ねぇ……






ねぇ、美咲ちゃん







美咲

だ…れ……









美咲ちゃんってば……









美咲

わたしを……よぶのは……
だれなの?












一心

おきてよ、美咲ちゃん!














美咲

あれぇ?
一心《いっしん》くん……。






一心

もー。
ほんとにねちゃうんだから―。







美咲

あたし……
ねてた?

一心

そうだよー。
ねたふりだけって言ってたのにー。

美咲

ねたふり?

一心

うん。

美咲

なんで、ねたふりしてたんだっけ?

一心

それも
わすれちゃったの?

美咲

うん……
ごめんなさい。

一心

しらゆきひめごっこしてたんだよ。
おもいだした?

美咲

しら……ゆき…ひめ?

一心

うん。
ぼくがおうじさまで、
美咲ちゃんがしらゆきひめ!

美咲

あたしが
しらゆきひめ……

一心

どくりんごでねちゃったから……

美咲

どくりんご……

一心

チュッ!てして
おこしたんだ!

美咲

チュッ……?

一心

さいしょは、
するふりだけだったんだけど……

美咲

え……

一心

美咲ちゃんぜんぜんおきないから
ほんとにしなきゃダメかなーっておもって……

美咲

えええ……

一心

チュッってしたんだけど、
ぜんぜんおきなかった!

美咲

ええええええ……

一心

ど……どうしたの、美咲ちゃん!

美咲

ほ……
ホントにしちゃったの!?

一心

う……うん……
ダメだった……?

美咲

だ…だ…だ…だ……
だめじゃないんだけどどど……

一心

……けど?

美咲

なんてゆーか
みらいのだんなさまに
なる人じゃないと
こまるっていうか……

一心

じゃあ、だいじょうぶだよ!

美咲

え?

一心

ぼく、おとなになったら
美咲ちゃんをお嫁さんにするって
きめてるから!

美咲

ほ、ほんとに?

一心

うん!

美咲

ぜ、ぜったいに?

一心

うん!

美咲

かみさまにちかって?

一心

うん、ちゃんとこう言うよ!







間木

美咲さん、
結婚しよう!

美咲

よ、喜んで!








































美咲

はっ!







気がつくと私は



校舎の屋上でしゃがみこんでいた。






美咲

いつの間にか寝ちゃったみたいね……。

美咲

なーんか、懐かしい夢だったなぁ……。

美咲

あの頃は、一心と普通に接していられたんだけどなぁ……。

美咲

なんで変なことに
なっちゃったのかなぁ……。





少女は憂鬱そうな表情で空を見上げた。



あの頃の空に繋がっている気がしたからだ。




じゃあ、
もっと肩の力を抜けばいいじゃん。

美咲

え!?

間木

一心!!!!!!

美咲

なななななんでここここにいるのよ!

間木

いやぁ……。

間木

美咲が心配だったからさぁ。



少年は悪戯っぽい表情を浮かべて


少女に言った。




少年のその態度は


教室でしどろもどろであった人物とは


おおよそ別人のようであった。




美咲

クッ!コイツ!

美咲

……い……いつから?

間木

居眠りしながら
寝言を言っている時からかな。

美咲

ぇぇぇ……。

間木

そんな落ち込むことじゃないだろ?
毎度のことなんだし。

間木

ナ、白雪姫サン。

美咲

アンタ、まだその話覚えてるの!?

間木

当たり前だろ。

間木

白雪姫を起こすのは
俺だけの役目だからな。

間木

この役は誰にも渡さないぜ。

美咲

そそそそうね。
アンタには
私を起こす雑用みたいな役が
お似合いよね。

間木

……はいはい。

間木

じゃあ、次からは
もう少しすんなり起きてくれると
助かります、姫様。

間木

……口づけなしでね。

美咲

………。

美咲

え?

間木

ホント、昔から変わってねーよな、
そういうところ。

美咲

ままままままさか、
ままままたアンタ、
わわわたしと……!?

間木

もちろん、王子様の役目ですから。

美咲

だだだだだ……

美咲

大っ嫌い!!!!




少女は少年に痛烈な平手打ちを食らわすと



一目散にその場を離れた。







残された少年は



じんじんと痛むその頬を押さえ



その場にうずくまっていた。


間木

いってぇ……。

間木

ったく、ホント素直じゃねえな……。

間木

……。

間木

なんで、こうなっちまったんだかなぁ……











































美咲

また……また……

美咲

寝てる間にキスされた……。

美咲

どうして……
どうしてあなたは……

























口づけの記憶を
残してくれないの!?





























白雪姫と王子様

つづく

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