熱を入れたフライパンからじわーっと目玉焼きとベーコンが焼けるいい匂いが漂い始める。
幸せだなあ、と僕は料理をしながら何度目になるか分からない感想を抱いた。
地獄の弁護人を務めるようになってから気づけば季節が二つも過ぎたけれど、毎朝飽きることなくその幸せをかみしめている。
一日16時間の睡眠を取らなければならなかった頃は、またこうやって朝ご飯の支度が出来る日々を迎えられるとは思っていなかった。
長時間の睡眠は両親の死によって持ってしまった厄介な性質ではあるが、僕はこの性質を決して疎ましく思っているだけではない。
持ってしまったものは仕方がないのだ。
無くせるなら無いにこしたことは無いけれど、うまく付き合えるならばそれはそれで構わない。
目玉焼きとベーコンを皿へと移し、トーストを焼き始めると、二階から足音が下りてくるのが分かった。