ハロルド

な、なんでだろう…な…

ケヴィン

「息子二人が寂しがってないかと思って」って…まあ、今までそういうことはたまに言ってきたけどさ、手紙は初めてだ。よっぽど心配性なんだね

ハロルド

ケヴィン

…何してるんだ?さっさと開けなよ

ハロルド

えっ…

ケヴィン

なんだ?お父様の手紙を読まないつもりか?

ハロルド

ち、違う…!わかってる…今読むよ…

恐る恐る封を切った。
兄さんはずっとこっちを見ている。
どうせ今見せなくても、あとで盗み見られるだけだ。

ハロルド

”親愛なる我が息子ハロルドへ―”


兄さんに聞こえるよう、小さな声で音読した。

ハロルド

”長く家を空けるから、寂しがってないかと心配です。
さて…この手紙を書いたのは他でもない、君のためだハロルド。
私は君を…”

ハロルド

”…正式な跡継ぎにしようと思う”

ケヴィン

なん…だって…?

ハロルド

”君は聡明で、何より伸びしろがある。そういう点でケヴィンよりも相応しいと判断した。考えておいてくれ。
              父より”

ケヴィン

………ありえない、絶対にありえない!
僕は今まで何一つ間違った選択なんてしていない!お父様に尽くしてきたのに!

ケヴィン

……はは、そうか、なら、それならば

ケヴィン

息子が僕一人だけになればいい話だな?

ハロルド

…!!!

ケヴィン

…冗談だよ。ああ、大体わかった。じゃあね、ハロルド

そういうと、兄さんは部屋に戻っていく。
心なしか背中が少し丸まっているように見えた。

ハロルド


俺も手紙をしまって、部屋に戻ろうとした。

ハロルド

あれ…?
封筒の中に何か…書いてある?

透かしても外からは見えなかった。
特殊な紙を使用しているらしい。
急いで部屋に戻り、中身を覗いた

ハロルド

えーっと…何々…

まさか、これに気づくとは予想外だ。
でも、そうでなくてはね?上手くおやりよ、ハロルド
私は君を大いに応援する。
かの師にも、そう伝えなさい。

ハロルド

…これって!?

ハロルド

間違いない…この内容は…
盗聴器のことだ…父様が仕掛けてたんだ…!

ハロルド

それに、気づいたって……
俺が盗聴器に気づいたことがバレたんだ…
でもなんで…?アヤと会ってから、長い間無言だったから…?そこも、やっぱり聞かれていたってことなのか…?

ハロルド

で、でも…目的はバレてなさそうだ。応援するって、書いてあるし…

ハロルド

上手く…やります…やって見せる…!

ハロルド

どこまで知られているか、わからない…

ハロルド

あれから、一つも俺のやること成す事に口出ししてこない…
俺が盗聴器について話題に出そうとしても、何も知らない振りをする…
どうしてなんだ?
目的は知られてないはずだが、どこまで白を切るつもりなんだ?

チャールズ

…何か考え事かな?君のためのパーティなんだ、今日くらいは何も考えず楽しんだほうがいい

ハロルド

あ、はい、そうですね!ごめんなさい父様!

チャールズ

うんうん…勉強もいいが、息抜きも大切だからね…
では、私は少しばかり挨拶をしに行くよ

ハロルド

いってらっしゃい、父様!

ハロルド

何が、目的なんだろう…
まあ、今は楽しむ振りをしないと。
母様にまで怪しまれちゃたまらないし…

父様は、おそらく母様に内緒で盗聴器を仕掛けている
母様はこそこそするのを嫌うから

メアリー

ああ、ハロルド!確か10歳のお誕生日だったわね?おめでとう

ハロルド

母様…!あ、はい。ありがとうございます!

メアリー

これからも、いい子に頑張りなさいね?
応援していますわ

ハロルド

ええ、勿論!

メアリー

私も、久々に皆様とお話してきますわ。
貴方も、話しかけられたら失態がないように。さっきのように、ぼーっとしていてはいけないのよ、いい?

ハロルド

はは…申し訳ありません、もうしません。ところで、最近父様とは話されたんですか?

メアリー

そういえば、あの人と会話するの何年振りかしら…それが何か?

ハロルド

行ってあげてください、きっと父様も喜ぶでしょう!

メアリー

そうね、ふふ…行ってくるわ。ありがとうハロルド

ハロルド

ええ、いってらっしゃい!

ハロルド

やはり、言ってない…か…まあ探りを入れるのはここまでにして、パーティに集中しよう…

ハロルド

次、アヤに会ったら、ちゃんと理由を聞くんだ…

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