大蛇の親玉の捨て台詞にうんざりしつつも、
竜笛を口で吹く。
妖狐を連れてるようだが、それは自分の実力不足を補うためか?
何こいつ凄いうざいんですけど…
大蛇の親玉の捨て台詞にうんざりしつつも、
竜笛を口で吹く。
何だこれは!
体が動かない…
下っぱは揃ってなさけない声をあげる。
相変わらず個性的な音色だねー
うるさい!私は少し楽器の類いが苦手なだけだ!
少し?
キリハにも音色を向けようか?
竜笛をキリハの方に向ける。
それだけは止めてー
ったくキリハは手間ばかりかけさせるな…
人間風情が舐めやがって!
声ですぐさま大蛇の方に振り向くと、
親玉の大蛇が口を大きく開けて何かを噴射してきた。
まずい!
とっさに体を反転させて、羽織で体を覆う。
くぅっ!
大蛇の親玉が噴射した液体が、
覆われていない足の部分にかかり激痛が走る。
紗知!
相当な強さなのか、羽織の表面を徐々に溶かしていく。
それをみたキリハは羽織をすぐに手ではがして、
投げ捨てる。
キリハ! 素手で触って大丈夫なのか!?
大丈夫! それより大蛇の下っぱは私が排除するから親玉は任せるよ!
キリハは返事をする前に動き、
懐から刀を取り出すと、
すぐさま下っぱ大蛇に切りかかる。
ぐぅっ!?
刀が下っ腹大蛇を捕らえ、そのままの勢いで切り伏せる。
なぜ妖狐が人間に力を貸すのだ! 妖狐も我らと同じあやかしだろう!?
それはね…
キリハに向けてもう一匹の下っぱ大蛇が噴射すると、
キリハは素早く身を屈めて避けて、
下っぱ大蛇に向けて短刀を投げつける。
ぐわぁー!
投げつけた刀が下っぱ大蛇の眉間に刺さり、
断末魔を挙げる。
紗知の事を、好きな人を守りたいからよ
キリハ…
他にも人に協力している妖狐はいるが、
ずっと神音から頼まれてやってるだけだと思っていた。
だからキリハのよくわからないもアプローチも、
協定に従った上でのからかいだと……。
キリハが私の事を好き…?
それを聞いて自覚して体全体が、何だか熱くなってきた。
紗知、どうしたの?顔が真っ赤よ?
キリハ、お前分かって言ってるだろう!?
妖狐が人間を好きだと笑わせるな。
そんな無意味な感情に何を…
それを決めるのはお前じゃなくて
竜笛に想いを込めて吹くと、
前方に複数の竜巻が巻き起こり、
親玉大蛇に向けて走らせる。
私が決める事だ!
竜巻は親玉大蛇を捉えて、
何度も何度も身を切り刻む。
よし、退治完了っと
紗知!
キリハは私の名前を呼ぶと、
心配そうな表情で駆けつけてくる。
キリハ、助かっ…
助かったと言おうとしたところで、
キリハに思い切り抱き締められる。
おい、キリハ!痛いって! 私は足を少し負傷しただけだから大丈夫だ。それよりお前の手の方は大丈夫なのか?
しかしキリハは返事をせず下を向いたまま、
小刻みに震えている。
キリハ、どうしたんだよ。
もしかして…どこか悪いのか!?
それを決めるのはお前じゃなくて…
ん?
私が決める事だ!
キリハは顔を上げ、ニヤリとした笑顔を向けてきた。
キ…リ…ハ…!
ごめんごめん、今のは私が悪かったけど、紗知がそう言ってくれて嬉しかったよ
あ、あれは親玉大蛇にムカついてつい出ただけであって特に意味はないんだぞ!
ううん、私はあれを聞いてビビッと来たよ。
ついに紗知と想いが通じあったんだって!
違う違う! それはキリハが勘違いしてるだけであって!
じゃあ、私の事は嫌い?
嫌い…ではないけど…
その言葉を聞いてキリハは、
さらに強く抱き締めてきた。
かと言って好きとかでは全くないからな!
そもそも人間と女妖狐が結ばれるとかないだろう?
愛に種族とか性別は関係ないよ!
知るか! とりあえずはなーせ! 離れろ!
私はもっとこうしてたいけどなー
ったく、お互いの治療をしないと
いけないだろう? 跡が残ったらどうするんだ
やっぱり私の事心配してくれてるんだ!
知らん、私は知らん。
それじゃすぐに神音に戻るぞ
もう紗知ったら素直じゃないんだからー
そんなこんなで、大蛇退治も完了し、
今回も無事神音に戻る事ができそうだ。
キリハのよくわからないアプローチの意味も…
分かったからって何かある訳じゃないからな!
紗知どうかしたの?
いや、何でもない!
今後のあやかし退治もキリハは、
手伝ってくれるのだろうけど…
私はどんな顔をしてればいいのだろうか?
…まあ、なるようになるか。
自分の気持ちに嘘はつかなければ、
きっとそれが自然の行き着く先になる思うしね。